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2018年09月18日

数学に対する不安が数学パフォーマンスを下げる

シカゴ大学が行なった、小学校1、2年生に対する研究で、成績が優秀な1、2年生は数学不安を抱えていると報告されました。この不安があることによって、不安を持たない児童よりも数学の力を発揮できないことがあるそうです。

数学ができる児童は大抵、作業記憶に優れていて、不安によってこの機能が低下するそうです。作業記憶とは「脳の黒板」のようなもので、意識上にある情報を処理するのに使われます。この種の記憶は、数字を頭の中で留めておいて処理するのに非常に重要であり、IQにも大きく関連しています。


数学への不安が強い児童は、それによって、数学の力が大きく妨げられていることがわかりました。数学の成績だけでみると、不安のない児童の半年分くらいの遅れになるそうです。

今回の実験では比較的大きな都会にある小学校で、1年生88人と2年生66人が集められました。参加児童は、成績、作業記憶、数学への不安に関する尺度に答えました。数学への不安に関しては、例えば教室の前で、数学の問題を解くことに対してどれだけ怖いと感じるか、などが問われました。

成績優秀な児童の間で、半数が中程度から高程度の数学不安を抱えていました。数学不安は、成績が優秀ではない児童の間でも見られましたが、成績には影響していなかったようです。これらの生徒は、指で数を数えたりなど、よりシンプルな対処法を実践していたので、影響がなかったのではないかと考えられています。

幼い段階でできた数額への不安は、そこで解消されないと、雪だるま式に大きくなり、数学の能力に大きく影響します。ここまでの研究で、不安を和らげたり、リフレーミングをすることで、数学の成績に大きな向上が見られたそうです。

不安をリフレーミングする一つの方法は、テストをする前に数学に関する心配事を書いてもらう事でした。「表現的ライティング」という手法で、不安を吐き出し、少なくする効果があるそうです。これによって作業記憶が数学により集中できます。


また文字を書くことにまだ慣れていない段階の児童や幼稚園児には、絵を書いてもらうのも良いでしょう。また先生の立場からも、テストを脅威的なものではなくて、何かチャレンジするものだとリフレーミングをすると良いと研究者は述べています。

参照
https://psychcentral.com/news/2012/09/13/math-anxiety-hits-high-achieving-kids-hardest/44547.html
posted by ヤス at 05:09| Comment(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月01日

ステレオタイプが感情察知に影響する

オランダのラドボウド大学の研究によると、特定の状況下では、人は顔の表情よりもボディランゲージからの方が他人の感情を察しやすいと報告されました。


中心研究者のバイルストラ(Bijlstra)らは、人が他人のボディーランゲージを読む過程は、「社会的カテゴリー(その人が社会でどういった位置にいるか)」によって影響されると考えました。ここでは性別が大事な社会的カテゴリーだとされました(このように状況から感情を推測することをトップダウン、中立的な状況から推測することをボトムアップと言います)。これは、性別によって、周りの人がその人に期待する行動や振る舞いは大きく変わるからです。例えば、あなたが男性で男性的な感情、例えば、怒りを表現していたら、周りの人はすぐにそれを察することができますが、もし女性が男性的な感情である怒りを表現していたら、それほどすぐには察せないでしょう。同じように、女性が女性的な感情である、例えば、悲しみを表現していたら、男性が悲しみを表現している場合と比べて、より早く周りの人は、その悲しみを察するでしょう。

これをテストするために、バイルストラらは男性と女性が同じ感情を表現しているシルエットを用意しました。参加した学生は、シルエットがどんな感情を感じているのか、できるだけ速く回答するように指示されました。そして、性別と一致した感情のシルエットと、不一致のシルエットで、学生の回答時間を比べました。予想した通り、男性の怒りを認識する時間は、女性の怒りよりも短く、女性の悲しみを認識する時間は、男性の悲しみよりも短かったのです。


この結果が示唆するには、あなたが感情を察するのは、あなたの期待(社会的カテゴリー)によって影響されるということです。この実験では性別だけが調べられましたが、他の社会的カテゴリー(年齢、人種、経済的豊かさ)にも同じ効果があると考えられるでしょう。また、ステレオタイプとは反対の感情を本当に感じていて、それを表している時、それが認識されずらいとも言えます。もし男性が悲しみを表現していたら、それを認識されるには、女性の場合と比べてより時間がかかることになります。

私たちが持つステレオタイプや偏見が、私たちの他人に対する感情察知に影響している。面白い実験だと思います。

参照
https://www.psychologytoday.com/intl/blog/fulfillment-any-age/201806/surprising-facts-about-body-language-and-your-emotions
posted by ヤス at 07:53| Comment(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月18日

外国語を話す時、人はより正直になる

新たな研究で、人は外国語を話す時、母国語を話す時よりも正直に振る舞うと報告されました。

この実験では、英語、スペイン語、ヘブライ語、そして、オランダ語を話す人が集められ、サイコロを振って目の数によってお金がもらえるゲームをしました。結果、第二言語を使う人は母国語を使う人よりも、嘘をつく確率が低かったのです。

人が誰にもバレない状況で、嘘をつくことによってより多く便益をもらえるならば、本能的には人は嘘をつくでしょう。例えば、子供の年齢を低く言って、ディスカウントを得たり、お釣りを多くもらっても黙っていたり。


次の実験ではスペイン、アメリカ、イスラエル、そして、オランダにおいて、母国語と外国語を使って、同じゲームをしました。サイコロを振って出た目の数に応じてお金をもらう。全てセルフレポートなので他人から嘘を見破られることはありません。彼らはサイコロの目を指定された言語、または、母国語で報告します。結果をみると、母国語でゲームをした時、数を多く報告する嘘の報告が多くされていました。第二言語を使うとき、嘘を報告しようという誘惑がそれほど作用しなかったようだと研究者は述べています。

研究者の見解では、第二言語を使うことで、直感的な判断が下がり、嘘を報告しようという機能が下がったのでは、とのこと。誘惑の度合いが下がり、より衝動的な行動に出ようという機能が下がる。また、これまでの実験で、外国語のアクセントがある人は、ネイティブと比べて信用されないという結果がありましたが、今回の結果はそれとは逆のものとなりました。

今回の結果は例えば国際的な企業においても大事な結果だと言えます。直感的には外国語のアクセントがある人は信用しにくいというものがありますが、そうでもなさそうです。

海外で生活をすると、言語がネイティブと異なるので、それによってバカのように扱われたり(言語と知能は別物なのに)、見下されることが多々ありますが、今回のような実験は、そうした動きに対抗できるものだと言えます。


参照
https://medicalxpress.com/news/2018-08-people-honest-foreign-tongue.html
posted by ヤス at 18:05| Comment(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月22日

母と子を離すと大人になってからの神経生物学的な弱さに繋がる

母親と子供を離すと、子供のその後の人生で重いトラウマとなることが研究でわかっています。しかし、こうしたトラウマ的な愛着は感情だけの問題ではないようです。


愛着関係はまずは母親のお腹の中で赤ちゃんと形成されます。胎児は母親の匂いや音に対してすぐに好意を持つようになります。このような速習は、母親の顔や声を認識する育成段階にも続きます。

この段階で母親と乳児を引き離すことは、乳児の感情形成に大きなトラウマとなります。不安に駆られて助けを求めたりしますが、それが得られずに行動をやめたりします。

このような行動はスキンシップや栄養補給など、母親との間で取られる暖かみの損失によって、起きると考えられています。研究者たちは、ネズミを使った実験で、人工的な刺激(ブラシでさする等)や人工ミルクを与えることで、小ネズミの心臓や睡眠を調整することはできましたが、母親と乳児の関係性から育つ高レベルな行動、つまり、相互性、模倣、感情の調整、そして、遊び、等といったことは習得させることができませんでした

その後の実験では、もう少し大きくなったネズミを使って同じ実験をしました。離乳する前に母親から離された小ネズミの8割がストレスのため胃に腫瘍ができたそうです。通常、この段階で小ネズミの胃に腫瘍が出ることはありません。


人間の関係性はネズミよりも複雑かもしれませんが、母親の存在が幼い段階で欠けると、生涯にわたって影響し得る身体的、または、行動的な結果が出ると言えます。

参照
https://www.psychologicalscience.org/publications/observer/obsonline/how-mother-child-separation-causes-neurobiological-vulnerability-into-adulthood.html
posted by ヤス at 05:38| Comment(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月19日

公衆衛生分野での質的研究を評価するための新たなツール(WHOが開発に関わる)

WHO(World Health Organization;世界保健機関)と複数の大学・研究機関の共同によって、公衆衛生の決断において質的研究の結果を整理するためのツールが開発されました。Implementation Science という学術誌が、質的研究の発見をどれだけ信頼したらよいかを考えるためのツールとして発表しました。CERQual (Confidence in the Evidence from Reviews of Qualitative research;質的研究レビューによる発見事項の信憑生)という名前のツールで、医療や社会福祉の分野での決断や方針に関する質的な発見を評価します。CERQualはGRADEの改良版で、研究発見の質、また、そこから導き出された推薦事項を体系的に評価します。


なぜこの新たなツール(GRADE-CERQual)が大事なのか?

これまで公衆衛生の分野で、研究者たちの決断や推薦は量的研究からのもの(例:ランダム化比較試験)が大半でした。こうした発見事項は、例えば、ある治療法が他の治療法と比べて、どこが優れていて、どこが劣っているかを知るのに有効でした。しかし、公衆衛生の分野、特に医療においては、サービスがどのように提供されているか、治療が施される状況など、質的研究の方がよりよく調べられる事柄も多々あります

新たな方針や決断に携わる人たちは、研究者からの推薦状を受けた時、様々な問題に直面します。推薦されている計画がどれだけ実現可能か、実際に現場で働く医者、看護師などに適応できるか、患者から見てどうか?など。

優れた質的研究はこれらの質問のいくつかに答えることはできますが、汎用性に欠けます(例:ある一つの病院における、一つのケアモデルについて、母親と助産婦の体験など)。またそうした発見が非体系的であり、発見のプロセスが完全に透明化されてない場合もあります。

これらの懸念材料をより深く解消するためには質的研究の統計的なレビュー、つまり、質的証拠の統合(qualitative evidence syntheses)が必要です。このような統合調査をすると、新たな方針や介入方法が現場の人や患者から見て、受け入れられるかどうかを考えることができます。

そこで質的な統合調査からの発見事項をどれだけ信用してよいかを探るツールとして、GRADE-CERQualが開発されました。WHOでは、このツールが世界的に決断のプロセスをサポートするツールとして使われることを望んでいます。

WHOのノリス博士(Dr Susan L Norris, Secretary of the WHO Guidelines Review Committee):「公衆衛生での意思決定において質的研究の重要性は、近年特に認められています。新たな方針がどれだけ受け入れられそうか、また、実現可能そうかを考えるのは非常に大事なことです。」

WHOは2010年から、新たな方針の質や有益性を改善するためにこのツールの開発に着手しました。現在では、GRADE-CERQualはイギリス(National Institute for Health and Care Excellence)、スウェーデン(Health Technology Assessment)、そして、ヨーロッパ全体(European Commission Initiative on Breast Cancer)の健康方針ガイドラインの中で使われています


参照
http://www.emro.who.int/media/news/a-new-tool-developed-by-who-and-academic-partners-supports-systematic-use-of-research-evidence-from-qualitative-studies-for-public-health-decision-making-and-guideline-development.html
posted by ヤス at 21:35| Comment(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする