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2018年07月22日

母と子を離すと大人になってからの神経生物学的な弱さに繋がる

母親と子供を離すと、子供のその後の人生で重いトラウマとなることが研究でわかっています。しかし、こうしたトラウマ的な愛着は感情だけの問題ではないようです。


愛着関係はまずは母親のお腹の中で赤ちゃんと形成されます。胎児は母親の匂いや音に対してすぐに好意を持つようになります。このような速習は、母親の顔や声を認識する育成段階にも続きます。

この段階で母親と乳児を引き離すことは、乳児の感情形成に大きなトラウマとなります。不安に駆られて助けを求めたりしますが、それが得られずに行動をやめたりします。

このような行動はスキンシップや栄養補給など、母親との間で取られる暖かみの損失によって、起きると考えられています。研究者たちは、ネズミを使った実験で、人工的な刺激(ブラシでさする等)や人工ミルクを与えることで、小ネズミの心臓や睡眠を調整することはできましたが、母親と乳児の関係性から育つ高レベルな行動、つまり、相互性、模倣、感情の調整、そして、遊び、等といったことは習得させることができませんでした

その後の実験では、もう少し大きくなったネズミを使って同じ実験をしました。離乳する前に母親から離された小ネズミの8割がストレスのため胃に腫瘍ができたそうです。通常、この段階で小ネズミの胃に腫瘍が出ることはありません。


人間の関係性はネズミよりも複雑かもしれませんが、母親の存在が幼い段階で欠けると、生涯にわたって影響し得る身体的、または、行動的な結果が出ると言えます。

参照
https://www.psychologicalscience.org/publications/observer/obsonline/how-mother-child-separation-causes-neurobiological-vulnerability-into-adulthood.html
posted by ヤス at 05:38| Comment(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月19日

公衆衛生分野での質的研究を評価するための新たなツール(WHOが開発に関わる)

WHO(World Health Organization;世界保健機関)と複数の大学・研究機関の共同によって、公衆衛生の決断において質的研究の結果を整理するためのツールが開発されました。Implementation Science という学術誌が、質的研究の発見をどれだけ信頼したらよいかを考えるためのツールとして発表しました。CERQual (Confidence in the Evidence from Reviews of Qualitative research;質的研究レビューによる発見事項の信憑生)という名前のツールで、医療や社会福祉の分野での決断や方針に関する質的な発見を評価します。CERQualはGRADEの改良版で、研究発見の質、また、そこから導き出された推薦事項を体系的に評価します。


なぜこの新たなツール(GRADE-CERQual)が大事なのか?

これまで公衆衛生の分野で、研究者たちの決断や推薦は量的研究からのもの(例:ランダム化比較試験)が大半でした。こうした発見事項は、例えば、ある治療法が他の治療法と比べて、どこが優れていて、どこが劣っているかを知るのに有効でした。しかし、公衆衛生の分野、特に医療においては、サービスがどのように提供されているか、治療が施される状況など、質的研究の方がよりよく調べられる事柄も多々あります

新たな方針や決断に携わる人たちは、研究者からの推薦状を受けた時、様々な問題に直面します。推薦されている計画がどれだけ実現可能か、実際に現場で働く医者、看護師などに適応できるか、患者から見てどうか?など。

優れた質的研究はこれらの質問のいくつかに答えることはできますが、汎用性に欠けます(例:ある一つの病院における、一つのケアモデルについて、母親と助産婦の体験など)。またそうした発見が非体系的であり、発見のプロセスが完全に透明化されてない場合もあります。

これらの懸念材料をより深く解消するためには質的研究の統計的なレビュー、つまり、質的証拠の統合(qualitative evidence syntheses)が必要です。このような統合調査をすると、新たな方針や介入方法が現場の人や患者から見て、受け入れられるかどうかを考えることができます。

そこで質的な統合調査からの発見事項をどれだけ信用してよいかを探るツールとして、GRADE-CERQualが開発されました。WHOでは、このツールが世界的に決断のプロセスをサポートするツールとして使われることを望んでいます。

WHOのノリス博士(Dr Susan L Norris, Secretary of the WHO Guidelines Review Committee):「公衆衛生での意思決定において質的研究の重要性は、近年特に認められています。新たな方針がどれだけ受け入れられそうか、また、実現可能そうかを考えるのは非常に大事なことです。」

WHOは2010年から、新たな方針の質や有益性を改善するためにこのツールの開発に着手しました。現在では、GRADE-CERQualはイギリス(National Institute for Health and Care Excellence)、スウェーデン(Health Technology Assessment)、そして、ヨーロッパ全体(European Commission Initiative on Breast Cancer)の健康方針ガイドラインの中で使われています


参照
http://www.emro.who.int/media/news/a-new-tool-developed-by-who-and-academic-partners-supports-systematic-use-of-research-evidence-from-qualitative-studies-for-public-health-decision-making-and-guideline-development.html
posted by ヤス at 21:35| Comment(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月09日

スマホ中毒の要因は、人とのつながりを求めることか

人々はなぜあれほどまでにスマホを触りたがるのか。そこには共通して、ほかの人と繋がりたいという欲求があるようです。つまり、スマホ中毒というのは、人嫌いなのではなく、人好きだから起こるかもしれないと、マギル大学のヴィシアー教授らが報告しています。



毎分のようにテキストメッセージを送ったり、ソーシャルメディアで周りの人が何をしているかをチェックしなくては気が済まない人、たまに見かけると思います。これまでこのような行動は、反社会的であると言われ、IT技術者や企業に解決を求められてきました。

しかし今回、認知人類学者のヴェシアー教授らが、認知と文化の発展を研究したところ、他人を見たいという欲求、それと同時に他人から見られたいという欲求は、昔からあり、人類の発展に寄与してきたことと関係があると説明しました。

人間は社会的な動物で、文化的に適した行動を保つために常に他人を見ることで発展してきました。これを通して、意味や目的、アイデンティティーを築き上げます。

今回、ヴェシアー教授は同大学のステンデル教授と共に、スマホの弊害について述べている記事を、人類発展の観点から分析しました。そして、スマホ中毒者に共通するものは、他人と繋がりたいという欲求でした。

スマホが健康的な通常の社会性欲求を満たす一方で、そのスピードと規模が脳に過剰な報酬を送ってしまい、不健康な中毒へと変わる可能性があるのも事実だと述べています。

食べるものに困らなくなった現代でさえ、脂肪と糖分を強く求める傾向が肥満や心臓病を引き起こしています。社会的な欲求も、スマホの使用によって、過度の社会性をもたらすことはあり得ます。

プッシュ通知を停止したり、スマホを見る回数を制限するなどをすると、スマホ中毒は低減するかもしれません。また職場において、夜や週末にメールを禁止することも大事だと書かれています。

企業や技術発展を制限するよりも、正しく使うための議論を進めるべきであり、そこには親や学校の先生も大事や役割を担う、と結論づけています。



参照
https://m.medicalxpress.com/news/2018-03-addicted-smartphones-social-interaction.html
posted by ヤス at 05:44| Comment(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月04日

お金はモチベーションに影響するのか?その2

内的モチベーションは、外的モチベーションと比べて、パフォーマンスにより強く関係し、パフォーマンスをより強く予測できます。外的な事柄に集中するほど、内的な楽しみから目を背ける傾向が高く、それらは高パフォーマンスに繋がっています(しかしながら、最近の研究では内的と外的が同時に高い事もあると報告されています)。


お金とモチベーションに関係する研究を見ていくと、お金でモチベーションを上げようとする事には、何らかのコストが伴いそうです。しかしこれは無償で働けというのではありません。生活を支えるだけの収入は必要です。しかし、必要だけの収入があり基本的なニーズが満たされると、それ以上のお金がどれだけ心のプラスをもたらすのかはまだ疑問です。カーネマンとディートンの有名な研究では、アメリカにおいて、給料が年間で7万5千ドルに上がるまでは、心の健康度も同じように上がるそうです。しかしそれ以上の給料があっても、心の健康度は横ばいとなります。

私たちがお金に対して持つ関係性は人それぞれと言えそうです。様々なものが個人化してきた現代で、お金が同じように作用すると考えるのも不思議だと言えます。

例えば、お金に対する不安度合いも人によってバラバラで、お金を大事にする理由も人によって異なります(例:力、自由、安全、愛情)。企業が従業員のモチベーションを高めたいなら、それぞれの従業員の価値観を理解する必要があります。研究で、それぞれの価値観はエンゲージメントと異なるように関連しています。例えば、権力やナルシズムを追求することで得られた収入は、家族の安定や休暇のために得られた収入よりは、報われた気持ちがしないでしょう。


最後に、新たな研究では従業員の性格が、給料よりもエンゲージメントを予測できると報告しています。2万5千人の参加者を扱ったメタ分析では、性格が仕事満足度の4割を決定することがわかりました。感情的に安定していて、外向的で、愛想良く、良心的な人ほど、仕事に満足している(給料に関係なく)。そして、組織において、エンゲージメントを下げる最も大きな要因は、無能なリーダーシップでした。

お金とモチベーション、非常に面白い分野だと思います。

参照
https://hbr.org/2013/04/does-money-really-affect-motiv
posted by ヤス at 07:42| Comment(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月10日

医者が有能で親切だと、プラセボ効果が上がる

治療が有効だと思うだけで、効果が現れるプラセボ効果。これについては、数多くの研究がなされています。今回、スタンフォード大学のローレン・ホウィ氏は、いかにプラセボ効果を高め、その逆のノセボ効果(ネガティブな期待がネガティブ効果を招く)を軽減するかを研究しました。そこで、医者が親切で有能だという印象が大きく影響することがわかりました。

医者は近年、患者とラポールを形成することを求められています。今回の実験は、なぜそうした心理的、社会的な面が治療に大事なのかを裏付けてくれます。

今回の実験では164名の健康な患者が、食事の好みに関する実験に参加していると告げられます。そのためにまずはアレルギーテストをすると言われます。女性の医師が、アレルギー予防のヒスタミン(皮膚の腫れや炎症を防ぐ)を注射で投与します。そして、そこに効果のないプラセボクリームを塗ります。一部の参加者には、それで腫れが治ると言い、他の参加者には腫れが増加すると言います。

さらに参加者は、医者の態度で、4つのグループに分けられます。暖かく有能、冷たく有能、暖かく無能、冷たく無能。

例えば、暖かく振る舞うケースでは、患者の名前を訪ね、その名前で呼び続けたりしますが、冷たく振る舞うグループではそういったことはしません。有能に振る舞うケースでは、患者とアイコンタクトを取り、自信のある態度で話します。無能なケースではこの逆をします。また、有能なケースでは、綺麗な診療室なのに対し、無能なケースでは汚い診療室で診断します。

ヒスタミン注射の後、リサーチアシスタント(どの参加者がどのグループかを知らない)が参加者の皮膚反応を記録します。

結果は、有能で親切な医者に会い、クリームによって、皮膚反応が軽減すると言われた参加者の皮膚反応は、最も小さく出ました。また、クリームによって、皮膚反応が増大すると言われた参加者ですが、それに伴う結果は見られなかったそうです。

今回の実験では、健康な参加者を使った、短時間での皮膚反応を見た、また男性の医師ならばどうだったかはわからない、等の点は限定されていますが、プラセボ効果に関して重要な発見だと思います。


参照
https://digest.bps.org.uk/2017/10/27/the-placebo-effect-is-amplified-when-doctors-appear-likeable-and-competent/
posted by ヤス at 19:59| Comment(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする