2024年11月27日

同じ手法でも文化が異なれば、宣伝方法が異なる。リカバリーカレッジ実装の日英異文化比較:コーパス談話分析

「リカバリーカレッジ(以下、"RC" [Recovery College])」は、精神的な悩みを抱える人々を支援する教育機関で、参加者一人一人のリカバリー(人生に意味や充足を感じること)やウェルビーイングを促進するコースを提供しています。RCは西洋諸国で始まり、現在では28か国に拡大し、それぞれの文化的背景に応じた運営が行われています。今回の研究では、異なる文化的特性を持つ日本とイギリスにおいて、RCがどのように公的に紹介されているのか、その宣伝表現のされ方を調査しました。

一般的に、文化的な特徴として、イギリスの主要文化は、個人主義と短期志向が特徴で、個人の目標や即時的な成果を重視する傾向があります。対して、日本の主要文化は、イギリスのそれと比較すると、集団主義と長期志向が特徴で、グループの調和や持続的な関係を重視します。

今回の研究の焦点として、日本にある13のRCとイギリスにある61のRCの宣伝資料(合計22,827語)を分析しました。この調査の目的は、各国の文化的価値観がRCの紹介方法にどのように影響しているかを明らかにすることでした。

主な発見として、まずは両国の宣伝に共通したものがありました。日本とイギリスのRCはどちらも、精神疾患の当事者が持つ「体験の価値」を強調しており、リカバリーのプロセスにおいて個人のストーリーが重要視されています。

それぞれの国で違った特徴もありました。日本の特徴としては、「関係性の重視」がありました。宣伝資料では、関係性、コミュニティの支援、そして集団のウェルビーイングを強調。その他の特徴としては、「長期的な視点」がありました。これは、持続的なリカバリーのプロセスや長期的な支援体制の重要性が強調されています。

イギリスの特徴としては、「個人の学び」が強調されていました。つまり、個人のスキル開発、自己の力を引き出すこと、自己主導の学びが中心。また、「短期的な目標」への焦点も顕著でした。即時的な成果や短期間での改善に重点が置かれていました。

日本ではRCは関係性であったり、長期的な視点に価値を置いて宣伝されている。つまり、日本のRC参加者は、集団主義や長期志向に基づいた体験を期待してRCに参加する傾向があると言えます。しかし、現在のRCの運営モデルは、西洋の個人主義や短期志向に影響されており、日本の文化的な期待(つまり、集団主義的で、長期志向に価値を置いた講座内容や運営)には、完全には応えられていない可能性があります。

つまり、RCをグローバルにより効果的にするためには、多様な文化的価値観を反映するよう運営モデルを適応させることが重要です。特に、日本のような集団主義的社会では、関係性や長期的な要素を統合することが必要です。これにより、RCは地域の文化に根ざした支援を提供でき、個人の回復をより効果的に促進できます。

文化の違いを認識し、それを取り入れることで、RCはより個人に寄り添った支援を提供し、さまざまな文化的背景における精神的な回復を促進することができます。

参照
https://link.springer.com/article/10.1007/s11469-024-01356-3
posted by ヤス at 19:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・メンタルヘルス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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