2014年03月14日

自信って、そんなに大事?

ポクズワードウスキとコンロイ(Poczwardowski & Conroy)が2002年に8人のエリートアスリートと8人の舞台芸術家に、成功と失敗をどう気持ち的に対処しているか、インタビューしました。

興味深い事に、失敗をうまく対処する事が、将来のパフォーマンス向上に繋がるという事が分かりました。例えば、参加者の69%が失敗の後、モチベーションが向上したと答え、69%の参加者がその失敗から何かを学び、それによって成長したと答えました。

同じように、サガー、ブッシュ、ジョウェット(Sagar, Busch, Jowett)が2010年に実施した、サッカーアカデミーに通うサッカー選手に協力してもらった実験では、全ての選手が、失敗をしたら少なくとも1つは問題に焦点を当てた対処法を学ぶ(練習量を増やす、より能力を証明しようと決意する等)と答えました。

カーヴァー(Carver, 2003)は、ある課題において物事がうまくいっているという感情は、その人の焦点を他のニーズに当てようと思わせる事に影響すると述べています。この事を彼は”Coasting(惰走)”と読んでいます。

惰走に関しては3つの実験が成され、ルーロ、ピーターズ、ゼーレンバーグ(Louro, Pieters, & Zeelenberg, 2007)はゴールに近くなったというポジティブな感情は、当事者のエネルギーを他の物へと向けさせる、と述べています。

同じようにパワーズ(W. Powers, 1991)は、人が自分の現状の力について楽観的な信念を持った時(過信)、現状の力と目標とする力の差が、実際よりも小さいと感じてしまい、その人の努力しようと思う気持ちを弱まらせる、と述べています。

※これはバルセティス博士の「味覚テスト」でも見られたように、人は自分の都合の良いように物事を解釈するというのと近いですね。

それとは対照的に、より高い目標が設定された際に楽観的である事は、現状と目標の差が大きく認知され、努力を促すそうです。従って73年にパワーズが提唱したコントロール論によると、努力の度合いを決めるのは心理的な要因ではなく、現状と目標の差だとなります。

この見方は多くの実験でも支持されるものです。例えば、2010年のウッドマン、アケハースト、ハーディ、ベーティ(Woodman, Akehurst, Hardy, & Beattie)がしたスキップに関する実験においても、参加者が自分のスキップ能力に疑問を持っている場合の方が、より高いパフォーマンスを見せたそうです。

この実験で彼らは
「自信の減少が、参加者の現状レベルと目標レベルの差を大きく感じさせ、それが参加者の努力量を増やしたのではないか」と結論付けています。

「勝って兜の緒を締めよ」とはよく言ったものですね。
posted by ヤス at 02:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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