2023年10月21日

英国2028年版REFについて決定事項

英国の高等教育助成機関は、英国の大学が研究の成果を競い合うREF(Research Excellence Framework)の次回開催についていくつかの決定を下しました。次回のREFは2028年に終了し、2021年から2027年にかけての研究とインパクトを評価します。REFは、英国全体の優れた研究を推進し、研究への公共投資に対する説明責任を果たし、毎年約20億ポンド(3600億円)の特別研究資金の配分に反映されます。

英国の研究助成機関は、評価の重点を、「個人の業績」から、「機関や学問分野が、健全でダイナミックかつ包括的な研究環境に与える貢献」へと変えようとしています。また、研究および研究プロセスへのより広範な貢献を評価に含める意向です。


インセンティブの見直し
英国の研究評価方法を一部変更することは、研究のインセンティブを見直すことを意味します。つまり、何が高く評価されるべきかを再考する機会となります。REF 2028 の変更点には、卓越した研究の定義の拡大が含まれ、活気に満ちた持続可能な英国の研究システムを支える人材、文化、環境が適切に評価されることを狙いとします。

3つの評価要素
REF 2028 では、使用される 3 つの評価要素を変更(以下、表示)することで、より幅広い研究成果、活動、インパクトを評価することを狙いとします。これにより、研究そのものだけではなく、研究文化の創造に努めるスタッフも考慮できるようになります。

人と文化(全体の25%)
この要素は、REF 2014 および 2021 の「環境要素」に代わるもので、研究文化の評価を含むように拡張されます。この要素の評価に資する証拠は、機関レベルおよび分野別提出論文のレベルの両方で収集されます。

知識と理解への貢献(全体の50%)
この要素は、REF 2014 および 2021 の「アウトプット」の要素を拡大したものである。評価は引き続き、提出されたアウトプットの評価に基づいて行われますが、REF2028では、ここのスコアの少なくとも10%は、学問分野の発展に対するより広範な貢献の証拠に基づきます。

エンゲージメントとインパクト(全体の25%)
この要素は、2014年と2021年のREFの「インパクト」要素に代わるものであるが、2014年のインパクト要素と類似しています。提出書類は、インパクトのあるケーススタディと、ケーススタディ以外のエンゲージメントとインパクトのある活動を証明するための付随するステートメントの両方で構成さます。

新たなアプローチ
REF 2028 では、研究量を決定するために新たなアプローチを採用し、個人の評価から完全に脱却します。研究量は、複数年の平均スタッフ数から決定されます。つまり、個人の貢献には最小値も最大値もなくなります。

REF2028では、すべての研究者と研究を可能にするスタッフの業績が提出対象となります。これらの変更は、評価の包括性を高め、他の分野からアカデミアに移ってきた研究者を支援する環境を提供することを意図しています。

最初の決定文書に示された量的措置は、REFに提出される資料の量を決定することを意図しています。REFに基づく資金提供の成果に関する決定は、このプロセスとは全く別のものです。リサーチ・イングランドは現在、戦略的な研究機関への研究助成に対するアプローチを見直し中である。

今回の修正は、英国の高等教育助成機関が、「将来の研究評価プログラム(Future Research Assessment Programme(FRAP))」の一環として、英国における全国的な研究評価の実施方法を見直すために、丸2年にわたる活動を行った後に実施されました。その中には、円卓会議や2回の文書による協議など、高等教育部門との幅広い協議や、多くの証拠報告書や分析の委託が含まれています。

また、「将来の研究評価委員会(Future Research Assessment Board)」は、国際諮問グループからも助言を求め、他国での研究評価の実施方法についての知見を得ました。これらは「FRAP 国際諮問グループ報告書」にまとめられている。資金提供団体は、報告書の提言を歓迎し、プログラムへの貴重な貢献に感謝を示しています。


世界的な変化
国際諮問グループ議長のピーター・グラックマン卿は「伝統的に英国は、研究評価において、追随者ではなくリーダーであった。従来のアウトプットに重きをおく評価アプローチの意図しない結果に対処するために、世界的に大きな変化が起きています。英国が世界的な研究努力の最前線であり続けたいのであれば、英国もインセンティブ制度を進んで進化させなければならない。」と述べています。

早期決定の公表
初期決定は「初期決定報告書」として公表され、評価と協議活動から浮かび上がった主要な変更要因に対応するものです。また、英国内のより広範な研究政策や動向、研究評価向上のための国際的な取り組みも考慮されています。

決定事項と協議事項は、REF2028 のハイレベルな設計に関連するものです。研究セクターは、今後数ヶ月の間に REF 2028 のさらなる発展や、2024年の基準設定段階における詳細なガイダンスやパネル基準に対して意見を述べる機会を持つことになります。


変革の瞬間
リサーチ・イングランドのエグゼクティブ・チェアであるデイム・ジェシカ・コーナー教授は、次のように述べました。

「国の研究評価を、『個人』に焦点を当てたものから、『研究機関や学問分野がいかに健全でダイナミックかつ包括的な研究環境に貢献するか』ということにシフトさせ、また、『発表された研究成果に焦点を当てたもの』から、『何が研究の卓越性を構成し、それをどのように実証できるか』という幅広い視点にシフトさせるという意味で、これは一世代に一度の変革の瞬間です。私は、REF2028 の初期フレームワークで示された野心に胸を躍らせており、REF2028 が提供する機会を実現するために、研究機関、学問分野、そして研究に貢献するすべての人々と協力していくことを楽しみにしています。」

関与の継続
ウェールズ高等教育財政審議会(Higher Education Funding Council for Wales)の最高責任者であるデイヴィッド・ブレーニー博士は「協力して、英国の高等教育セクターや国際的な専門家と協議した結果、初期決定REF2028を公表するところまでこぎつけたことを嬉しく思います。これは、英国の研究および高等教育セクターが、統合性の高い研究環境が、いかに人々や世界レベルの研究を支えることができるかを認識することを促すものです。私は、最終的な決定がなされるよう、各機関が引き続き協議に参加することを奨励します。」と述べています。

より広い視野
スコットランド財政評議会の最高責任者であるカレン・ワットは、次のように述べています。

「英国全土の大学における研究の評価は、研究がもたらす便益を理解する上でも、将来の資金調達の決定においても、極めて重要です。今日発表された決定は、2年にわたる検討と協議に基づくもので、あらゆる分野の研究を実施する活動や人材をより幅広くとらえることができるようになると同時に、国際的な慣行に沿った評価を行い、英国の研究に関して意思決定を行う人々にとって適切であり続けること、そして最も重要なことですが、研究を実施し支援するスタッフや大学にとって公正であり続けることを確認するものです。」

強固な仕組み
北アイルランド経済省のマーク・リー高等教育局長:

「優れた研究は知識経済の礎であり、REFは研究の質を評価する強固なメカニズムを提供します。REF2028では、より総合的な研究環境の評価に重点が移され、特に人材と文化に焦点が当てられていることを歓迎します。私たちは、この枠組みを発展させるために、パートナーとの協力を続けることを楽しみにしています。」

追加レポートとコンサルテーション
リサーチ・イングランドは「平等インパクト評価」も発表しています。この報告書は、REF2028において提案されている評価方法の平等への影響についての初期検討です。この評価は、REF2028のさらなる開発に反映されるでしょう。

「初期決定報告書」はREF2028のハイレベルな枠組みを設定するものであるが、さらなる協議や作業が必要な事項も数多くあります。これらのいくつかは、短期間の集中的な協議を通じて進められるが、その他の事項については、2024年前半に専門家パネルが任命された後に、専門家パネルとの協議が必要となるそうです。

高等教育機関、および研究の実施、質、資金提供、利用に関心を持つ団体・組織には、多くの特定分野について意見を提供するよう求めています。

参照
https://www.ukri.org/news/early-decisions-made-for-ref-2028/
posted by ヤス at 06:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック