2016年05月07日

思いやりは脳内の統合繊維を増やす

近年、心理学の分野で注目を集めているものに思いやりとマインドフルネスがあります。今に集中することを練習することで、他人への思いやりの意識も増加する。こうしたことは宗教や文化の中で言われてきたことですが、ここ数年になってやっとそのことが科学の目からも証明されるようになりました。


精神医、ダン・シーゲル博士は独自で考えた「脳を見るアプローチ(mindsight approach)」の中で統合の重要性を説いています。統合は健康を実現するために不可欠なものだと考えられます。なぜなら、統合することでバイタリティと創造性に満ち、柔軟な存在になることができるからです。「統合の最終目的は調和だ」と言います。

思いやりは「人間であるとはどういうことを意味するか」という問いかけの中心要素です。しかし、私たちは思いやりがどのように作用するのか、なぜ他人に対して思いやりを発揮したいと思うのかについては無知でした。しかし、対人的神経生物学(Interpersonal neurobiology)はこれを検証するフレームワークを提供する可能性があります。

近年の研究では、心を変えることで脳に物理的な変化を作ることができることがわかっています。脳内の様々な部分が交流することを「神経統合」と言います。そして瞑想などの練習をしていくと、統合作用のある繊維を作ることができます。だからマインドフルネスなどの実践が非常に効果があるとされています。

そして、この統合的な脳とはマインドフルであり、今に存在し、思いやりのあるものです。


ウィスコンシン大学のリチャード・デヴィッドソン教授が行ったチベット仏教僧に対する研究では、思いやりについて瞑想をすると脳に非常に有益な変化が現れたと言います。思いやりの状態になると出るガンマ波が現れました。

またシーゲル博士らの実験ではマインドフルネス瞑想をすると、統合繊維の成長を刺激すると報告されています。

2013年のハーバードとノースイースタン大学の実験では、瞑想は思いやりと利他的な行動を強化すると報告されています。瞑想をした参加者はそうでない参加者と比べて、苦しんでいる人(実験用に雇った役者)に対して助けを差し伸べたそうです。2012年のエモリー大学の実験では、チベットのマインドフルネス修行に根ざした思いやりのトレーニングをすると、共感度が増すと述べられています。またその他の研究では愛情と優しさに根ざした瞑想をすると肯定的な感情を増加させ、よりポジティブな人間関係を構築できるそうです。


その他、脳内に統合を作る方法は、健康で思いやりのある人間関係を作ることです。そういった人間関係は私たちをよりマインドフルに、そして、思いやりのあるようにしてくれます。

シーゲル博士は「人間関係とは脳内のエネルギーと情報を共有すること」だと言います。そして同じように、よくない人間関係は、よくない影響をもたらします。虐待や無視を受けると脳の統合的な部分に支障が出ます。従って、虐待的な人間関係にある患者の手助けにマインドフルネスを使ったセラピーが効果を発揮します。

思いやりは心の統合を視覚化したものです。脳が調和状態にあると、それが外側に現れます。つまり、自分に対して、他人に対して、そして、社会に対して思いやりを発揮できるようになります。





参照
http://www.huffingtonpost.com/2014/05/13/what-neuroscience-can-tea_n_5268853.html
posted by ヤス at 05:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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