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2017年05月15日

【学術出版記事】ディズニーストラテジーのキャリアガイダンスにおける効果測定。クライアントの視点から。(混合・パイロット研究)

ここでは僕の学術出版記事 ‘Disney strategy for Japanese university students’ career guidance: a mixed methods pilot study’ の概要を日本語でご紹介します。

この実験の前の実験で、キャリアコンサルタントが最も有効なNLPスキルの1つとして、ディズニーストラテジーを挙げていました。そこでこの実験ではクライアントの視点から見て、それは本当なのかどうかを調べました。参加者は就職活動をしている大学生6人です。


過去の研究が報告するには、就職活動の成功に影響するものとして大きく4つの要素があると報告しています。それらは職探しの明確さ、職探しの強度、自己効力感、自尊心です。これらをディズニーストラテジーの介入前後でどういった変化があるかを調べました。


また学生さんの体験を詳しく知るためにインタビューも実施しました。

結果は、介入前後で自尊心と自己効力感に、統計的に見て大きな増加が見られました。明確さと強度についてはそうした変化は見られませんでした。

インタビュー分析では、体を動かすこと、ビジョンの明確化、そして、就職に対してポジティブな気持ちになれる、といったことがディズニーストラテジーの強みだと出ました。


明確さと強度に大きな変化が見られなかったのは、今回募集をした学生さんは就職支援のNPOに登録しているような学生さんなので、意識が高く、明確さや強度(就職活動の盛んさ)はもともと高かったのが原因ではないかと思われます。

またディズニーストラテジーは心理的な変化(内的変化)を手伝うものなので、自尊心や自己効力感といった心理的影響は見られるが、就職の明確さや強度といった外的なものとは、関係がなかったのでは、とも考えられます。

そして、インタビュー分析を見ると、近年、特に心理学の世界でいわれる体の動きと心の動きを、学生さんたちが感じたことが伺えます。そして、前の実験でコンサルタントが言っていた「多くのクライアントは3つのうちの1つしか考えられなかったり、複数がごっちゃになって混乱している。でもディズニーストラテジーは3つの視点をバランスよく持たせてくれる」といったことも裏付けるような結果だと言えます。


非常に期待のできる結果です。今後もっと大きなスケール、そして、長いインターバルで実験をしたり、また異文化での効果を見る必要があると思われます。

Kotera, Y., & Sheffield, D. (2017). Disney strategy for Japanese university students’ career guidance: a mixed methods pilot study, Journal of the National Institute for Career Education and Counselling, 38, 52-61. doi: https://doi.org/10.20856/jnicec.3808
記事全文はこちら
posted by ヤス at 05:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【学術出版記事】キャリアコンサルタントのNLP資格認定コースでの経験(質的研究)

ここでは僕の学術出版記事 ‘A qualitative investigation into the experience of neuro-linguistic programming certification training among Japanese career consultants’ の概要を日本語でご紹介します。

NLP(Neuro-linguistic programming, 神経言語プログラム)は1970年代にアメリカで生まれ、その後、様々な分野で応用されてきています。イギリスでは2008年の段階で10万人以上がNLPの研修を受けています。日本でもその人気は高く、NLPの元祖の団体の一つであるNLPコネクションだけでも、2003年から2016年3月の間で1700人以上のプラクティショナーを認定しています。

実践が世界的に普及しているNLPですが、その科学的な実証は弱いとされています。大学の研究記事検索で見ても、NLPに関する実験記事は500ほどしかありません。これに対して、例えば、マインドフルネスに関する記事は3万以上あります。NLPの科学的な裏付けが必要です。

また日本ではキャリアコンサルタントがNLPをよく活用しています。キャリアコンサルタントの重要性は高く認められていて、その人数も増加傾向にあります(2006: 43,000; 2008: 53,000; 2012: 81,000)。このため2016年にこの資格は、国家資格化されました。今後ますますキャリア支援が重要になってきます。


そこで、今回の研究ではキャリアコンサルタントがなぜNLP資格認定コースを受けようと思ったのか、NLPの何が有効だったのかを質的研究で調べました。

6人のNLP資格認定コースを受けたキャリアコンサルタントを対象にインタビューをし、そのテープを書き起こし、データを主題分析を使って分析しました。

結果、以下のようになりました。

1.なぜNLPのトレーニングを受けようと思ったのか?
キャリアコンサルタントになる過程で学ぶカウンセリングスキルだけでは、効果的なセッションを持つことが難しいと感じたから。特にカウンセリングほど時間的に余裕がないキャリアガイダンスにおいて、コーチングのような能動的なスキルが求められる。そこでNLPが良いと思った。


2.NLPの中でどのスキルが最もキャリアのサポートにおいて有効か?
リフレーミングとディズニーストラテジー。リフレーミングは短時間で気分を変えることができる。採用されるためにはこうじゃないといけないといった強いフレームがあるクライアントの見方をリフレームで変えることができる。ディズニーストラテジーは長い目で見たキャリアに対して計画を立てることができる。またドリーマーのポジションがあることで夢を見ることができる。これが難しいクライアントが多いのも事実。


3.その他、NLPの何が良かったか?
人間理解を深めることができた。また、それによって、もっと他人や自分をわかってやろうとする心構えが深まった。この心構えはスポンサーシップと通じるもの。

というようなデータ分析となりました。

今、多くの国々でキャリアのサポートにより良い手法がないかと考えられている中で、日本でこのようなユニークなことが行われているというのは、非常に有意義な研究となりました。


この研究は3つの評議会で発表させていただきました。

ここではコンサルタント側の視点からの発見だったので、今度はクライアント側はどう感じているのか、これを調べたのが次の出版 ‘Disney strategy for Japanese university students’ career guidance: a mixed methods pilot study’ です。

今後もっと研究を重ねていこうと思います。
posted by ヤス at 04:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月12日

文献レビューよりも強い系統的レビュー

系統的レビュー(systematic review)とは?

系統的レビューとは、すでに存在する研究記事を詳しく見ていくことを言います。このレビューでは研究的な証拠を系統的に探し、見つけ出し、選択し、理解し、統合していきます。バイアスを最小限にするために、対象となる研究は、明確で、再現性のある研究方法を使うものです。系統的レビューは特に健康に関する科目では必須の手法でですが、他の分野でもよく使われます。

系統的レビューは文献レビューよりも徹底的です。というのも、系統的レビューでは、出版された文献だけではなく、「グレー文献」と呼ばれる出版されていない文献も考慮するからです。グレー文献は系統的レビューに価値を与えるものです。なぜならグレー文献はしばしば非常に最新の情報であり、出版によるバイアスがない可能性が高いからです。グレー文献には、出版されていない研究、レポート、論文、会議論文、要約、政府の研究、現在進行中の実験などが含まれます。


系統的レビューは複雑なプロセスです。ここではいくつかの系統的レビューを紹介し、典型的なプロセス、そして、どのように実行し、論文にしていけばいいのかを紹介します。

系統的レビューの種類
・質的:この系統的レビューでは結果はまとめられますが、系統的に統合されることはありません。
・量的:この系統的レビューでは複数の研究の結果を統計的手法で統合します。
・メタアナリシス:統計的手法を使って、関連する研究から効果を見積もり、統合します。


計画表を書く

良い系統的レビューは計画表が大事です。計画表があれば、最終ゴールがわかり、具体的な目的、方法を明確にすることができます。実験過程がより透明になります。
計画表では、検索する言葉、どのような記事を含み、除外するのか、分析するデータはどういったものか、などを決めます。この計画表は、論文記事と一緒に学術誌に提出する必要があります。多く学術誌において、PRISMAといった手法を使うことが一般的です。


PRISMAステートメント

PRISMAステートメントとは、27項目のチェックリストとフロー図から成る文書で、研究者にどのように系統的レビューを進めていくのか、そして、論文を書くときに何を含むべきかを示してくれます。

計画書には以下のものが含まれることが多いです;
・検索されたデータベースとその他追加の情報ソース(特にグレー文献の場合)
・検索に使われる言葉
・検索条件
・文献の選択基準
・抽出するデータ
・報告するデータのまとめ



系統的レビュー計画書を登録する

登録をすることで、他の人が同じ系統的レビューをするのを防ぐことができます。以下の場所で登録することができます。
Campbell Collaboration: 社会的な介入に特化したもの
Cochrane Collaboration: 健康分野の介入に特化したもの
PROSPERO : 全ての分野

これらの場所では現在進行中の系統的レビューが見られるので、自分がするテーマが他の人にされていないか調べる必要があります。


系統的レビューを始めるベストな方法は?

系統的にすることが何よりも大事です。系統的レビューは莫大な量の文献を詳細に吟味し、分析していきます。自分がするレビューが効率的で、良いものであることを確かにするには、明確な過程をたどる必要があります。一般的に以下のような流れです。

1.研究の質問を設定する
2.文献の選択基準を決める
3.情報ソースを決める
4.対象研究を選ぶ
5.研究の質を評価する
6.データを集める
7.結果を分析し、表す
8.結果を解釈する
9.必要に応じて見返す


そして、各段階でノートを取っておくと良いでしょう。すると論文を書くときに非常に役立ちます。


系統的レビューの論文はどのような構造か

系統的レビューの論文は普通の論文と同じ構造です。一般的に、タイトル、要約、イントロ、方法、結果、ディスカッション、そして、参照文献です。

タイトル:研究されているテーマを正確に表します。一般的に、「系統的レビュー」という言葉はどこかに入ります。

要約:一般的に、短い文章で背景、方法、結果、結論が入った最初の文章です。

イントロ:イントロはトピックを集約し、なぜ系統的レビューが行われたのかを説明します。既存の知識やにギャップがあったり、文献の中で不一致があることで、レビューが必要になります。また、レビューの目的を述べる必要もあります。

方法:系統的レビューの論文でここが最も大事な部分となります。どのような方法でレビューが行われたのか、明確で論理的な説明が必要です。以下のポイントを詳細に示す必要があります。
・選択基準
・どれだけの研究があるのか
・選ばれた研究はどれか
・データの抽出
・研究の質を評価
・データ分析

結果:研究を検索した結果から始まり、研究の広さ、特徴、質を述べ、そして、その介入の結果を論議していきます。

ディスカッション:ここではレビューにおいて主要な発見、限界、そして、結果の信頼度を検討します。最後にレビューの強みと弱みを述べ、今回の研究が実践の場でどう役立つかを述べます。


参照
http://www.editage.com/insights/a-young-researchers-guide-to-a-systematic-review
posted by ヤス at 05:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月26日

長時間労働者は心臓発作の可能性高い

ハーバード大学の研究グループがアメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアの計17件の実験、計53万人、7年間に渡る労働時間と健康に関するデータを分析しました。彼らが実験に参加すると同意した時、この中に心臓病を持つ人はいませんでした。

社会経済的な状況、喫煙するかどうか、定期的な運動、高血圧などの要素を統計的に調整すると、一週間に55時間以上働く人は、一般的なフルタイムの35〜40時間働く人と比べて33%も発作を起こしやすいと出ました。

長時間働く人は、長時間座っていて、睡眠時間が短く、ストレスも高い。これらは全て心臓発作につながります。長時間働く人は、健康な食生活と十分な休養を摂るように薦めています。

参照
http://www.health.harvard.edu/stroke/research-were-watching-longer-work-hours-may-boost-stroke-risk
posted by ヤス at 05:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月13日

長時間労働は健康問題を引き起こす

多くのマネージャーが部下に長時間働いて欲しいと思うものです。長時間労働にはトップがそのようにプレッシャーをかける場合だったり、厳しい競争社会に勝ち残ろうとして長時間となる場合、また、心理的に自分が有能だと見せたいと思ったり、プライド、野心から長時間となる場合もあります。近年の研究では、心理的な要素で長時間働く人にとって、仕事場は家庭よりもストレスがかからないと報告したものもあります。一部の人にとっては仕事場とは、有能性を感じられる場所だそうです。


ここで大事な質問は、長時間労働は果たしてより良いアウトプットに繋がっているのか?ということです。面白いことに多くの研究で、そうでもないと報告されています。ボストン大学のエリン・レイド教授によると、週に80時間以上働く人と、そのように見せかける人との間に、業績の違いは見られなかったそうです。

最近の研究では長時間労働にメリットがないというだけではなく、ダメージもあると述べています。フィンランドのマリアンナ・ヴァータネンらの研究によると、長時間労働とそれに伴うストレスは睡眠障害、うつ、アルコール依存、糖尿病、記憶障害、心臓病など多くの健康問題につながると報告しています。そしてこれらは会社にとっても病欠が増え、離職率が高まり、また、企業健康保険の出費が増えます。


またあなたの仕事が対人関係コミュニケーションを主としたり、大事な判断を必要としたり、他人の感情を接するものだったりすると(これらは現代の多くの仕事が当てはまるでしょう)、長時間労働は健康問題をさらに悪化させる可能性があるそうです。

自ら望んで長時間労働をする場合でも、疲れた状態で仕事をするとミスをする可能性が高まります。そして、疲れというのはしばしば自覚のないものだったりします。ある調査によると、一日に5〜6時間の睡眠でパフォーマンスが落ちないのは人口の1〜3%の人だけだそうです。さらに自分がこの分野に入ると思う人のうち、たった5%が実際にこの部類に入るそうです。


別の研究では長時間労働をすると全体像を見る習性が減ると報告されています。同じ研究で、バーンアウトする人は森に迷う傾向が強い、つまり、目の前のものだけを見てしまい、全体像を見失うんだそうです。

つまるところ、長時間労働をするとアウトプットが減り、パフォーマンスも下がるということが言えます。こういったことを先人は知っていたようです。19世紀に組織的な労働が導入された当初の話で、ビジネスオーナーは労働時間を10時間(その後8時間)に制限してみました。すると生産性が高まり、大コストとなるミスが減っていたのです。これはハーバードビジネススクールのレズリー・パーローとジェシカ・ポーターがその一世紀後に、知識労働者の研究で報告した実験でした。新たな実験ではコンサルタントのチームに休憩時間(夜や週末)を与えたところ、生産性が上がったのです。

最近の研究者がいうのは長時間労働を廃止せよというのではなく、長時間労働をたまにしないといけないときもあるだろうが、ルーチン化させてはいけないということです。多くの研究で提唱されているのは緊急事態に週60時間働くこともあるだろうが、それ以外は定時にすべきだというものです。

極めて長時間労働の日本の労働者には特に大事な研究報告だと思います。


参照
https://hbr.org/2015/08/the-research-is-clear-long-hours-backfire-for-people-and-for-companies
posted by ヤス at 05:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする