2014年12月17日

イギリス政府、CBT機関に年間400億円投資

近代の心理療法において最も注目を集めている療法というと認知行動療法(Cognitive Behavioural Therapy, CBT)だと言えるでしょう。話す事によるセラピーですが、フロイトやユングが支持した深層心理を探る精神分析とは異なり、CBTはクライアントに役立たない思考をいかに対処していくかを教えてくれます。


現在、イギリスの43%のセラピーコースがCBTを教えていて、その実践は増加傾向にあります。2007年以降、6000人の新たなCBTセラピストが生まれ、CBTは公的資金の主な投入口ともなっています。2012年には2億1300万ポンド(約400億円)がCBTを提供する国民健康保険の部署に配分され、これは他の全セラピーが1億7200万ポンド(約320億円)の配分を得た事と比べると、非常に大きな数字だと言えます。




CBTブームの裏には2007年にイギリス政府がCBTを標準療法だと認定した事にあります。CBTはなぜいいのか?第一に、CBTは効果が計測しやすいという事。心の問題で、職を離れたクライアントがすぐに再雇用を得れたケース等は多々あります。1997年の実験によると、CBTを受けたクライアントは、伝統的な精神分析療法を受けたクライアントと比べて、はるかに高い仕事復帰率を示しています。また、平均して10回の1時間セッションで回復するという速さも強みです(精神分析では数年かかる事が普通)。


この影響で、かつては非常にポピュラーだった精神分析セラピストは裕福層のクライアントを狙うようになりました。1時間のセッションが1回、50ポンド(8000円)から500ポンド(8万円)もし、地理的にも裕福層がよく住む場所にのみ見られる傾向が出てきました。これに対してCBTセラピストは、一般医の紹介があれば、国内どこでも無料で治療を受けられます。

その一方で2007年からCBTの需要は高まり続けています。この間、心理セラピーへの国の予算配分は3%から7%へと増えましたが、この増加の大部分がCBTによるものです。セラピーが非常に盛んなアメリカでは、心理セラピーの予算は減少しています。1998年にアメリカのうつ病と緊張症のクライアントのうち16%がセラピストに紹介されたのに対して、2007年においては10.5%でした。またイギリスのこのセラピーブームにはクライアントの嗜好も後押ししています。3対1の比率で、クライアントは薬物治療よりも心理治療を好むという報告がされています。

ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのピーター・フォナギーいわく、CBTは良いサイクルに入っていると言います。「研究に資金が集まり、それにより、データが集まる事で、より多くの資金を調達でき、それによって新たな治療法を作成できる。」複雑な組織である国民健康保険機構がこの傾向を変える事は当分はないと言えるでしょう。


参照
http://www.economist.com/news/britain/21623773-popularity-cbt-freezing-out-more-traditional-forms-therapy-expanding-shrinks
posted by ヤス at 07:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 心理学理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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