2018年02月26日

お金はモチベーションに影響するのか?その1

人はいくら稼げば幸せになるのか。多ければ良いということでもないようです。また面白いことに、ある研究では、自分で給料を自由に決められるとしても、人々は自分の仕事をより楽しめるようにならないだろうと言われています。

つまり、お金は仕事をより楽しいものにしてくれるのか?または、高い給料がモチベーションを下げることがあるのか?これらについて考えたいと思います。

まずは、お金が仕事へののめり込み度合いを高めるか?120件の研究をまとめた論文によると、給料と仕事への満足との間の相関度数は非常に弱かった。r = .14、つまり、この2つが交じり合うのはたった2%ということ。そして仕事への満足ではなく、給料への満足と、給料との相関関係は約5%の関係性でした。つまり、人の給料とその給料への満足感はあまり関係がないと言うことです。


更に、異文化比較をすると、給料と仕事満足、給料と給料満足の関係性は、どの国や文化でもほぼ同じだと分かっています(例えば、アメリカ、インド、オーストラリア、イギリス、台湾では大きな違いはなかった)。同じような結果は、グループ間での分析でも見られました。トップ50%の給料を得ている人たちは、ボトム50%の給料を得ている人たちと同じような仕事満足度を示していました。ギャロップ社のエンゲージメント調査(34カ国、49産業、192組織、140万人が参加)でも同じような結果が出ました。

つまり、より深く仕事に関わるような社員が欲しければ、お金は答えではないということです。つまり、エンゲージメントはお金では買えないということです。では、お金はモチベーションを下げてしまうのか?一部の研究者はそうだと言います。つまり、給料という外的なモチベーション要因をもらうことで、内的モチベーションが「曇って」しまうと述べています。

心理学でこれを「過度の正当化理論」と言いますが、具体的にどれくらい給料が上がれば、モチベーションが下がるかなどは分かっていません。しかし、興味深い研究報告があります。


エドワード・デシらは、128の制御された実験をメタ分析しました。最も強く現れたのは、外的報酬がもたらすモチベーションへの悪影響です。この悪影響は、与えられた課題が興味深いものであるほど、大きくなりました。具体的には、報酬が標準偏差1つ分上がる旅に、内的モチベーションは25%下がりました。報酬が期待できて、その規模が分かっていれば、内的モチベーションは36%も下がりました。デシらは、外的な報酬に頼ることで、内的モチベーションをなくしてしまうリスクがあると述べています。

※ちなみに、つまらない課題に対しては、報酬がモチベーションを高めるそうです(参照)。

もう1つ注目したいのが、チョーとペリーのアメリカ20万人の公的機関に務める労働者を対象にした実験。従業員の内的モチベーションは、外的モチベーションの3倍もエンゲージメントに関連していて、更に、この2種類のモチベーションは互いに潰し合うということ。つまり、外的な報酬にあまり興味のない社員は、内的モチベーションが高く、また、エンゲージメントも高い。逆に、報酬に興味のある社員は、内的モチベーションが低く、仕事への関わりも低い。つまり、仕事そのものに集中していて、それが楽しいと思える社員は、仕事への関わりも高い。これは給料が低い社員の間でもみられました。

この結果を見て、例えば、今の仕事が嫌いな人は、給料くらいしか楽しみにするものがないから、こうした相関関係せ見つかったのでは、と問う人もいるかもしれません。それを実証するのは難しいですが、無きにしも非ずかもしれません。また、給料に注目する社員は、仕事を楽しむことを避けている可能性もあります。


その2へ続く

参照
https://hbr.org/2013/04/does-money-really-affect-motiv
posted by ヤス at 02:21| Comment(0) | 心理学理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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