2019年01月29日

AIで従業員のモチベーションを分析・アチューンド

東京のアチューンド(Attuned)は、「予測的HR分析」という特殊な分析をして、それぞれの従業員が何にモチベーションを持っているのかを明確にするツールを開発しました。日本の多くの企業がこのツールに投資をし、従業員の心を読もうとしているそうです。


アチューンドでは、従業員は55問のアンケートにオンラインで回答します。質問は2つのペアとなる項目から成り、例えば、「1日の行動を前もって決めておくと、安心感がする」と「集中すべき仕事は、その日の流れで決めたい」という項目から、どちらが自分に合うかを選びます。

結果は「モチベーション・プロフィール」として11個の人間的価値観(例:競争、フィードバック、自主性、安心感、経済的必要性)に分類されます。

モチベーションが高い分類は「必要である」とされ、低いものは「あったらいい」などと分類されます。これらの情報は、マネージャーにとって、その従業員がどのような環境で力を発揮するのか、何がモチベーション維持に有効なのかを知るのに役立ちます

社交性が大事な従業員にとって、例えば、金曜日に飲みに行こうと言うとモチベーションになるかしれませんが、経済的なことを優先したい従業員にとってはそうではありません。またこのツールでは、マネージャーと従業員の共通の価値観も導き出してくれます。

アチューンドは基本的なパッケージだと年間で約20万円かかります。そして企業規模に応じて価格は変化します。また、この基本パッケージには「追加アンケート」があり、30秒程度で答えられるアンケートが2週間おきに送られ、モチベーションを測定します。このような仕組みで従業員のモチベーションをこれまでにないほど速く知ることができ、従業員(そしてマネージャー自身)のストレスの軽減にもつながります。

またこの情報は、従業員を配置する際にも、どの部署であれば最も力を発揮するかを考えるのに役立ちます。採用にも使えるでしょう。ある企業では、アチューンドを使ったおかげで、ミス採用(6ヶ月以内にやめてしまうケース)の確率が35%から8%に減ったそうです。


開発には、心理学者を巻き込んで、2年以上を要したそうですが、興味深いことに年齢、性別、文化によるモチベーションの違いはなかったそうです。しかし、若干の文化的な違いは回答する様子に見られたそうです日本の労働者は、「強く同意する」といった選択肢は選ばず、「どちらかというとそうだ」といったソフトな回答を選ぶ傾向が強いそうです。

アチューンドは日本では、楽天、デンソーといった企業で採用されているそうです。

たまたまこの記事が目に入ったのでアチューンドのサービスについて書きましたが、ヒューマン系とされている分野でもどんどんとIT技術が入ってきて、良いサービスを提供しています。人の心をどれだけIT技術でサポートするか。これはYES・NOといった二択の問題ではなく、「人間が何をどのように使うか」という問題だと思います。今後ますます大事になる論点だと思いました。

参照
https://www.businessinsider.co.za/employee-motivation-survey-attuned-japan-startup-2019-1
posted by ヤス at 08:10| Comment(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月07日

ワークライフバランスが悪いことの悪影響

ワークライフバランスが大事だと言われていますが、どのような研究があるのか。面白いものがあったので紹介します。

ワークライフバランスに理解的なマネージャーとそうでないマネージャーの下で働くと、どのような違いが出るのか。ハーバード大学のバークマンらの約400人の医療に携わる労働者を対象にした研究によると、理解的でないマネージャーの下で働くと、理解的なマネージャーの下で働く場合と比べて、睡眠時間は1日あたり29分短く、心臓疾患のリスクとなる要素が2倍以上高くなるそうです。

仕事は仕事だから、家庭のことは持ち込むなといった姿勢のマネージャーの下で働く従業員は睡眠と心臓に悪影響を受ける。また、その労働者が、患者と直接接するポジションであれば、心臓疾患のリスク要素は6倍にも高まるそうです。

また他の研究では職場のプレッシャーと心臓病の関係性を明らかにしました。デンマークで15年間、12000人の看護師を対象にした研究では、非フレキシブルなマネージャーとスケジュールの下で働くと、心臓病の確率が増える。そして、50歳以下の労働者にその傾向は特に高く見られた。


では対応策はあるのか?ミシガン州立大学のコセックらによると、マネージャーにどのようにスタッフの休んだ穴を埋めるのか、また、感情的にどうサポートしたらいいのか、といった30分ほどのコンピューター上での講義と75分の対面での講義をした結果、彼らの部下が持つマネージャーに対する印象が変わり(マネージャーはワークライフバランスに対して理解的だと思うようになり)、結果、部下たちの仕事上での態度と健康度が高まったそうです。

ワークライフバランス。特に近年、注目を浴びている概念なので、より調べて行きたいと思います。

参照
https://www.theglobeandmail.com/report-on-business/careers/management/the-real-cost-of-upsetting-the-work-life-balance/article4083733/
posted by ヤス at 18:03| Comment(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月04日

仕事に役立つマインドフルネス:体現、メタ認知、集中

スタンフォード大学の講師、リー・ウェイズが、マインドフルネスをいかに仕事で使うかについて述べ、3つのタイプのマインドフルネスを挙げています。

体現(Embodiment):これは体への気づきのことです。1日を過ごす中で、体はどう感じているかに焦点を当てます。近代社会は、体を無視する風潮が高まっています。思考に焦点が当たりすぎるあまり、自分が体の中にいることを忘れているのです。これは大事な情報源から離れることを意味します。直感や感情であたり、また、長期的な痛みの兆候も体にあります。ストレスが溜まると、それも体に現れます。しかし、体への感覚があると、そうしたものも早い段階で対処できます。


メタ認知(Metacognition):メタ認知とは経験していることを理解することです。自分の思考や行動を観察することです。メタ認知を鍛えることで、衝動的な感情が湧いても、それを衝動的だと認識することができ、それに従って行動しなくても良いと理解できます。そして、実際に起きていることと、私たちの解釈の違いを理解でき、労働生産性を下げるような勝手な想像から脱出させてくれます。

集中(Focus):これは注意を向けたい対象へと向けることです。技術が進歩した現代、集中力を散らすものを知ることが大事です。多くの人がマルチタスカーだと思っていますが、マルチタスキングなど存在しません。タスクをコロコロと変えるタスク・スイッチングはありますが、それによって生産性は大きくロスします。集中力を鍛えるには、集中力が散漫になったら、また、集中したいものへと戻ってくる、この練習を繰り返すことです。そして、集中力の散漫がどのように起こるかを理解することも大事です。良い方法として、20分間のモノタスキング、つまり、1つのことに集中する時間を持つと良いかもしれません。


マインドフルネスには様々なメリットがありますが、大事なものとして、自分の人生にとって大事なことにちゃんと目を向けているかどうかを知る方法としても、非常に有効だと言えます。これら3つのマインドフルネスは、特にあなたの仕事に役立つかもしれません。

参照
https://www.gsb.stanford.edu/insights/bringing-mindfulness-your-career
posted by ヤス at 21:51| Comment(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月23日

年間15兆円の損失。イギリス労働者のメンタルヘルス問題

2017年にイギリスでは、労働者のメンタルヘルスの状況を見ようと大規模な調査が行われました。それがスティーブンソンとファーマーが書いた『Thriving at Work(職場で活躍するために)』というレポートにまとめられました。

イギリスの労働者間ではメンタルヘルスに関する悪い印象(stigma)はまだ強く、それがメンタルヘルスに関するオープンな会話を妨げています。


メンタルヘルス問題を抱える人は多くなっている一方で、長期的なメンタルヘルス問題によって仕事を失う人の数は毎年30万人にのぼります。これは体の問題を抱える人よりも多い割合。彼らの分析では、15%の労働者は何らかのメンタルヘルス問題に悩まされている

メンタルヘルス問題の、経営者にかかるコストは330〜420億ポンド(5〜6.3兆円)だとみられており、これらの半分は疾病就業、つまり、メンタルヘルス問題を抱えながら仕事をして、低い生産性を発揮することから来ています。

政府にかかるコストは240〜270億ポンド(3.6〜4兆円)で、これは福利厚生や税金の軽減、また、国民健康サービスの費用などです。

その他諸々を合わせて国の経済全体で見ると、年間740〜990億ポンド(11〜15兆円)が失われていると見積もられます。

現在、イギリス全体で労働者の生産性を高めようという動きが出ていますが、そのためにも経営者や政府は労働者のメンタルヘルス改善を優先させる必要があります。


また数々の研究で、労働者のメンタルヘルス改善に取り組むことが、生産性に良い影響を及ぼすと報告されています。例えば、デロイテのケーススタディでは、メンタルヘルス改善に投資した場合、それは生産性改善をもたらし大きなリターンとして返ってきました。こうした研究事例は多々あります。オーストラリアの消防局では、マネージャーに対してメンタルヘルスの研修をした所、メンタルヘルス問題のために欠勤する数が減り、研修費用の10倍の生産性向上に繋がりました。

非常に興味深い資料です。また他の部分も紹介したいと思います。
参照
https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/658145/thriving-at-work-stevenson-farmer-review.pdf
posted by ヤス at 17:36| Comment(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月03日

年間15兆円の損失。イギリス労働者のメンタルヘルス問題

2017年にイギリスでは、労働者のメンタルヘルスの状況を見ようと大規模な調査が行われました。それがスティーブンソンとファーマーが書いた『Thriving at Work(職場で活躍するために)』というレポートにまとめられました。

イギリスの労働者間ではメンタルヘルスに関する悪い印象(stigma)はまだ強く、それがメンタルヘルスに関するオープンな会話を妨げています。


メンタルヘルス問題を抱える人は多くなっている一方で、長期的なメンタルヘルス問題によって仕事を失う人の数は毎年30万人にのぼります。これは体の問題を抱える人よりも多い割合。彼らの分析では、15%の労働者は何らかのメンタルヘルス問題に悩まされている

メンタルヘルス問題の、経営者にかかるコストは330〜420億ポンド(5〜6.3兆円)だとみられており、これらの半分は疾病就業、つまり、メンタルヘルス問題を抱えながら仕事をして、低い生産性を発揮することから来ています。

政府にかかるコストは240〜270億ポンド(3.6〜4兆円)で、これは福利厚生や税金の軽減、また、国民健康サービスの費用などです。

その他諸々を合わせて国の経済全体で見ると、年間740〜990億ポンド(11〜15兆円)が失われていると見積もられます。

現在、イギリス全体で労働者の生産性を高めようという動きが出ていますが、そのためにも経営者や政府は労働者のメンタルヘルス改善を優先させる必要があります。


また数々の研究で、労働者のメンタルヘルス改善に取り組むことが、生産性に良い影響を及ぼすと報告されています。例えば、デロイテのケーススタディでは、メンタルヘルス改善に投資した場合、それは生産性改善をもたらし大きなリターンとして返ってきました。こうした研究事例は多々あります。オーストラリアの消防局では、マネージャーに対してメンタルヘルスの研修をした所、メンタルヘルス問題のために欠勤する数が減り、研修費用の10倍の生産性向上に繋がりました。

非常に興味深い資料です。また他の部分も紹介したいと思います。
参照
https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/658145/thriving-at-work-stevenson-farmer-review.pdf
posted by ヤス at 17:36| Comment(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする