2024年08月20日

DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)における文化的フォーミュレーション

DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)における文化的フォーミュレーションとは、臨床医が診断および治療において文化的要因を考慮し、統合するための枠組みのことを言う。これは、文化がどのように患者の病気体験に影響したかを理解するためのアプローチを提供し、患者が症状をどう認識し、苦痛を表現し、医療システムとどのように関わるかを考慮する。

DSM-5における文化的フォーミュレーションの主な要素は以下がある。

文化的アイデンティティ:患者の文化的背景(人種、民族、言語、文化的グループへの同一視の度合いなど)を理解することなどがこれにあたる。それに加えて、移住の履歴や異文化適応の経験も考慮する。

苦痛の文化的概念化:異なる文化が精神的健康の症状をどのように理解し、表現するか。これには、特定の文化内で認識されている症状のパターン(文化的症候群)、苦痛を表現するための方法(文化的苦痛の言い回し)、および症状の原因(文化的説明)が含まれる。

心理社会的ストレッサーと脆弱性およびレジリエンスの文化的特徴:文化的要因が患者のストレッサー、サポートシステム、および対処メカニズムにどのように影響するか。これらの要因が精神的健康問題にどのように寄与し、またはその影響を軽減するかを見極める。

臨床医と患者の関係の文化的特徴:臨床医と患者の間に存在し得る文化的違いが、コミュニケーション、診断、および治療にどのように影響するか。バイアスや文化的な前提を意識し、それが治療関係にどのように影響するかを考える。

診断およびケアのための総合的な文化的評価:文化的フォーミュレーションを通じて収集された情報を総合し、診断、治療計画、および全体的なケアアプローチに反映させる。提供される精神医療が患者の特定の文化的文脈に適したものであることを狙う。

文化的フォーミュレーション・インタビュー(CFI):
DSM-5には、臨床医が患者のケアに関連する文化的要因を体系的に探るために使用できる「文化的フォーミュレーション・インタビュー(CFI)」も含まれている。CFIは、患者の文化的背景、信念、および精神的健康と治療に影響を与える可能性のある経験に関する情報を引き出すために設計された一連の質問で構成されている。

まとめると、DSM-5における文化的フォーミュレーションは、文化的要因を精神的健康の評価と治療に組み込むための包括的なアプローチであり、ケアが文化的に適切で関連性のあるものであることを保証する狙いがある。

DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル
posted by ヤス at 21:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・メンタルヘルス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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