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2013年12月17日

オバマ大統領のスピーチに見る言語心理学

アメリカは収入格差が大きい国であることは知られています。最近の見積もりでは、アメリカのトップ1%の裕福層が国全体の、税抜前収入の22%以上を稼いでいて34%以上のお金を持っています。

今月(2013年12月)100以上の都市のファストフード店の労働者たちが彼らのあまりの収入の少なさやこの格差についてプロテストをしました。一方でウォール街では投資銀行のインターン生が平均して7万ドル以上を稼いでいます。





多くの人にとって12月4日、オバマ大統領がこういった富の不平等は経済的また道徳的にも重要な事柄だとスピーチしたことはよい刺激になりました。

大統領は3つのポイントを話しました。

まず第一に、このことがアメリカの黒人や茶色人種だけに影響しているという誤解。

第二に経済成長を確実にすることと、経済不平等を平等にすることはお互いに補完し合うものだ、ということ。

第三に、最も重要な事であり、政府はこの問題を軽減するために何もできない、という考えを訂正しました。


左翼の専門家はこれを賞賛しました。ワシントンポストのグレッグ・サージェントは「専門家はあれが大統領の最も大事なスピーチの一つだと評価するだろう」とし、ニューヨークタイムズのポール・クラグマンは「ついに2008年に多くの支持者が期待していた先取的な大統領になった」と記しました。

しかしながら、大統領のスピーチは政府の介入をほのめかしたものの、彼の言語構造は別の事を伝えていました;経済的格差の原因は無知であり、解決は私たちの影響の範囲外にある、と。

アメリカ経済の歴史をまとめるに大統領は過去の様々なリーダーたちが成した事を明確にする宣言的な文章を使いました。

「貧しい人の子供だと自称したアブラハム・リンカーンが公立の大学を立てるシステムを始めた… 豊かな家庭に生まれたテディー・ルーズベルトは毎日8時間労働をして戦った… フランクリン・ルーズベルトは社会保障制度のために戦った… リンドン・ジョンソンはメディケアやメディケイドのために戦った…」

しかしオバマ大統領が大恐慌について語ったとき、スピーチのパターンは変わりました。主語に来るべき人物を、取り除く文章を使ったのです;

労働者にとって「状況は不利になった」と大統領。なぜなら、「税金が削減され」「経済成長は一部の豊かな人のもとへと流れた」から。大統領の文章構成には「誰が」この不平等をもたらしたか、という部分が抜けているのです。

その代わりに人物を断定できなくする抽象的な言葉が使われているのです。「向上した流動性のおかげで工場に勤める人が、自分の子供が会社を経営することを夢見る事ができるようになった。」そして、「仕事は自動化したり、海外に流れたりした。」

1時間ほどのスピーチで、私たちは誰が何をしたのか、あまり掴めずに、スピーチが終わっていきました。

「ビジネスはワシントンに労働組合を弱め、最低賃金を下げるように抗議しました」

個人を特定しない事は経済の堕落、その波及効果において政治家の誰もがする常套手段です。

今回のスピーチの面白い点は、たとえ、スピーチが不平等を修正しようと意図された内容であっても、その言語構成が、この問題はハリケーンや疫病でもなく人が作った問題であるという点を攻撃するものになっていて、問題は人の影響対象外だということを暗示しているという事です。これは学校で英語の先生が受け身の文章を使ってはいけないという完璧な例だと言えます。

科学的な研究では「出来事を表現するのに使われる文法体系が聞く人の知覚に影響する」と言います。特に、能動文章か受動文章かで誰の責任かという判断が変わります。





2004年のスーパーボールで起きた「衣装の不具合」を例にしながら、心理学者ケイトリン・フォーセイ(Caitlin Fausey)とレラ・ボロディツキー(Lera Boroditsky)はジャスティン・ティンバーレイクがジャネット・ジャクソンの衣装を「破った」という記述を読んだ人は、衣装が「破れた」と書いた記事を読んだ人と比べて彼に責任があると判断し、53%もより多い罰金を課すと判断しました。

もしそれほど簡単に言葉によって認知が変わるのであれば、不平等といった抽象的で進行形の問題をどう表現するかが極めて重要になってくると言えます。

最近よく言われる不平等の原因を見てみましょう。ある人は賃金の低さが原因だといい、またある人はテクノロジーの発展が仕事を減らしている、別の人は女性の社会進出が影響していると言います。

私たちは、不平等の原因についての仮説を次に何が起こるかのヒントととします。これだから、誰の責任でもないというのは非常に危険なのです。

主人格を特定せずに人はよく責任のなすりつけあいをしているのです。人に責任があることを認識しない限りは、人によって解決される事はないと考えられます。

オバマ大統領は非常に効果的に経済不平等問題を説明しました。しかし、彼の言語構造は問題を更に悪化させ得るものであり、不平等は私たちの行動に関わらず発生したものだ、といったニュアンスを表現するものでした。

誰が何をしたことによってこうなったのか、そういった文法構造で話をしない限りは、変化を能動的に取る事は非常に難しいと言えるでしょう。

オバマ大統領に興味がある人は以下がオススメです。
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参照
http://www.bostonglobe.com/ideas/2013/12/15/and-then-inequality-happened/dUX9PgQ3sNZ5XoFXM7hPdI/story.html
posted by ヤス at 07:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 心理学理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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