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2013年09月07日

従業員の社内盗難を防ぐ組織心理アプローチ

アメリカの会社で、従業員が会社の物を盗む被害の総額は1年に2000億ドル、日本円で約20兆円に及びます。これを防止するために多くの企業が監視システムを導入しました。

ラマー・ピアース(Lamar Pierce)教授の調査では、監視システムは防止に有効だという結果が出ました。監視システムを導入したレストランでは、1週間の利益が7%ほどアップしたそうです。レストラン従業員は監視システムがあるため無料ドリンクの提供をそれほどしなくなり、売る事に焦点が置かれるそうです。

しかし、監視システムよりも安くてリスクの低い方法があるとしたらどうでしょう?

数年前、木材関係のグッズを販売する会社は年間で1億円(100万ドル)の社内盗難被害に遭っていました。しかし、シンプルな会社のルールを変更しただけで社内盗難はほぼゼロになりました。しかもその後、調査をした3年間、監視を全く必要としなかったのです。

この会社の従業員たちは製材所から物を盗んでいました。この会社のマネージャーが監視システムで従業員を脅かした所、従業員はカメラを盗む計画を始めました。そこで組織心理学者ゲアリー・レイサム(Gary Latham)氏に助けを求めました。

レイサムの著書
e-Study Guide for A Modern Course in Statistical Physics, textbook by Linda E. Reichl: Physics, Mechanics
邦訳本『ワーク・モティベーション

レイサムが調査をした所、従業員はその物がほしいから窃盗するのでもなく、それを売って収入を得たいから盗むのでもなかったのです。レイサムが従業員に極秘でインタビューをした所、彼らは自分の盗むスキルを誇りに思っていたのです。一部の従業員は、その窃盗物を誇らしげにレイサムに見せびらかしさえしたのです。つまり、彼らは窃盗のスリルが欲しくて窃盗するんだとレイサムは考えました。

その後、レイサムは会社のマネージャーと一緒に話をし、スリルを消す方法を考え出します。そして、図書館のような貸出ルールを設けます(以下「図書館ルール」)。

「従業員は社内の物を借りても良い」

Good Boss, Bad Boss: How to Be the Best and Learn from the Worst”(邦訳本『マル上司、バツ上司 なぜ上司になると自分が見えなくなるのか』)を書いた組織心理学者、ボブ・サットン(Bob Sutton)の考察では、その途端、窃盗のスリルは消えてしまいました。

更に、このルール実施以前に「借りた」ものに関しても処罰なしで返す事ができ、それについてマネージャーは何の質問もせず、誰か他の従業員に変わって返していると推測する、というルールも付け足しました。すると、社内のものが大量に返却されたそうです。

従業員の自宅に置いても、使えない物を置いておいても不便なだけなので、家の世話をする奥さん又は旦那さんから、是非返してくれというプッシュもあったようです。

レイサムは見事に従業員の窃盗動機をつかみ、新たなルールを設け、この問題を解決しました。

彼が窃盗動機を掴んだ質問は以下です。

1.盗むことによる便益は?

2.盗むことによる代償は?

3.正直であることの便益は?

4.正直であることの代償は?


多くのマネージャーは、社内盗難を防ぐためによりお金のかかる方法によって解決を図りました。しかしレイサムの見解は、この問題は窃盗の便益を下げ、正直さの代償/便益率を変える事で効率的に解決できるというものでした。

図書館ルールは窃盗の便益を排除し、正直さをより便益のあるものにし、代償の少ないものにしてしまったのです。また図書館ルールは、これだけではなく、監視システムで起きえる様々な問題を避けることができます。


● 不信感

心理学者ロバート・チャルディーニ(Robert Cialdini)も述べるように監視システムは、監視されている人に対して、「私はあなたを信用していません」というメッセージを送る事になる。これによって、監視者 vs 被監視者という対立が生まれる可能性があります。

チャルディーニの著書;
influence: The Psychology of Persuasion (Collins Business Essentials)
邦訳本『影響力の武器


● マネージャーの皮肉

心理学者ロッデリック・クレーマーが書いたように、監視はマネージャーをより疑い深くさせます。もしあなたが誰かの欠点に焦点を当ててその人を見たら、ほぼ確実にたくさんの欠点を見つけることができます。しかしながら、皮肉なことに疑い深いマネージャーは、そうでないマネージャーと比べて、人に関する判断が正しくないと報告されています。

クレーマーの著書
Trust in Organizations: Frontiers of Theory and Research


● 監視がないところでは窃盗を促進

監視システムを導入するという事は従業員に対して、窃盗がよく起きている、というメッセージを送ってしまいます。チャルディーニの研究チームは、国立公園で石化木材の窃盗について調査しました。公園のサインが、多くの人が窃盗をしているというような記述をすると、窃盗率は3%から8%に上がったそうです。

行動経済学者ダン・アリエリー(Dan Ariely)が自著”The (Honest) Truth About Dishonesty”(邦訳本『ずる―嘘とごまかしの行動経済学』)で記すには多くの人が自分のセルフイメージの道徳性を壊さない範囲なら、軽い窃盗もしてしまうんだそうです。クレイマーいわく、監視システムの下では、従業員はそれほど自分の道徳性を傷つけずに窃盗ができてしまうんだそうです。


相手のことを信頼しているというメッセージを伝えることで、相手から信頼を得る。すばらしい心理的アプローチだと感じました。こういった心理的効果についてもっと学びたければ”Give and Take: A Revolutionary Approach to Success”がオススメです。

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参照
http://www.psychologytoday.com/blog/give-and-take/201309/instead-monitoring-employees-try-motivating-them
Give and Take: A Revolutionary Approach to Success
The (Honest) Truth About Dishonesty(邦訳本『ずる―嘘とごまかしの行動経済学』)
e-Study Guide for: Work Motivation by Gary Latham, ISBN 9780761920175(邦訳本『ワーク・モティベーション』)
Good Boss, Bad Boss: How to Be the Best and Learn from the Worst(邦訳本『マル上司、バツ上司 なぜ上司になると自分が見えなくなるのか』)
Trust in Organizations: Frontiers of Theory and Research
Influence: The Psychology of Persuasion(邦訳本『影響力の武器』)
posted by ヤス at 08:04| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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