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2019年03月08日

日本人マネージャーによるNLPの活用:質的研究

現在、日本の産業界においてメンタルヘルスの問題は深刻であり、注目を集めています。政府も様々な対策を実行していますが、大きな効果はまだ見えてきません。そこで企業のHRは様々な手法を模索していますが、NLP(神経言語プログラミング)もその手法の1つとして注目されています。一部の企業では、NLPを使うことで、従業員のメンタルヘルスや心の状態を改善しようと試みがなされています。

しかし、NLPが70年代に開発されてから長年の問題点は、その科学的根拠が弱いところにあります。一定量の研究はされていますが、残念ながら研究の質が高いものはあまり多くありません。そこで今回の研究では、NLPを実際に現場で使っているNLPマスタープラクティショナーであり、企業のマネージャーでもある人たちの経験を、科学的に分析をしました。NLPの強みが、主観的な経験を利用するところにあるので、今回のような体験ベースの事象を分析する方法はふさわしいと言えます。


具体的には、半体系化インタビューといって、ある程度の質問は用意するものの、そこから参加者に考えを話してもらって、それを記録するインタビュー法。そして、分析方法は、主題分析といって、話された内容から何が主題となるのかを客観的に分析する方法です。これらの方法は、質的研究で、特にまだあまり研究されていない分野の研究にふさわしい手法です。

合計11人のマネージャーや社長の方々に、1対1のインタビューに参加していただきました。参加条件として、企業でマネジメントを主とする役職にあること、NLPマスタープラクティショナーであること、そして、マスタープラクティショナーの認定から最低でも1年以上は経っていること(そうでないとNLPがどれだけ使えるかわからない可能性があるので)等を挙げました。参加したマネージャーや社長の方々の平均年齢は53歳、うち9人が5000人以上の大企業に属していらっしゃいました。

インタビューデータの分析の流れや、主題の構成は、私の他に、NLPに詳しい研究者と詳しくない研究者が、客観的であるかの判断をしました。インタビューの質問としては、

NLPが職場で役立っているか?そうであれば、どのように役立っているのか?
NLPは何をもたらすのか?
NLPを職場で使う際の問題点は?

などを尋ねました。

インタビューの結果を調べると、全てのマネージャーと社長がNLPが職場で非常に有効だと答えました。具体的には、職場で必要なメンタルヘするや心理学的な能力を高めてくれると答えていました。例えば、8フレームアウトカムでは、ワクワクするようなゴールを設定し、それをさらに五感情報で体感し、ゴールの先のポジティブなビジョンを描きます。そうしたフレームワークが、心をポジティブにしてくれると答えていました。


また、NLPがもたらすものとして、人間の心を理解させてくれる、というのが多くの回答でした。なぜ自分が、または、部下がこう感じるのか。それに対する答えを、NLPを学ぶことでわかりやすく考えることができたと述べています。例えば、カウンセリングやコーチングでは、一定のフレームワークを与えられてそれを実行するだけです。しかし、NLPではそれがなぜ作用するかを考えます。例えば、コーチングで有効だとされる質問。これがなぜ有効なのか、そうしたことをNLPは教えてくれる。

またリフレーミングが非常に有効だという声が多かったです。色々な出来事を、ああよかったと思わせてくれる。そんなものの柔軟な考え方。それが非常に有効だと述べていました。

最後に、職場で使う際の問題点としては、コーチングには職場での「市民権」があるが、NLPにはまだない、という声がありました。だから職場で使う際にはイメトレといったり、コーチングだと言わないと実践してくれない人が多い。その他、もともと臨床の場から来ているので、職場で使うには長すぎたり、特に左脳系の人には理解してもらえなかったりすることがある、という声がありました。例えば、8フレームアウトカムにしても、「8つも質問してられない。せめて3つにして〜」という声や、左脳系の人に「その気持ちは何色ですか?」と聞いても、何も返ってこなかったりする、というのもありました。

分析の結果を考えると、NLPは特にポジティブ心理学との関係性が強いと言えます。例えば、ニューロロジカルレベルもよく使えるスキルだと挙がっていましたが、そこでもポジティブな感情を高めることが特徴でした。また、人の心を理解する上では、メタモデルがNLPでは強みだと言えますが、これは様々な哲学的な概念とも関係がありそうです(例:クオリアや六境など)。NLPの前提も非常に有効なようです。これを意識することで、より支援的に、また、モチベーションを高めるようなリーダーシップが取れる。これらから、今後は、より職場に特化したNLPの開発も有効なのかもしれません。


最後に、NLPはまだ職場での認知度が低いようです。この理由として、NLPが商売化しすぎていると指摘する研究者もいますが、コーチングと比べると、むしろコーチングの方が商売化しているとも言えます。しかし、コーチングはより普及していることを考えると、NLPの資格や実践の規制が不安定なことが上がるのかもしれません。

今後またさらにNLPやメンタルヘルスに関する実験を続けていきたいと思います。

参照
Kotera, Y. & Van Gordon, W. (2019). Japanese managers’ experiences of Neuro-Linguistic Programming: A qualitative investigation. Journal of Mental Health Training, Education and Practice. doi: 10.1108/JMHTEP-06-2018-0033
posted by ヤス at 08:15| Comment(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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