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2014年07月15日

催眠無痛覚にリラクゼーションは必ずしも必要ではない

この実験ではリラクゼーションと覚醒催眠導入において、冷たい痛みを感じなくする催眠暗示を使う場合と使わない場合で比較しました。結果を先に言うと、催眠にかかりやすい人は、かかりにくい人と比べて痛みを感じなかったという結果が出ました。痛みの知覚は、リラクゼーション導入と覚醒導入のどちらでも変わらなかったそうです。催眠にかかりやすい人にとっては痛みを感じなくする催眠暗示を使った方が使わない場合よりも、痛みの知覚が低かったそうです。

これらの発見は、催眠による無痛覚にはリラクゼーションは必要ないということを示しています。催眠にかかりやすさと痛みの軽減には強い比例関係があります。催眠にかかりやすいほど、痛みも大きく軽減できる。

1959年のビーチャー(Beecher)の論文によると「痛みという経験は「痛み知覚」の部分と「反応苦痛」部分から成る」と言われています。これを更に研究したマグラシャン、エバンス、オーン(McGlashan, Evans, Orne)は、反応苦痛には、痛みの経験に伴う主観的な不安感を含むことを発見しました(1969)。その後の実験で、不安感の減少が、痛みの減少につながると説明されました。催眠の導入部分はリラクゼーション効果があり、この効果によって不安感が減り、痛み知覚が減る、という論理です。

しかし1977年、ネオディソシエーション理論を提唱したヒルガード(Hilgard)は催眠による無痛感は、リラクゼーションのみからもたらされるのではなくディソシエートする経験(自分が自分の体から抜け出す、など)からももたらされると主張しました。

過去の研究で、催眠はリラクゼーションの部分をなしにして覚醒した状態でも、作用することがわかっています。ヒルガードとレバロン(LeBaron)の1984年の実験では覚醒催眠によっての無痛感に成功しています。

この実験では無痛感を作るために、伝統的なリラクゼーション催眠と覚醒催眠を用いて効果がどう違うのかを見ていきます。

実験前に参加者は3つの部分から成るトレーニングをしていきます。そこでは催眠にかかりやすさを最大限に高めるための催眠導入練習、かかりやすさテスト、催眠のことを学び、そしてラポール形成の練習をしていきます。

ある大学のコミュニティから304人の参加者を集め催眠のかかりやすさを集計し、かかりやすいグループとかかりにくいグループに分けます。かかりやすいグループには38名かかりにくいグループには27名が集められました。

両グループはその後、様々な催眠導入を体験します。ペリー(Perry)が1977年に指摘しているように催眠の経験がない人は、怖がることがあり、そのために催眠効果を得られないことがあります。だから今回の実験では十分な時間と説明を設け、怖さをなくしてもらってから、催眠を体験していきます。

実験の結果はどうなったか?

催眠にかかりやすい人たちは覚醒催眠であっても、リラックス催眠であってもかかりにくい人たちよりも痛みを感じなかったそうです。そして、催眠にかかりやすい人の中で無痛感の暗示を受けた人たちは受けていない人たちと比べてより痛みを感じなかったそうです。また、全体的な痛みの感知度を見た場合覚醒催眠とリラックス催眠では、その差はあまり無かったそうです。

つまり、この研究が示すところは、催眠による無痛感にリラクゼーションは必要ない、ということです。

この実験は覚醒催眠とリラックス催眠を催眠かかりやすさ度以外の指標(痛みの知覚)で調べた最初の実験です。催眠にかかりやすい人は覚醒催眠においても、リラックス催眠においてもかかりにくい人よりも、大きく痛みの軽減を示しました。

実験後のインタビューでわかったことは催眠にかかりやすさが高くても低くても参加者がみな、この経験に満足であったこと。また、催眠にかかりにくい人は痛みを避けるために何らかの努力(歯をくいしばるなど)をしていたのに対し、かかりやすい人は、そういった努力が必要なかったこと。などがあったそうです。




催眠は非常に効果的な心理アプローチです。ご興味がある方は以下の教材がオススメです。
催眠術のかけ方 ―初心者からプロまで今日から使える
映像で学ぶ催眠術講座 催眠術のかけ方 (<DVD>)
スーパー・ベーシック催眠導入 ―カリスマが教える本物の技術
[オーディオブックCD] 催眠恋愛術 ()
誰でもすぐできる 催眠術の教科書 (光文社新書)
コミュニケーションのための催眠誘導 「何となく」が行動を左右する (知恵の森文庫)


参照
"Effects of Active Alert and Relaxation Hypnotic Inductions on Cold Pressor Pain"by Mary Frances Miller, Arreed Barabasz, & Marianne Barabasz (1991)
posted by ヤス at 23:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 催眠 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月14日

催眠とは意識を情報で溢れさせて無意識に影響すること

Youtubeで催眠のことについてわかりやすく説明した映像(英語)があったのでその映像と要点をご紹介します。

アメリカにある催眠モチベーション研究所(Hypnosis Motivation Institute)の催眠療法士、ジョン・メルトン(John Melton)がセミナーで催眠について教えている映像です。


https://www.youtube.com/watch?v=B4eXB6NqG5I

人は外部の情報を処理するときにそれを感知し(Identify)、何らかの体験とつなぎあわせ(Associate)、反応します(Response)。例えば、車のラジオから聞こえる音楽を聴いて(感知)その曲が流行ったときのことを思い出し(つなぎあわせ)その時のなつかしかった感情にひたる(反応)。そしてこういった運動が起きているのが脳です。

人の脳は無意識と意識でできていてメルトンいわく、無意識が88%を占め、意識が12%を占めるそうです。

無意識の根底には闘争・逃避モード装置があります。これは生命維持のための本能的な仕組みです。その上には既知体験(Knowns)があります。プラスの関係性を持つ経験もあれば、マイナスの関係性を持つ経験もあります。昔、犬にかまれた人は、犬という情報に対してマイナスの感情を作動させるだろうし、犬が大好きな人は、プラスの感情を作動させます。

ここまでが無意識です。

そして意識の最初の層はクリティカル・マインドが占め、周囲の状況を常に判断しています。この状況は正しいか、都合が良いか、受け入れるべきかどうか。そしてその上に論理、理由付け、決断、意志をつかさどる部分があります。

人は何かをしようと思うけど、できないというのは単純にいうと12%の意識と88%の無意識が葛藤していて、「何かをしよう」とする意識が、無意識に負けているのです。

ところが、催眠療法はこの無意識に直接的に働きかけてその人が求める変化の作成を手伝います。

では、どうやって無意識に働きかけるのか?それはクリティカル・マインドを邪魔するのです。

意識にはメッセージ・ユニットがあります。わかりやすく、情報を保持できるマグカップだと思ってください。人に莫大な情報を与えるとマグカップはいっぱいいっぱいになりクリティカル・マインドの検閲効果が下がります。そこで、クライアントの求める変化の暗示を入れるのです。

これはちょうど、何かに没頭しているとほかのことを忘れるのと同じです。朝、寝坊をして仕事に遅れるかもしれないとき、その人は会社について会社までどうやってきたか覚えていない、ということはよくあります。

メッセージ・ユニットが「間に合うかどうか」「遅刻したらどう言い訳しよう」などといった質問によってあふれていてそれ以外のことは頭に入っていないのです。

ほかの例としては、映画もそうです。巨大なスクリーンで、臨場感溢れる音響効果。これにメッセージ・ユニットは溢れてしまってストーリーを検閲しようとせずに、ストーリーに没頭してしまう。だから、ストーリーの感情を自分も感じて感動したり、怖がったり、苛立ちを覚えたりする。

映像の最後にメルトンは催眠の定義をこう言っています。「催眠とはメッセージ・ユニットを溢れかえらせることによってクリティカルマインドの検閲効果を抑え、それによって催眠言語の影響力が伝わりやすくして無意識にアクセスすることである。」と。

非常に有意義な映像でした。




催眠に興味がある方は以下の本、DVDがオススメです。
実践・自己催眠術
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映像で学ぶ催眠術講座 催眠術のかけ方 (<DVD>)
誰でもすぐできる 催眠術の教科書 (光文社新書)
コミュニケーションのための催眠誘導 「何となく」が行動を左右する (知恵の森文庫)



posted by ヤス at 18:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 催眠 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月28日

比喩は気づかれないが大きな力を持つ

ある事について話しながら他のものを意味する比喩。辞書で調べると「ある物事を、類似または関係する他の物事を借りて表現すること。たとえ。」と書いてあります。

(Yahoo!辞書より)

比喩の力は、私たちが気づかないほどに隠れているのに私たちの思考に大きな影響を与えることがあります。

スタンフォード大学のポール・シボデウとレラ・ボロディツキー教授が比喩の力について実験をしました。482名の学生を集め、アディソンという街で起きた犯罪の報告書を読んでもらいました。読んだ後、学生たちはその解決策について話し合います。

最初の報告書には犯罪のことを「街を襲う粗野な猛獣」「近所に潜んでいる」というように表現します。学生たちは読み終わって、解決策を話し合います。75%の生徒が懲罰に関係したり、強制的な解決策、つまり、もっと多くの刑務所を作るなどを提案しました。

その反対に、社会構造の変化や経済の建て直し、教育の改善や保険体制の見直し、というような改善に関する解決策を提案するのはたった25%の生徒でした。

次に、第2の報告書にはほぼ全て最初のものと同じに書かれてあるのですが、犯罪に対する比喩の使用を変えてあります。ここでは犯罪を「街にはびこるウイルス」「街に感染している」というように表現します。

これを読んだ後ではたった56%の生徒が強制的な解決策を支持し、44%の生徒が社会構成の見直しなど改善的な解決策を支持しました。

更におもしろいことにこの話し合いの後に学生に記事のどの部分を見て解決策の決断をしたかと聞くと比喩の違いに気づいた学生は少なく(5%のみ・・・参照記事では3%と書いていますが、その出典記事では5%となっています)、多くが言葉ではなく、統計にある数字を見て決断した、と答えたのです。

シボデウとボロディツキーはこの後、さらに比喩の違いをわかりにくくして同じ実験をしました。「猛獣」と「ウイスル」の比喩を一回だけ使いました。それでも同じような傾向が出たそうです。

またこれに関する他の実験でシボデウとボロディツキーが発見したのは、これら比喩は正しい状況で使わないと作用しない、ということです。

報告書を読む前に「猛獣」又は「ウイルス」の同意語を聞いてから、同じ報告書を読んで、学生に解決策を聞いたら、どちらの学生も同じような解決策を支持したそうです。またこの比喩を報告書の最後に持ってきた場合も、顕著な違いは見られなかったそうです。比喩の作用には的確な状況設定が必要だと結論付けたそうです。

僕が習う催眠療法の手法でも比喩は大事な役を担います。そういう点からも非常におもしろい記事でした。

無料アンケートツール『クエスタント』 -MACROMILL-


比喩に興味がある方は以下の本がオススメです。
メタファー思考 (講談社現代新書)
日本語のレトリック―文章表現の技法 (岩波ジュニア新書)
Metaphors We Live by(邦訳:レトリックと人生

参照
http://www.psychologytoday.com/blog/neuronarrative/201105/whether-beast-or-virus-metaphor-is-powerful-stuff
posted by ヤス at 00:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 催眠 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月01日

催眠に関する記事

言語構造の理解に大きく貢献、チョムスキー
4−2.信念が潜在能力発揮を決める
3−2.状態管理の鍵
2−2.NLP:脳をベストに動かす科学
はじめての催眠講座(全55記事)

英国医師会による催眠の定義
エリートアスリートに対して催眠ができる事
催眠を使ったメンタルトレーニングで自己イメージアップ
催眠とCBTが過敏性大腸症候群(IBS)に有効
催眠は存在するー神経科学からの証明

プロゴルファーに催眠を使いパフォーマンスアップ
催眠でポジティブ思考促進。胃を健康に
グリフィス、失敗じゃない。スポーツ心理学、野球への応用
スポーツ心理学の親、コールマン・グリフィス
催眠によるリラクゼーション療法が閉経後の女性の性生活にプラス

現状を承認し、目標のために使っていく
ゴルフ選手に催眠を
バスケ3ポイントシュートを催眠で向上させる
バトミントン、催眠でショートサーブが向上
催眠にかかりやすさとダイエット

催眠とは意識を情報で溢れさせて無意識に影響すること
催眠無痛覚にリラクゼーションは必ずしも必要ではない
ヒルガード、ネオディソシエーション理論
アスリートの求める状態、フロー

自発的催眠は現在の定義には含まれていない
催眠の定義とその効果
バスケのパフォーマンス向上とフローにおける催眠効果
アスリートに催眠を(全12記事)
アスリートに催眠を使う際に気をつける12のこと

催眠はリラクゼーションとイメトレの合わせ物
80年代以前の催眠研究が役立たない訳
フロー、ゾーン、ゴルジ腱器官の解放
フロー状態は一種の催眠状態である

スポーツでの催眠。イメージングとリラクゼーション
催眠の歴史(全9記事)
催眠療法は筋斗雲に乗ること
認知催眠療法を使って痛みコントロール
元気玉は本当に効く

具体性、具体性、具体性
比喩は気づかれないが大きな力を持つ
ラポールは帯をつかむこと
賢さとは出来事を利用する能力
催眠療法を使ってペーパーテストで能力発揮

エリクソニアン催眠の専門家の対談
催眠、ネオディソシエーション理論
ストレスマネジメントが肌の健康につながる
少年野球選手に催眠を。パフォーマンス向上とトラウマ解消
「書く」ことの大事さ

BBCの催眠療法についての動画
欲しい結果を定めてそのために脳を使う
催眠と痛みに関する実験 バラバズ
いかに自分に許可を出すことができるか
不眠は肥満、高血圧、糖尿病の可能性を高める

気分に影響するか、心理構造に影響するか
催眠にはモチベーション、信念、期待が不可欠
クライアントさんのウォンツがあって成功する
「〜しないでください」は「〜してください」
催眠の3レベル・運動、感覚、記憶支配

催眠療法、ラポールと心構えがモノを言う
漸進的筋弛緩法、1920年代ジェイコブソンが開発
モーツアルト効果(クラシックは赤ちゃんの脳に良い)は本当か?
実質よりも比較で認知する

その他、左上の検索キーから、「記事」を選択してキーワードを検索すると、これら以外の記事も見る事ができます。
posted by ヤス at 07:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 催眠 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月21日

言語構造の理解に大きく貢献、チョムスキー

催眠を効果的にするために、言語構造を理解する事は欠かせません。言語構造を理解するにあたり、大きな貢献をした人と言えば、ノーム・チョムスキー(Noam Chomsky)です。彼は1928年にフィラデルフィアで生まれ、言語学界また政治界に大きな影響を及ぼしました。

チョムスキーはペンシルバニア大学で学士課程中に言語学に興味を持ち始めます。そしてゼリグ・ハリス(Zellig S. Harris)教授の薦めで言語構造について研究を始めます。

チョムスキーはヘブライ語の言語構造を研究し、それを1949年に論文にします。これを本の形にして1951年『Morphophonemics of Modern Hebrew』を出版します。この中でヘブライ語の音声分散について説明しています。その後、同じテーマで『The Logical Structure of Linguistic Theory』を出版します。

チョムスキーは言語学者以外にも政治活動家や作家としても知られています。学士号を取得後、彼はハーバード大学で研究生として研究を続けます。そこで彼は言語学の構造的理論を確立し、言語学会に旋風を起こします。その後、彼はマサチューセッツ工科大学で言語学を教えます。

チョムスキーの研究はそれまでの言語学の主張とは異なるものであり、より近代化されたものでした。当時、言語学者の間で言語習得は先天的なものか、後天的なものかという論争がありました。チョムスキーは、人間の脳にとって言語習得は先天的な構造、機能であると主張しました

当時の段階で、脳内に言語を理解し、作り出す脳器官がある事は知られていたものの、人がどのように言語能力を身につけるのかは知られてませんでした。この部分でチョムスキーは大きな貢献をすることになります。

チョムスキーは自らの言語習得理論を裏付ける為に、基本的に4つの論点を抑えました。

1つが最適学習年齢です。たいていの場合3〜10歳の間に子どもは言語について全般的な理解をし、流暢さを獲得します。この期間を過ぎると言語習得は難しくなります。外国語学習を中学や高校で始める事が効率の悪い方法だと言われるのはこの理論に基づいています。

第2の論点が子供が言語を習得するのに特別な合図は必要なく、彼らは自然と学んでいくという事。親は子供に言葉を覚えるように働きかける必要はありません。もちろん親が赤ちゃん言葉を使ったり、本を読んで聴かせる事はプラスにはなりますが、そうした事をしなくても子供は勝手に言葉を覚えていきます。

第3の論点は、子供は修正をされても、修正される前の形で言語を処理するという事。言語習得のある段階では子供は既に複数形になっている物を、更に複数形にしようとします。これを親が修正しても、子供はまたダブル複数形で話します。

第4の論点が、子供の言語習得の過程は、他の言語でも同じように経過されるという事。子供達は皆、これらの過程を同じ年頃、体験していきます。例えば、中国の子供はアメリカの子供と同じように言語習得パターンを経ていきます。

こういった観察と知識を踏まえた上で、チョムスキーは独自の先天的な言語習得構造を提唱していきました。

チョムスキーについて知りたければこの本がオススメです。
知の逆転 (NHK出版新書 395)


参照
http://www.muskingum.edu/~psych/psycweb/history/chomsky.htm
posted by ヤス at 00:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 催眠 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする