2024年11月21日

リカバリーカレッジのグローバル展開における文化的影響とは?

私たちのチームの新たな研究で、リカバリーカレッジの運営ガイダンスに潜む文化的なクセを発見しました。

リカバリーカレッジ(以下「RC」)は、メンタルヘルスの回復を支援する学習ベースのコミュニティで、世界中に広がりを見せています。しかし、そのエビデンスはWEIRD(「欧米、教育を受けた、先進国、富裕、民主主義」の頭文字)諸国に偏っており、これ以外の文化圏でのRCの効果や運営についてはほとんど明らかになっていません。

私たちの研究では、RCの運営に文化がどのように影響を与えるかを探ることを目的としました。具体的には、RCの忠実性(=運営の質や一貫性)と文化的特徴との関連性を調査しました。調査対象は、世界28カ国に存在する169のRCのサービス管理者で、これらの管理者に「リコレクト忠実度測定法」という12問の尺度を用いて、RCの忠実性を評価してもらいました。この尺度は、RCの主要な12の運営要素に基づいて開発(1問につき1要素を計測)されたものです。

文化的次元が忠実性に与える影響
分析には、ホフステードの文化的次元を使用しました。この次元は、各国の文化的特徴を測る指標として広く知られています。具体的には、以下の点を評価しました:

個人主義:個人の独立性を重視する文化
放縦:自己表現や欲求の自由を認める文化
不確実性回避:リスクや不確定要素を避ける傾向がある文化
長期志向:未来志向で計画的な文化を優先する文化
権力格差:フラットさよりも、権力による階級が受け入れている文化
達成重視:生活の質よりも、何かを達成することに重きが置かれる文化

その結果、次のことがわかりました:
個人主義と放縦が高い文化では、RCの忠実性が高くなる傾向があった。
不確実性回避が高い文化では、忠実性が低下する傾向があった。
長期志向のある文化では、忠実性が低下する傾向があった。


つまり、個人主義、放縦、不確実性を気にしない、そして、短期志向の文化がある国々では、RCの忠実性が高く出る傾向がある。WEIRD諸国は、これらの4つの文化的な特徴を持ちますす。

結論:RCの運営を超える視点が必要
この研究を通じて明らかになったのは、現在のRCの運営が主にWEIRD文化に基づいて構築されているという事実です。このため、RCが真にグローバルな影響力を持つためには、非WEIRD文化の視点を積極的に取り入れる必要があります。

今回の知見は、世界中でメンタルヘルス回復介入の質を高めるための貴重な指針となるでしょう。多様な文化に適応したリカバリーカレッジの運営が広がることで、より多くの人々がメンタルヘルスの回復を実現できる未来が期待されます。

参照
https://www.nature.com/articles/s44184-024-00092-9
posted by ヤス at 01:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・メンタルヘルス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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