2014年03月24日

ナラティブ分析(Narrative Analysis)、5つの方法

「ナラティブ分析」とは、物語を分析する事です。分析とは、研究者がデータを整理、体系化する方法の事です。ナラティブ分析には多くの方法があります。

リースマン(Riessman, 1993, 2008)やリーブリック(Lieblich, 1998)といった研究者はいくつかのナラティブ分析方法を提唱しています。それらのいくつかは原文を壊してしまう可能性があるのですが、それでも体系化された分析を目的します。また他の方法では原文のゲシュタルト、つまり全体性であるとか、本質を大事にする事を目的とします。

ホリスティック分析や主題分析(Thematic)はシンプルなので多くの研究者が使います。主題分析に関する過去の記事はこちら

ナラティブ分析の主な情報源はインタビューです。通常、分析の第一歩はインタビューの書き起こしです。この過程はインタビューの全体像を掴むのに重要です。ナラティブ分析に関する多くの記事や本が出版されていますが、その方法について書かれてある物は多くありません。ここではその方法について簡単にまとめていきます。


1.ホリスティック分析

ホリスティック分析では、研究者は全体を見ながら物語の主題を見つけようとします。話し手が語る経験の本質は何か。それは直接的に言われてなかったり、流れが順番通りに話されるとは限りません。

話し手が語る事の意味合いが最重要事項なので、その経験の本質を見つけるというのが研究者の目的になります。だから、他の質的研究と同じように、話し手の話の中にパターンを見つける事も有効です。

分析において話した内容は、解釈する為に分解しません。研究者は分解してカテゴライズするというアプローチではなく、全体像から意味合いを解釈しようとするアプローチを取ります。

例えばエムデン(Emden, 1998)は以下のような方法を提案しています。

1.書き起こしを何度も読む

2.研究者の質問を消す

3.内容の本質とは関係の無い言葉を消す

4.意味合いを見つける為に再度読む

5.3と4を繰り返す

6.サブテーマを探す

7.それらから一貫したストーリーを見つける

8.メンバーにチェックしてもらう




2.主題分析

これは多くの研究者に好まれる方法です。リースマンはこれが最もシンプルだと言い、よく生徒に勧められるのもこの方法です。ここでの焦点は内容です。つまり、物語が「どのように」「誰に」「なぜ」話されたのかというよりも、「何が」話されたかが焦点です(Riessman, 2008: 54)。

主題分析のステップは他の分析と似ています。最初のステップはもちろん書き起こしを読む事です。そして第2ステップはコード化をしていきます。物語で頻出する重要なアイデアをカテゴライズします(コード化)。この過程において、研究者はパターンを見つける事ができます。そしてパターンによって分けられていきます。最後にそれらを見直して、おかしな所がなければ終了です。


3.構造的分析

これはラボヴ(Labov)とワレツキー(Waletzky)によって1967年に提唱された方法で、構造的なコーディングによって物語を分析していきます。構造的分析は、物語の形に注目します。つまり、「どのように」話されたか。だから、言語的な要素も重要になります。構造的分析では物語をいくつかの章に分けます。

1.概要:物語のまとめ

2.状況:時間、場所、参加者、その他状況

3.行動:出来事の流れ

4.評価:物語の評価とそれが話し手に何を意味するか

5.解決:物語の目的

6.コーダ:現在に戻る



もちろんこのプロセスは物語やサブテーマごとに反復されます。多くのナラティブがこういった特徴を持っています。構造的分析の典型的な例がスミスとスパーケス(Smith & Sparkes, 2008)が、ラグビー選手が脊椎損傷になったケースの研究です。



4.会話的パフォーマンス分析

これは会話を分析するという、物語に対して比較的幅広いアプローチです。リースマンは物語を語る事は、会話のプロセスだと言います。これは会話分析(conversation / discourse analysis)と似ていて、それにいくつかの追加事項があります。全体的な流れに注目しながら、ジェスチャーやボディランゲージにも焦点を当てます。

スミスとスパーケスはスポーツ心理学でこの分析が使われる事は稀だと言っています(2009)。ナラティブ分析は「何が言われたか」そして「どのように言われたか」を分析するものですが、この「どのように」の部分はパフォーマンス分析によって成されます。この分析では以下の問いかけに答える事になります。


1.なぜそのナラティブはそのように発展したのか?
  なぜその順番か?

2.観衆に対して、その人はどう自分を位置づけたか?

3.その人は、他の登場人物を
  自分に対してどのように位置づけたか?

4.聞き手の反応は?
  それがナラティブの発展や解釈にどう影響したか?



このアプローチは難しいので、博士号過程の生徒がするのが通常です。



5.ビジュアル分析

ここでは文字に頼らずに、絵画や写真、映像に頼った分析をします。もちろん、文字による説明が必要ですが、物語はビジュアルのサポートを用いて伝えられます。良い例がスポーツパフォーマンスをメディアが見せる時のものです。そしてそういったビジュアルエイドによって説明されたり、解釈、分析されます。こういった分析法は、近年「パフォーマンス社会科学」として知られるようになってきました。


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参照

Qualitative Research in Sport and Physical Activity p. 135-139
posted by ヤス at 22:34| Comment(6) | TrackBack(0) | 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月21日

サブリミナルメッセージの逆効果

サブリミナルメッセージ。それは、私たちの脳で処理されているけれど、意識まで届かないメッセージの事です。これが確実に私たちの態度や行動に影響する、と新たな研究は報告しています。

しかし、今回の実験の焦点はサブリミナルメッセージの逆効果です。国旗というサブリミナルイメージを見ると、見た人の政治支援は自国よりではなく、中立的なものになったのです。ヘブライ大学の調査です。

実験の中心者、ラン・ハッシン(Ran Hassin)博士いわく、国旗の画像をサブリミナルにした場合、政治的態度に影響するだけではなく、選挙における投票態度にも影響があったそうです。

この実験はヘブライ大学で300人以上の参加者を集めて行われました。彼らに国旗の画像をサブリミナルで見せた時の反応を調べたのです。

第一実験では参加者はランダムに2グループに分けられ、イスラエルとパレスチナ間の問題について尋ねられました。この質問に答える前に、1つのグループはサブリミナルで国旗の画像が表示されます。もう1つは表示されません。結果は、国旗をサブリミナルしたブループは、右翼派の人、左翼派の人、どちらもより中立的な意見を述べたのです。

つまり瞬間的なイスラエル国旗の表示でさえ、人の政治的意見を中立的なものに変える効果があったのです。

第二の実験は数週間後に行われ、ガザ地区からのイスラエル軍撤退についてのインタビューに内容を変えましたが、同じような結果が出て、国旗サブリミナルグループはより中立的な意見を述べました。

第三の実験ではイスラエルの総選挙の直前に行われました。結果は同じでした。国旗サブリミナルは、人々の意見をより中立的なものにしたのです。そして、投票後、彼らにインタビューをすると、国旗サブリミナルグループは実際に中立的な政治家、党に投票していたのです。

なぜ国旗のサブリミナルがより中立的な意見を持たせたのか。これは現在、研究や分析がされている所です。

「今回の結果は2つの理由で非常に興味深い。まず国という概念が私たちの思考や行動に非意識的な形で影響する事を証明できる、という事。現在、私のチームは他の概念でこういった影響するものは無いかという事を研究している。

第二に、今回の結果は無意識の情報処理の影響や性質について科学的に証明できるものになった、という事。現在、私たちはこの仕組みについて研究している。これが分かると、認知無意識、つまりは意識全体についてより理解を深められるだろう」とハッシンは述べています。


参照

http://psychcentral.com/news/2007/12/27/the-influence-of-subliminal-messages/1712.html

ちなみに、「サブリミナル」という言葉の語源はラテン語で「意識との境界線の下」という所から来ているそうです。

サブリミナルに興味がある方はこの本がオススメです;
サブリミナル・マインド―潜在的人間観のゆくえ (中公新書)

ラベル:認知 語源
posted by ヤス at 19:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月19日

幸せを避けようとする人々

ニュージーランドでは、幸せに対する嫌悪感、そして、幸せや満足といった事に対して異なる文化の人々がどう反応するかについて研究が成されました。

ビクトリア大学ウェリントン校のモーセン・ジョシャンロー(Mohsen Joshanloo)とダン・ウェアイアーズ(Dan Weijers)博士らの調べによると、「幸せは悪い事の原因になるから、幸せやポジティブさ、満足感といったものを避ける」と考える人がいる事が分かりました。

この研究は、幸せに対する嫌悪感について、また幸せや満足に関する文化的違いについて研究した初めてのものとなりました。

研究者いわく、幸せに価値を置かない文化に育った人は、幸せから遠ざかろうとする、と。しかし、こういった幸せ嫌悪感は、(幸せ感が西洋文化でより高く価値が置かれているにも関わらず)西洋文化と非西洋文化に関わらずあるそうです。

アメリカ文化では、幸せが最も大事な価値観の1つだという事はもはや常識となっていて、幸せの追求は権利章典で保護されています。

西洋文化は幸せを最大化し、悲しみを最小化しようとする傾向があります。幸せそうに見えない人がいると、それは大きな問題となります。この価値観は西洋的なポジティブ心理学や主観的な健康に関する研究の多さからも伺えます。

非西洋文化においては対照的に、幸せ感はそれほど価値の置かれた感情ではありません。個人の幸せ追求や個人主義的な価値観が、理想的な調和や環境適応の邪魔をするものだと考えられています。

例えば、いくつかの研究で、東アジア人は、社交の場で幸せを表現する事は不適切だと考える傾向が、西洋人よりも強いと書かれています。同じように日本人は、アメリカ人よりもポジティブな感情を味わわないと報告されています。

多くの文化が、極端な幸せは、それを上回るような不幸や他のネガティブな結果をもたらすと考えています。

西洋文化、そして、非西洋文化においても、幸せになるとそれが自分を悪い人間にするとか、周りが自分を自分勝手、退屈、朝はかな人と思う等といった理由で、幸せを避けようという人が多々いる事が今回分かりました。

非西洋文化において、例えば、イランやその周辺国では、幸せになると、何らかの超能力によって、苦がもたらされると心配する人がいるようです。

「各文化で多くの人々が幸せを避けようとしている。これは特に極端な幸せにおいては顕著だ。幸せがもたらすネガティブな結果について人々が信じている事は、大げさに聞こえる物が多いが、古くからの謂れによって、派生したものである事が考えられる。しかしながら、主要文化に存在する個人的な違いを配慮しても、こういった事を全員が信じているといった文化は存在しない。」と研究者は結論付けています。


参照

Aversion to happiness across cultures (論文PDF)






ラベル:幸せ 実験 文化
posted by ヤス at 08:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

海馬は内容よりも、状況で記憶する

新たな研究で脳器官の「海馬」は、物事を前後状況から記憶するという事が分かりました。

「私たちは何が起きたかだけではなく、いつ起きたかも記憶する必要がある」とカリフォルニア大学デイビス校の大学院生、フランク・シエ(Frank Hsieh)は言います。

この実験でシエとランガナス(Ranganath)教授は、特定の記憶と海馬の関係性を調べました。

まず最初に参加者には動物や物体の連続写真を見せます。そして次に同じ順番で写真を見せて、「これは生き物ですか?」とか「これは熱を発しますか?」といった質問をしながら、参加者の脳内をスキャンしました。

こういった質問は参加者の記憶探索を促す目的です。写真が同じ順番で見せられた時、参加者は次の写真を予測する事ができ、より速い反応を見せました。

参加者が質問に答える際の海馬の動きに特定のパターンがある事に、シエとランガナスは気付きました。しかし、写真の順番が変わると、参加者は異なったパターンを見せたのです。

つまり、海馬の記憶コードは、状況によって決められていて、内容は関係なかったのです。

「私たちが見つけたのは、特定の写真を順番から外すと、パターンは消えた。海馬にとって、内容よりも状況が大事。海馬の理解構造とはとてもユニークなものだ、という事です。他の脳器官は状況とは関係なく物事を記憶します。」とランガナスは言います。

「これは記憶障害のある人に取っては大きな事である。健康的な記憶についてだけではなく、記憶障害についてもよりよい理解や解決法に繋がるものである」とランガナスは述べています。


参照
Hippocampal Activity Patterns Carry Information about Objects in Temporal Context
posted by ヤス at 02:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月15日

知能が高い人は他人を信用する傾向が高い

オックスフォード大学の研究で、他人を信用するという事において、IQが高い人は他人によりチャンスを与え、反対に低い人は他人を信用する事に難色を示す傾向が強いという事が分かりました。

今回の調査はイギリスで1〜2年に一度配布される国民調査「一般社会調査(General Social Survey)」の結果を分析したものです。

「学歴や収入、家族形態といったものも調べましたが、知能こそが他人を信用する事と関係していると出ました。」と実験の中心者、当大学社会学博士課程のノア・カール氏は言います。

他人の性格を正しく判断するというのは、自然淘汰の過程の中で大事な人間の知性であるというのが過去の研究結果。今回の結果はこれと一致するものでした。」

今回の研究者が取り上げた実験には、過去にヨーロッパで知性と信用についてなされた実験などがあります。社会的信用は、社会的組織(福祉システムや経済市場など)が繁栄していくのに重要なので、今回の実験は非常に重要なものである、と彼らは言います。また今回の分析で、他人を信用する人は、より健康的でより幸せである傾向がある事も分かりました。

「こういう事から、社会的な信用を研究する事は、市民の健康や政府の方針といった分野において極めて重要で、だからこそ政府や宗教組織、その他の市民団体は信用を高めていく必要があるのです。市民の健康や社会の幸福度を考えた時に、社会的信用は今後ますます大事な研究テーマとなるでしょう」とフランセスコ・ビラリ(Francesco Billari)教授は述べています。


http://psychcentral.com/news/2014/03/14/intelligent-people-more-likely-to-trust-others/67092.html


ラベル:知能 分析 信用 社会
posted by ヤス at 08:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする