2023年09月11日

現実主義的統合(Realist Synthesis)とは?

現実主義的統合とは、現実世界、特に複雑な状況において、物事がどのように、そしてなぜ機能するのかを理解するために用いられる研究アプローチです。あるプログラムや政策、介入が成功したり失敗したりする理由を考える時などに使われます。この複雑そうなアプローチですが、簡単にいうと以下の5つのステップを経ます。

1 問題またはプログラムの特定
まず、研究したいテーマやプログラムを選ぶ。ヘルスケア・プログラムから社会政策まで、何でも構いません。

2 エビデンスの収集
調査、報告書、インタビューなどさまざまな情報源から情報を集め、プログラムや介入の成果について学びます。

3 パターンの発見
「これはうまくいく」「これはうまくいかない」というだけでなく、現実主義的総合はパターンを見つけ、その背後にある理由を理解しようとします。プログラムのどの部分が、ある人にとっては成功し、他の人にとっては成功しなかったのか、などを考えます。

4 理論構築
発見したパターンに基づいて、なぜそのようなことが起こるのか、理論や説明を作成する。ここでできた理論は、今後同じような状況で何がより効果的かを理解するのに役立ちます。

5 テストと改良
これらの理論が正しいかどうか、あるいは調整が必要かどうかを確認するために、他の環境でテストします。これによって理解が深まり、プログラムや政策の立案においてより良い判断ができるようになります。

つまり現実主義的統合とは、現実世界の状況を「どのように」「なぜ」に焦点をあて、深く掘り下げ、より良く機能させる方法を学ぶ方法です。物事の本質を理解するための探偵のようなものです。


現実主義的評価フレームワーク(Realist Evaluation Framework)
現実主義的統合のための確立された枠組みとして「現実主義的評価フレームワーク」がある。このフレームワークは、研究者や評価者が、プログラム、政策、介入の成果に寄与する根本的なメカニズムや状況を理解するために、体系的に現実主義的アプローチを実施するのに役立ちます。

1  プログラム理論の明確化
研究しているプログラムや介入を明確に定義することから始めましょう。その意図する成果は何か、どのように機能することになっているのか。このステップは、プログラムの論理を明確に理解するのに役立ちます。

2 状況・メカニズム・成果(Context, Mechanism, Outcome, CMO)を特定
現実主義的総合は、特定のメカニズム(物事がどのように機能するか)が特定の状況(物事がいつ、どこで起こるか)において引き起こされ、結果(成果)を生み出すという考えを中心に展開されます。利用可能なエビデンスやデータから、これらのCMO構成を特定していきます。

3 エビデンスの発見
定性的・定量的データ、調査研究、報告書、専門家の意見など、幅広い証拠を収集します。これらの証拠は、CMOの構成を明らかにするのに役立つはずです。

4 初期理論の構築
エビデンスと特定されたCMOの構成に基づき、プログラムや介入がさまざまな状況でどのように機能し、さまざまな成果を生み出すかについて、初期の理論を構築します。

5 理論のテストと改良
構築された初期理論は、追加的なエビデンスや他の情報源からのデータに対して矛盾しないかどうかテストされるべきです。このテストは、理論を洗練させ、より強固なものにするのに役立ちます。

6 発見の統合
最後に、すべてのエビデンスと理論を統合し、プログラムがさまざまな状況でどのように作用し、なぜ特定の結果をもたらすのかについて包括的に理解します。

現実主義的評価の枠組みは反復的であり、新しい証拠が入手可能になるにつれて、継続的に理論を洗練し、検証することの重要性を強調しています。様々な調査や評価の文脈に適応できる柔軟なアプローチであり、現実の環境における複雑な介入やプログラムを理解するための貴重なツールとなります。

posted by ヤス at 06:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 心理学理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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