2022年08月03日

実施科学:保健医療介入の経済評価に対する包括的なアプローチ

ヘルスケアの経済的影響を理解することは、異なる環境でも再現可能な効果的なプログラムを開発するために非常に重要です。ヘルスケアへの介入は、何よりもまず、個人とコミュニティの治療結果、そして、彼らの生活の質を向上させることを目的としています。しかし、多くの場合、コストに制限があり、その中でどれだけ効果的に実施するかが大事です。

ヘルスケア介入の経済評価では、備品や会議室といった目に見えるものから、スタッフや介護者の労働時間、医療利用、アウトカムといった数値化しにくいものまで、介入期間中のコストをいかに正確に見積もるかが焦点となります。


経済評価の基本要素を紐解く

医療介入は、多くの場合、複数の利害関係者や大きな影響を伴うため、実施チームにとって、誰がプロセスの改善から最も恩恵を受けるか、そして誰がその費用を負担するかを理解することが極めて重要になります。

経済評価の最初のステップは、介入を行う意思決定者、患者、医療システム、コミュニティなど、実施に関係する人たちを特定することです。そして、かかる費用(コスト)と実施がもたらす便益(ベネフィット)をそれぞれの視点から考える必要があります。


そのために以下のような質問があります。

どのようなタイムラインを考えているのか?

介入はどれくらいの期間継続されるのか?

時間の経過とともにコストは変化するか?

どのような人々が参加し、どのような環境で介入が行われるのか?

病院、診療所、コミュニティ、家庭での実施にかかるコストはそれぞれどれくらいか?

どのような成果を測定すべきか:経済的な節約、臨床的成果、時間短縮、患者満足度?

対象となるアウトカムが複数ある場合、どのように順位づけるか?

スタッフ、リソース、消耗品にかかる費用は?

助成金は利用可能か?その場合、介入を別の場所で再現する場合、同じ助成金が提供されるか?

などなど。

経済評価には、最良のシナリオ、中間的なシナリオ、そして、最悪のシナリオを想定したコスト見積もりを作成することがおすすめです。また、実施チームは、プロセスマップを作成することによって、これらの潜在的な費用を明確に理解することができます。

食事の用意について考えることが、比喩として使えます。そのプロセスには、材料や消耗品も含まれますが、レシピを探し、調理をし、後片付けをするための時間やコストもあります。パートナーや子供に手伝ってもらう場合、彼らの時間コストも含まれなければなりませんし、彼らの貢献が、あなたの時間節約となったり、料理の品質向上になることも計算する必要があります。


計画が確立されると、実施チームは、医療介入にかかる費用において、その主要分野について考えることができます。考慮すべき主な分野は、スタッフ配置、スペース、消耗品、医療やサービスの利用、スタッフの時間です。

スタッフ配置

積極的な介入段階におけるスタッフの労働時間を計算することは重要ですが、プログラム開始前にスタッフのトレーニングの必要性を検討することも重要です。また、実施チームは、関与するスタッフのさまざまな技能レベルや資格の有無を考慮する必要があります。またそれらのランクや段階によって、時間にかかる金額も異なるので、それらをそれぞれ正確に計算します。

スペース

ワークスペースの確保も大事です。復員軍人委員会で行われた実装研究では、スペース費は全体の約55%でした。

消耗品

介入手法によっては、技術、教材、医療用品、その他の物理的な資産に多額の出費を必要とする場合があります。多くの場合、これらの資材にかかる費用は比較的簡単に計算できますが、実施チームは、さまざまな規模で取り組む場合の費用の変動を頭に入れておくべきです(例:100冊教材を作成する場合と、1万冊作成する場合の違いなど)。

医療やサービスの利用

エビデンスに基づく介入のほとんどは、医療サービスまたは社会サービスの利用を伴うものであり、実施する際の戦略によって変化する可能性があります。

スタッフの時間

人の時間の価値を計算することは、経済評価において最も困難な部分だと考えられます。無給の介護者(家族介護者など)、高齢者や障害者など、従来の労働力ではない特定の集団と仕事をする場合、生産性の測定は簡単ではありません。


経済評価は、医療介入の費用と影響を理解するために極めて重要です。医療介入を現場で実施する際の、予想外の出費を注意深く詳述することで、実施チームは現実において、エビデンスのある介入法の有効性をよりよく示すことができるのです。


参照
https://academyhealth.org/blog/2021-07/implementation-science-taking-comprehensive-approach-economic-evaluation-health-interventions
posted by ヤス at 23:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 心理学理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック