2023年08月30日

"Case for Support"について

研究費を応募するときに、 Case for Support というものを要求されることがあります。これは、提案された研究とその意図する成果を記述するものです。背景、重要性、方法論、関連するすべての作業や活動を網羅し、質の高い研究プログラ ムにする必要があります。Case for Support で、なぜこの提案が資金支援されるべきかを審査員に説明します。研究費の申請にはよく共同電子提出(Je-S)システムが使われますが、ここではA4版8ページの1文書として添付する必要があります。


チームの専門性と実績
チームの専門性と実績に関する書類は、A4で2ページ以内とします。

研究チームが研究を実施するのに適切な専門知識と経験を有していることを審査員に示してください。学外のパートナーや共同研究者もチームの一員とみなしましょう。この研究提案に関連するチームの最近の研究成果や進歩を要約してください。これには、その研究が社会や経済に与えた実証可能な貢献についても言及することができます。

また、受入機関のチーム、プロジェクト・パートナー、共同研究受益者の専門知識と能力を明記し、それらが提案された研究にどのように、またなぜ適切であるかを説明する必要があります。学際的な提案の場合、チームを構成する専門分野の幅を明確にすることが特に重要です。

産業界などの受益者とのパートナーシップについては、提案された研究活動に対するその重要性と、そのパートナーシップがどのように研究に利益をもたらすか、または影響の可能性を高めるかを説明します。適切であれば、これらのパートナーとの関連する過去の共同研究を詳細に説明すること。

客員研究者との共同研究については、その研究者がプロジェクトにどのような貢献をするのか、なぜその研究者が最も適切な人材なのかを説明する必要があります。

フレックス勤務やキャリアの中断が、研究チームのメンバーにどのような影響を与えたかを述べてください(該当する場合のみ)。その必要が生じた個人的な事情を説明する必要はなく、個人の実績やキャリア開発への影響を説明する必要があります。

提案する研究とその背景の説明
提案された研究とその背景の説明は、A4 で最大 6 ページまでとします。このセクションを使って、提案する研究とその背景を説明してください。あなたが何を達成しようとしているのか、なぜそれがタイムリーで重要なのか、そしてどのように目的を達成するのか、その詳細な計画を提案書を審査する人に示す必要があります。

申請書の構成は、以下が一般的です。

背景
提案テーマを紹介し、その学術的、産業的、政策的、社会的、その他関連する背景を説明する。その研究によって誰がどのような恩恵を受けるかを示す。

EPSRC の助成金を受けている現在の研究ポートフォリオの中で、この研究がどのような位置づけにあるのか、また、英国内外の過去および現在の研究とどのように関連しているのかを説明する。

知識の貢献
研究が、当該分野および関連分野の国内外の研究者にどのような利益をもたらすかを説明すること。他分野の研究者と連携し、新たな知見を広める機会も含め、研究者が恩恵を受けられるようにするためにどのようなことを行うかを詳述すること。

国にとっての重要性
イギリスが国際的な競争力を維持するために、なぜその研究がイギリスの税金で支援される必要があるのかを申請者に説明することです。なぜその研究がイギリス経済に利益をもたらしうるのか、なぜその研究が別の学問分野の発展につながりうつのか、国際的な見地からもなぜその研究が支援を得るにふさわしいのかを説明する必要があります。

以下の点を踏まえながら、提案された研究が長期的にどのような効果をもたらすかを説明します。

1 他の研究分野の健全性、現在または将来のイギリス経済の成功、主要新興産業の発展、イギリス社会の主要課題への対応に貢献できる。
2 ニッチを有する分野を含め、世界をリードする独自の研究活動を確立または維持することで、国家戦略上のニーズを満たすことができる。
3 イギリスのポートフォリオの他の研究や戦略とマッチし、補完するものである。

申請者は、その研究がEPSRCの研究分野と戦略にどのように関連し、補完するかを示す必要があります。ポートフォリオの詳細は、EPSRCのGrants on the Web (GoW)から入手できます。


研究仮説と目的
研究のアイデアや仮説を述べる。提案されたプロジェクトが斬新で時宜を得たものである理由、例えば科学的野心や変革的成果の可能性を強調する。プロジェクトの全体的な目的と、それに対する成果、結果、影響を評価するための測定可能な目標を明確にすること。

プログラムと方法論
研究方法論の詳細と正当性。実施される研究およびインパクトに関連する活動を含む作業プログラムを説明すること。プロジェクト・パートナーや利害関係者を含め、研究チームの各メンバーの貢献を明らかにすること。進捗状況のモニタリングに使用する目標とマイルストーンを示し、プロジェクトの管理方法を説明する。

プロジェクトのインパクトを強調する
助成金の申請プロセスにおいて、インパクトは重要な検討事項です。そのため、提案された研究のインパクトを最大化する方法を、研究の性質と範囲に適した方法で強調する必要があります。

例えば、発見研究に重点を置いた提案では、主に新知見の創出に重点を置くかもしれませんし、応用研究の要素が大きい提案では、経済的・社会的利益に関連する影響を持つかもしれません。

研究申請の評価基準では、創造性を発揮し、適切であれば、インパクトに関連する活動を支援のケース全体に統合することができます。EPSRCは、そのような活動のための完全なコスト計算とリソースの要求を強く推奨しています。

国にとっての重要性とインパクトの関係
国にとっての重要性の目的は、イギリスが国際的な競争力を維持するために、なぜその研究がイギリスの税金で支援されることが重要なのかを明確にすることです。国にとっての重要性には、上記の通り様々な側面があるため、この質問に対する回答には、なぜその研究がイギリス経済に利益をもたらすのか、なぜその研究が異なる学問分野の発展につながるのか、なぜEPSRCの戦略的実施計画の文脈において重要なのか、なぜ国際的にリードするグループが支援を受け続けることが重要なのか、などが含まれます。

インパクトは品質基準の中で「提案された方法論の適切性とインパクトを実現するためのアプローチが適切かどうか」というで項目で問われます。インパクトとは「研究の受益者が誰なのか」また「知識の発見から利用までの時間を短縮するために、その受益者とどのように協力するのか」ということです。

私たちは、応募者が研究のインパクトを予測できることを期待しているわけではありませんし、インパクトがもたらす便益を完璧に計算するよう期待しているわけでもありません。しかし、私たちはすべての研究者に、自分の研究の成果を「誰が利用しうるのか」そして「それを実現するためにはどうすればよいのか」を早い段階から考えることを奨励しています。


責任あるイノベーション
責任あるイノベーションとは、社会的に望ましく、公共の利益のためになる「科学とイノベーション」の創造性と機会を促進しようとするプロセスのことです。イノベーションには、資金提供者、研究者、一般市民を含む利害関係者、影響を受ける当事者すべてが重要な役割を担う「集団的責任」が伴います。申請者は、プロジェクトの計画中および期間中、責任あるイノベーションを考慮し、EPSRCの責任あるイノベーションのためのフレームワークの中で活動することが期待される。

パブリック・エンゲージメント
効果的なパブリック・エンゲージメントとは、研究者が参加者の話を聞き、参加者から学ぶという双方向のコミュニケーションです。助成金の対象となる研究に関連した、十分に計画されたパブリック・エンゲージメント活動が奨励されます。正当な理由があれば、広報活動に関連する費用を申請することができます。どの人口グループを対象とし、彼らがどのような恩恵を受け、どのようにその活動を評価しますか?これを明確にしましょう。

Case for Support を書くコツ
Case for Support は、あなたの研究が資金提供されるべきであると研究仲間を説得する機会です。明確で簡潔、専門用語を使わないスタイルで書きましょう。特に査読者には、研究の何が魅力的なのかを説明しましょう。自分の研究分野の専門家たちに、あなたのプロジェクトの価値を納得してもらう必要があります。


あなたの提案が独創的であることを審査員に納得させ、目的を明確かつ簡潔に説明しましょう。他の人が同じような研究をしているからといって、提案が却下されるわけでは ありませんが、アプローチの新規性や成功の可能性を説明できなければ、提案の価値は不確かなものになります。

研究の性質によっては、研究問題の定義、研究プログラムの方針策定、インパクトを実現する計画に、主要な利害関係者を含めることが適切な場合もあります。このような場合、これらの詳細と、今後どのようにステークホルダーを関与させるかを説明してください。

適切であれば、インパクトの実現を支援する活動は、質の高い研究プログラムの不可欠な一部となり得ます。例えば、社会、経済、人々、知識など、どのようなインパクトが研究プログラムにふさわしいかを検討してください。

インパクト創出を促進するための適切なリソースを申請書に要求する際には、経費を節約しようとするよりも、潜在的な成果の実現を支援する適切な経費を含める方がはるかに好ましいです。

パートナーシップと共同研究は、知識の交換を可能にする重要なやり取りです。適切であれば、研究成果から利益を得るであろう関連するエンドユー ザー、パートナー、潜在的パートナーを特定しましょう。

提案書への貢献やレビューに外部のパートナーを招いた場合は、それもCase for Supportに記載しましょう。産業界のパートナーや政策立案に携わるパートナーは、インパクト創出の経験を持っており、提案された活動のこの側面を実現するのに役立つ可能性があります。

研究であれインパクト重視であれ、すべての活動は十分に練られたものでなければなりません。それぞれの活動には、適切に配分され、正当化された資源が必要であり、また、どのように達成されるかを明確に示すために、実施のための責任の所在が定められていなければなりません。提案内容を明確に考え、それがどのように成功するかを説明しましょう。

プロジェクトの期間については、現実的に考えてください。他者を巻き込む時間やインパクトが実現するまでの時間などを確保するために、より長い期間のプロジェクトを申請することを希望する場合もあります。

ジャーナルベースの評価基準
研究評価に関するサンフランシスコ宣言(DORA)の勧告と原則を支持するUKRIのコミットメントの一環として、UKRIの審査員およびパネルメンバーは、個々の研究論文の質の代用尺度として、ジャーナル・インパクト・ファクターのようなジャーナル・ベースの指標を使用しないことを推奨しています。

論文の内容は、特に初期段階の研究者にとっては、出版指標や掲載誌の特定よりも重要です。査読者やパネルメンバーは、研究発表に加えて、すべての研究成果(データセット、ソフトウェア、発明、特許、プレプリント、その他の商業活動を含む)の価値と影響力を考慮するよう奨励されています。査読者やパネルメンバーには、政策や実務への影響力など、研究インパクトの質的指標を含め、幅広いインパクト指標を考慮するよう推奨されています。

参考文献や図版のリストは、A4 版 6 ページ以内に収め、追加添付や付録として提出することはできません。


参照
https://www.ukri.org/councils/epsrc/guidance-for-applicants/what-to-include-in-your-proposal/case-for-support/
posted by ヤス at 19:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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