2016年10月03日

ショーフェリ教授のワーク・エンゲイジメントに関する講義5、6

ではワーク・エンゲイジメントをどう強化すれば良いのか。それには伝統的な医療モデルから抜け出る必要があります。というのも、伝統的なモデルでは治療をして、症状をなくすことから始まります。そして、それが治ったら強化をしていきます。この強化の部分がワーク・エンゲイジメントに関係します。


オランダには365という国内で最も大きな職業健康サービスがあります。7万の企業と130万人の従業員のサポートをします。365内には1400人のスタッフが居ます。ここでは3つのグループを作りました。治療、予防、そして、強化。強化グループではエンゲイジメントを高めようとします。

強化グループでエンゲイジメントを高めるために、3つの介入が考えられています。1つは個人レベル。これは行動面でのアプローチ(親切な行為、感謝、ポジティブニュースのシェア)だったり、認知的(感謝していることを数える、何かプラスの体験を味わう、楽観主義を養う)、または、モチベーションへのアプローチ(意義のあるゴールを設定してそれに向けて進む、フロー体験)だったりします。

2つ目がチームレベル。誰でも参加できる強みベースのアプローチ、革新的なリーダーシップを強化したり、チーム全体の効力感を増やす、などといったことが挙がります。

3つ目が組織レベル。仕事の設計を改善して、仕事をするための資源が増えるようにする。リーダーシップトレーニングで、感情伝染の法則を学ぶ。キャリア開発によって仕事がチャレンジングであり続けるようにする、といったことが挙がります。


チームや組織レベルでの介入については計測が難しいと言えます。例えば、過去にショーフェリが実験をした時には、マネージャーの異動があり、実験が中止されました。そういったことがあり得るので、このレベルで科学的な介入をするのは難しいのです。

個人レベルの介入については2つあります。1つ目がオンラインでのコーチングで、エンゲイジメントと自己効力感を増やそうとしたもの。もう1つが学生に対して、エンゲイジメントとポジティブな感情を増やそうとした行動的なアプローチ。

オンラインコーチングはオランダの新聞会社を通して行われました。ここのオンライン媒体で参加者を募りました。無料で参加できるようにしました。

実験内容は、12個の課題(各15分ほど)と10の短い行動的な実験を設定しました。課題の例としては、「今日は同僚に対して3つの良いことをしましょう(例:褒める、ドアを開けてあげる等)」などがあります。行動的な実験とは、同僚と一緒にコーヒーを飲むなどです。サポートとして、コーチはインターネット上で相談可能にしておき、短いビデオを用意(例:どのように褒めたらいいか)、そして、参加者にブログを書いてもらい、参加者間で見られるようにしました。計測は実験前と3ヶ月後フォローアップを用意。今日かグループが86人、制御グループが225人。

実験に関する理論モデルとしては、これらの課題や実験をすることで、彼らのポジティブ感情と熟達度が上がり、それが自己効力感を高めて、そして、ワーク・エンゲイジメントが高まる、というモデルを描きました。

結果を見ると、強化グループの自己効力感は顕著に高まり、制御グループは変化がありませんでした。ワーク・エンゲイジメントにおいては、どちらのグループも変化がありませんでした。その後、ワーク・エンゲイジメントのレベル別に3つのグループ(高、中、低)を作りました。すると実験前にエンゲイジメントが低かった人たちが、非常に大きくエンゲイジメントを高めていました


2つ目の実験は、学生に対して、エンゲイジメントとポジティブな感情を増やそうとした行動的なアプローチ。2つの条件に4つのグループを作りました。1つ目の条件が感謝で、これをするグループ25人と制御グループ24人。2つ目の条件が親切な行為、これをするグループ25人と制御グループ24人。計測は実験前、後、そして4週間後のフォローアップ。5日間に渡る介入で、朝に指導があり、夜に計測をします。

結果を見ると、感謝の思考を実践したグループでは、ポジティブな感情が制御グループよりも大きく上がりましたが、介入が終わった1週間後には元の数値に戻りました。親切な行為においても同じような結果となりました。エンゲイジメントを見ると、感謝の思考をしたグループでは大きな変化はありませんでした。しかし、親切な行為をしたグループでは介入中は大きな変化を見せたのですが、介入後は元に戻りました。

つまり実験をまとめると、感謝の思考を持ったり、親切な行為をするとポジティブ感情は高まるが、それは介入中だけであり長続きしなかった。ネガティブな感情に対する変化は見られなかった。エンゲイジメントは、親切な行為グループにだけ介入中のみ見られた。というものになりました。


今後もどのようにエンゲイジメントを強化したらいいかが非常に大事な問いとなります。



posted by ヤス at 19:12| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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