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2020年01月06日

NLPは組織心理に効果があるのか?システマチックレビュー

今回の記事では、僕の出版論文の1つを、できるだけオタクな言葉なしでご紹介させていただきます。

今回は、以下の論文の概要を解説します。
Kotera, Y., Sheffield, D., & Van Gordon, W. (2019) The applications of neuro-linguistic programming in organisational settings: A systematic review of psychological outcomes. Human Resource Development Quarterly. 30(1), 101-116. doi: 10.1002/hrdq.21334

全文はこちらからダウンロードできます。

論文の中心的な質問としては、

NLP(神経言語プログラミング)が職業心理学にプラスの効果があるのか?
あるとしたら、どのような症状に対して良いのか?


これらの質問に対して、その証拠の質と量はどれくらいなものかを見ていきました。

システマチックレビューなので、対象となる研究論文をかたっぱしから見ていき、総合的に上記の質問に答えました。



NLPを使って、職業心理学に関する心理要素(ストレス、エンゲージメント、組織コミットメント、自尊心、従業員間の信頼など)に影響を与えようとした研究を調べると全部で952件の論文が見つかりました。そこからタイトルと概要で絞ると、今回の研究質問に関するものは96件に。そして、全文を読んでみていくと、強く関連するのは7件の論文に絞られました。

7件のうち6件は量的研究(数字で効果の良し悪しを測ったもの)で、1件が質的研究(文字で効果の良し悪しを測ったもの)でした。これら7件の研究については、論文の本文 Table 2をご参照ください。

3件はヨーロッパで実施され、もう3件はアジア、そして1件がアメリカで実施された実験でした。

対象とした心理的要素ですが、7つの実験は、自己実現、不安、改善行動、時間厳守への恐怖、自尊心、自己効力感、組織コミットメント、トレーニングへの満足感を狙いとしていました。そして、それ全てに対してポジティブな結果が報告されていました。特にストレスの軽減と、自尊心の向上に対してよく使われ、大きな効果を発揮していました。

対象グループは、土木工学、ホスピタリティー、教育、医療に携わる労働者でした。

6件の量的研究のうち、3件はランダム化していないけど、介入グループと別グループ(非介入など)を比較したもの、そしてもう別の3件は1グループがNLP介入を経たものでした。つまり、介入の研究で最も質が高いとされるランダム化比較試験(RCT、ランダムにグループを2つ作って、介入グループの変化を、非介入グループと比べる)を用いた研究はありませんでした

介入としては、ストレスや不安軽減を狙ったもの、良い職場コミュニケーションを狙ったもの、そして目標設定に関するものがありました。ストレスや不安に対しては、アンカリングがよく使われていて、コミュニケーションに関しては、代表システム(コミュニケーションの相手がどの五感を主に使っているか)を解説していました。目標設定に関する研究では、その具体的な介入は報告されていませんでした。

論文にバイアスがないかを調べてみると、4つの研究で、バイアスが高いと診断され、3つの研究では中程度だと判断されました。つまり全体的にいうと、もっと質の高い研究が必要だということが言えます。多くの研究で、必要な研究項目が報告されていなかったり、バイアス(つまり偏見)を減らすための工夫が足りなかったりしました。また研究倫理許可を取ったのかどうかを報告していないものもありました。



NLPは開発されてから様々な分野で使われてきて、ビジネスもその1つです。しかし、研究を見ていくと、量的にも、質的にももっと良い研究が必要だと言えそうです。目を引くような宣伝文句がよく謳われるNLPだけに、それに必要な質の高い実験結果が出てこない限りは、今後の普及は難しいと言えそうです。しかし、それでも、創設から50年ほど経ってもまだ使われているところを見ると、実践者の間では人気のある手法だと言えます。僕も色々とNLPに関する学術論文を書いていますが(例)、もっと大規模なNLPの科学的研鑽が必須です。

この研究論文の全文はこちらからダウンロードできます。
posted by ヤス at 02:12| Comment(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年01月02日

日本人労働者のメンタルヘルス。自己批判の軽減と自己支援の強化が鍵か

明けましておめでとうございます!本年もよろしくお願いいたしますm(_ _)m

本ブログではこれまでいろいろと他人の研究をご紹介してきたのですが、自分の研究もすべきだということに今頃になって気づき(笑)、少しずつですがそうしたこともしていこうと思います。

今回はこの研究を、できるだけオタクな言葉を使わずにご紹介させていただきます。
Kotera, Y., Gilbert, P., Asano, K., Ishimura, I. & Sheffield, D. (2018). Self-criticism and self-reassurance as mediators between mental health attitudes and symptoms: Attitudes towards mental health problems in Japanese workers. Asian Journal of Social Psychology, 22(2), 183-192. doi: 10.1111/ajsp.12355

全文はこちらからダウンロードできます。

近年の働き方改革にもあるように、日本人労働者のメンタルヘルスは非常に悪く、過労死や過労自殺など深刻な問題となって現れています。

過酷な労働の他に、日本人労働者のメンタルヘルスを悪くしていると考えられるのが、恥の感覚などを含む、心の病に関するネガティブな態度や見方です。こうした恥やネガティブな態度というのは、自己批判と強く関連していて、これが更に心の状態を悪くさせます。


そこで今回の研究では日本人労働者のメンタルヘルス、メンタルヘルスに対するネガティブな態度、自己批判、そして、自己批判とほぼ反対の概念となる自己支援の関係性を調べました。

日本人労働者、131人にこれらの心理アンケートに回答していただきました(ありがとうございます!)。それらのデータをいろいろと分析しました。

ほぼ半分の労働者(47%)がメンタルヘルスに対してネガティブな見方(「心の病を持つ人は弱い」等)をしていて、半分以上(55%)が心の病を持つことに対して何らかの恥を感じると答えました。恥の概念の中でも、職場の人に対する恥(76%)と自分に対する内的な恥(77%)が特に高かったです。

また心の病気の数値(うつ、不安、ストレス)は、ネガティブな態度と自己批判に対して、プラスの相関関係にあり、そして、自己支援に対してマイナスの相関関係にありました。つまり、メンタルヘルスの良い人は、心の病に対してそれほど悪く見てなかったり、恥を感じていなかったりする。そして、メンタルヘルスの良い人は、自己批判をあまりせず、自己支援ができるということが言えます。この自己に対する姿勢(自己批判や自己支援)は特にメンタルヘルスへの影響が大きかったです。

また、メンタルヘルスの状態を推測するのに、特に、その人がどれだけ自分を嫌っているか(自己批判の一部)、また、家族への反映恥(自分の心の病が家族に泥を塗るかもしれないという不安)の高さが、役に立つと分かりました。

いかに自己批判を抑え、自己支援を強めるか。メンタルヘルスに関して恥を感じる人が多いだけに、直接的なメンタルヘルスへのアプローチよりも、自己批判や自己支援に焦点を当てた介入が有効かもしれません。

研究論文の全文はこちらからダウンロードできます。


posted by ヤス at 23:32| Comment(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月19日

研究参加者募集:労働者のメンタルヘルスとテクノロジー

この研究では「労働者のメンタルヘルスとテクノロジー」に関するアンケートに答えていただきます。この研究の目的は、労働者が仕事をどのように良いものにしようとしているのかを調べたいと思っております。そして、その結果を日本人労働者とオランダ人労働者の間で比較しようと考えております。参加条件として、週に最低でも3日一つの組織で働いていること、そして、仕事で情報通信に関するテクノロジー(パソコンやスマートフォン)を使っていることが挙がります。

今回、回答していただくアンケートでは、あなたの仕事を振り返っていただき、それぞれの項目がどれだけ当てはまるのかを考えてもらいます。選択肢からもっとも当てはまるものを選んでください。全てを回答するのにおよそ20分かかります(全7尺度[アンケート])。もし今回の研究でわかったことを後日、メールで受け取りたい場合は、アンケートの最後にメールを記入する質問があるので、そこにご記入ください。データ集計から研究論文の出版に至るまでに1〜2年ほどかかることをご了承ください。

個人情報は守秘義務を守り保管され、アンケートの回答は下記の研究者によって分析されます。出版を目的にこの研究は論文化されますが、データは匿名化され、個人は特定できません。完全に匿名化されたデータは他の研究者と共有することもあります。研究への参加は任意であり、参加しなければいけないというものではありません。また回答後に辞退したいということであれば、回答の7日後までであれば、データの削除をすることができます。辞退する理由は問われません。その際は、研究者まで参加者コードを送信してください。

この研究はオランダ、アムステルダム大学の研究倫理許可を得て、行われています。
研究へはこちらのリンクから参加していただけます。

皆様のご参加、心よりお待ちしております。
その他、この研究に関して質問があれば、研究者、小寺康博(Y.Kotera@derby.ac.uk)までご連絡ください。
ミシェル・ヴァン・レーサム、小寺康博、大嶋玲未
posted by ヤス at 06:37| Comment(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月25日

EU一般データ保護規則(GDPR):合法性、公平さ、透明性(lawful, fair, transparent)

EU一般データ保護規則(GDPR)が2018年5月25日に施行され、研究者にどのような影響があるのかをご紹介します。

GDPRとは、個人情報をどのように処理するのかに関係します。イギリスでは、情報委任委員(Information Commissioner's Office; ICO)がこの役を担います。そして、健康研究局(Health Research Authority)が健康分野に関わる研究に対してガイダンスを出しています。

個人情報とは、生きている個人を特定できる情報のことです。従って、名前や誕生日はもちろん、遺伝情報や生物学的な数値も、もし独特で個人特定が可能であれば、個人情報となります。また、匿名化された情報であっても、データと特定可能な情報が同じ組織で保持されていれば、個人情報となります。


ICOの「Anonymisation code of practice (匿名化実施規則)」に沿って匿名化された情報は、個人情報とみなされません。この例としては、個人を特定できる情報が他の組織で管理されていて、特定化をしないとの合意がある場合です。匿名化の行動が、個人情報を処理しているとみなされます。匿名化実施規則は時に更新されるので最新のものを知るようにしましょう。

GDPRが欧州の研究者にどう影響するか
GDPRで求められることは、多くの研究施設の研究倫理で行われていることと同じです。特にGDPRが重視するのが、情報処理が合法的に行われ、公平であり、透明であるということです。研究施設と研究者個人にこれを確かめる義務があります。

研究施設は情報処理の法的な根拠を特定する必要があります。研究者も、HRAやNHSといった医療団体はこれらを尋ねてくるので、この根拠を知る必要があります。最も法的な根拠となるであろうものが、「公の利のためである」というものです。こうした理由があれば、倫理許可を出した組織が情報処理に対して信頼のできる判断を下したと、参加者に知らせることができます。

健康に関する情報など、特別な部類の情報を処理するときは、「セーフガードに準じて、科学的な研究のために必要である」という追加の項目をクリアする必要があります。このセーフガードとは、組織での研究倫理委員会の許可であったり、必要なデータのみを処理する、できる箇所は匿名化を必ず適用する、などといったことです。研究者は、参加者の情報で、特に個人が特定されるような情報については十分に注意をする必要があります。


残りの二つ、公平さと透明性ですが、公平さについては参加者の権利を尊敬し、情報処理が同意した通りに行われているということ。従って、透明性と関連します。参加者への情報は明確で、理解できるものでないといけません。

合法性、公平さ、そして、透明性。GDPRを理解する上で、特に研究者には大事な言葉だと言えます。

参照
https://mrc.ukri.org/news/blog/gdpr-research-changes/
posted by ヤス at 06:34| Comment(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月08日

日本人マネージャーによるNLPの活用:質的研究

現在、日本の産業界においてメンタルヘルスの問題は深刻であり、注目を集めています。政府も様々な対策を実行していますが、大きな効果はまだ見えてきません。そこで企業のHRは様々な手法を模索していますが、NLP(神経言語プログラミング)もその手法の1つとして注目されています。一部の企業では、NLPを使うことで、従業員のメンタルヘルスや心の状態を改善しようと試みがなされています。

しかし、NLPが70年代に開発されてから長年の問題点は、その科学的根拠が弱いところにあります。一定量の研究はされていますが、残念ながら研究の質が高いものはあまり多くありません。そこで今回の研究では、NLPを実際に現場で使っているNLPマスタープラクティショナーであり、企業のマネージャーでもある人たちの経験を、科学的に分析をしました。NLPの強みが、主観的な経験を利用するところにあるので、今回のような体験ベースの事象を分析する方法はふさわしいと言えます。


具体的には、半体系化インタビューといって、ある程度の質問は用意するものの、そこから参加者に考えを話してもらって、それを記録するインタビュー法。そして、分析方法は、主題分析といって、話された内容から何が主題となるのかを客観的に分析する方法です。これらの方法は、質的研究で、特にまだあまり研究されていない分野の研究にふさわしい手法です。

合計11人のマネージャーや社長の方々に、1対1のインタビューに参加していただきました。参加条件として、企業でマネジメントを主とする役職にあること、NLPマスタープラクティショナーであること、そして、マスタープラクティショナーの認定から最低でも1年以上は経っていること(そうでないとNLPがどれだけ使えるかわからない可能性があるので)等を挙げました。参加したマネージャーや社長の方々の平均年齢は53歳、うち9人が5000人以上の大企業に属していらっしゃいました。

インタビューデータの分析の流れや、主題の構成は、私の他に、NLPに詳しい研究者と詳しくない研究者が、客観的であるかの判断をしました。インタビューの質問としては、

NLPが職場で役立っているか?そうであれば、どのように役立っているのか?
NLPは何をもたらすのか?
NLPを職場で使う際の問題点は?

などを尋ねました。

インタビューの結果を調べると、全てのマネージャーと社長がNLPが職場で非常に有効だと答えました。具体的には、職場で必要なメンタルヘするや心理学的な能力を高めてくれると答えていました。例えば、8フレームアウトカムでは、ワクワクするようなゴールを設定し、それをさらに五感情報で体感し、ゴールの先のポジティブなビジョンを描きます。そうしたフレームワークが、心をポジティブにしてくれると答えていました。


また、NLPがもたらすものとして、人間の心を理解させてくれる、というのが多くの回答でした。なぜ自分が、または、部下がこう感じるのか。それに対する答えを、NLPを学ぶことでわかりやすく考えることができたと述べています。例えば、カウンセリングやコーチングでは、一定のフレームワークを与えられてそれを実行するだけです。しかし、NLPではそれがなぜ作用するかを考えます。例えば、コーチングで有効だとされる質問。これがなぜ有効なのか、そうしたことをNLPは教えてくれる。

またリフレーミングが非常に有効だという声が多かったです。色々な出来事を、ああよかったと思わせてくれる。そんなものの柔軟な考え方。それが非常に有効だと述べていました。

最後に、職場で使う際の問題点としては、コーチングには職場での「市民権」があるが、NLPにはまだない、という声がありました。だから職場で使う際にはイメトレといったり、コーチングだと言わないと実践してくれない人が多い。その他、もともと臨床の場から来ているので、職場で使うには長すぎたり、特に左脳系の人には理解してもらえなかったりすることがある、という声がありました。例えば、8フレームアウトカムにしても、「8つも質問してられない。せめて3つにして〜」という声や、左脳系の人に「その気持ちは何色ですか?」と聞いても、何も返ってこなかったりする、というのもありました。

分析の結果を考えると、NLPは特にポジティブ心理学との関係性が強いと言えます。例えば、ニューロロジカルレベルもよく使えるスキルだと挙がっていましたが、そこでもポジティブな感情を高めることが特徴でした。また、人の心を理解する上では、メタモデルがNLPでは強みだと言えますが、これは様々な哲学的な概念とも関係がありそうです(例:クオリアや六境など)。NLPの前提も非常に有効なようです。これを意識することで、より支援的に、また、モチベーションを高めるようなリーダーシップが取れる。これらから、今後は、より職場に特化したNLPの開発も有効なのかもしれません。


最後に、NLPはまだ職場での認知度が低いようです。この理由として、NLPが商売化しすぎていると指摘する研究者もいますが、コーチングと比べると、むしろコーチングの方が商売化しているとも言えます。しかし、コーチングはより普及していることを考えると、NLPの資格や実践の規制が不安定なことが上がるのかもしれません。

今後またさらにNLPやメンタルヘルスに関する実験を続けていきたいと思います。

参照
Kotera, Y. & Van Gordon, W. (2019). Japanese managers’ experiences of Neuro-Linguistic Programming: A qualitative investigation. Journal of Mental Health Training, Education and Practice. doi: 10.1108/JMHTEP-06-2018-0033
posted by ヤス at 08:15| Comment(1) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする