2023年08月09日

スピン・バイアスとは研究歪曲

「スピン・バイアス」とは、意図的であれ、非意図的であれ、研究結果を歪曲解釈し、不当に有利または不利な結果を示唆することを言います。

利用可能な最善の臨床エビデンスは医療における意思決定に反映されるべきです。そのため臨床研究の結果は正確に報告され、提示されるべきです。フレッチャー(Fletcher)とブラック(Black)も「データはそれ自身を語るべきである」と指摘しています。

しかし、研究者は、「スピン」を加えることによって、自分(あるいは他者)の結果の解釈を歪め、結果が正当化されるよりも好意的に(あるいは不利に)捉えられるようにし、読者を惑わす誘惑に駆られることがあります。


例えば、仮説が正しくないのに正しかったと示唆したり、正しかったのに正しくなかったと示唆したり、メディアの注目を集める「インパクト」を示したり、研究利用者に影響を与えるマーケティングツールとして機能したりする、などがあります。

医療の研究におけるスピン・バイアスは、以下のような様々な形で現れることがあります:

研究デザインや分析が因果関係を正当化するものではないのに、因果関係を決めつけた言い回しをする。
二次エンドポイント(観察や介入を終える時点)への不当な注目。
統計的に有意な主要評価項目を強調し、統計的に有意でない主要評価項目を無視する。
統計的に有意でないエンドポイントについて、非劣性/同等性を主張する。
トレンドに言及して有意性を示唆する。
サブグループにおける統計的差異から有意性を推測する。
「治療の意図による分析」よりも「プロトコル通りのみ分析」を強調する。

EQUATORネットワークは、このような慣行は、健康研究の報告書の完全性、透明性、価値を低下させる誤解を招く報告だと述べています。

参照
https://catalogofbias.org/biases/spin-bias/
posted by ヤス at 08:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年08月08日

イギリス・医学研究審議会のパートナーシップ助成

パートナーシップ助成金制度は、多様な研究者グループ間の新しいパートナーシップを支援するためのものです。

助成金は、MRC(医学研究審議会)や他の助成団体から既に支援を受けている質の高い研究プログラムにさらに付加価値をつけるような、新しく価値のある共同研究活動や能力を確立するために提供されます。仮説に基づいた単独の研究プロジェクトに資金を提供するためのものではありません。

共同研究には以下のようなものが含まれます。

・ネットワーキングとパートナーシップ活動。学際的な共同パートナーシップやコンソーシアム(共同事業体)の設立、分野横断的な国内戦略や国際戦略の育成・実現、研究機関横断的な知識の共有や創造の実現。

・独自の共有資源を確立したり、その活用を支援するためのインフラ支援(スタッフ、システム、機器、セミナー、ワークショップなど)。

・専門的なデータやソフトウェアのプラットフォームやリソースなどのプラットフォーム活動。

・戦略的に重要な分野における研修、キャリア開発、能力開発。

・小規模で短期的刺激を与えるプロジェクトを指示することもあるが、具体的な研究質問がプロジェクトの中心となるべきではない。パートナーシップが中心である。そして、プロジェクトには様々な分野の専門家を用い、新たなパートナーシップの新たな能力を示すものでないといけない。


通常、成功するパートナーシップ助成金には、これらの要素が組み合わされています。ネットワーキング活動のみを支援する資金申請は却下されます。補助金の成功例として、パートナーシップ補助金のケーススタディをご参照ください。

パートナーシップ助成金は、最初の交付が終了するまでにはパートナーシップが出来上がり、その後の活動は別の方法で支援されることが期待されています。

参照
https://www.ukri.org/councils/mrc/guidance-for-applicants/types-of-funding-we-offer/partnership-grant/#contents-list
posted by ヤス at 23:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年07月30日

臨床試験の4段階

臨床試験には通常、4つの段階があると考えられています。

第1段階
少人数の健康なボランティアまたは患者において、治験薬または治療法の安全性と忍容性(Tolerability)を評価する。忍容性とは薬を患者に投与した際に現れる副作用の程度の事で、副作用が小さければ、「忍容性が高い」となる。

第2段階
薬や治療法の有効性に関する予備的データを収集し、さらに特定の症状や疾患を有する患者を対象とした大規模なグループで安全性と副作用を評価する。

第3段階
治療法の有効性を確認し、副作用をモニタリングし、標準的な治療法やプラセボと比較するための大規模試験を実施する。

第4段階
治療法が承認され、一般に使用できるようになった後も、より大規模で多様な患者集団を対象に、治療法の安全性と有効性をモニタリングするための試験を継続する。



これら4段階に加え、一部の臨床試験ではサブカテゴリーや専門的な研究が含まれることもありますが、臨床試験の大部分はこの4段階構造に従っています。これらのフェーズの目的は、患者治療に承認され広く使用される前に、治験薬の安全性と有効性を評価するためのデータと証拠を体系的に収集することです。
posted by ヤス at 06:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年10月04日

実装とは改善のことである

研究者は研究費を申請する際に、研究を実施する計画や、その研究が実際にもたらすと予想される影響について説明するよう求められています。

このことを「翻訳ギャップ」と言います。翻訳ギャップには2つあり、1つ目は、研究から得られたアイデアをエビデンスに変換すること。2つ目のギャップは、そのエビデンスを日常の臨床実践(プラクティス)に取り入れることです。この取り入れることを、実装(インプリメンテーション)と言います。

過去20年ほどの間に、実施科学の分野は成長し、多くのモデルや理論、そして膨大な量の研究が生まれました。実装スペシャリストのクリスチャン・ハドソン(Kristian Hudson)は「実装の秘密」(パート1、2、3)という素晴らしい資料を作成しました。

実装科学が発展する裏には、多くの実験で生まれる知識が、現実の世界で物事を実施しようとする人々にとって、特に役に立たなかったからことがあります。臨床の現場で役立たせるには、現場の専門家やプラクティショナー、また、一般の人々の声が必要です。つまり、実装科学とは、実装社会科学だとも考えられます。


次に大事なポイントとして、フィデリティと機能のバランス。フィデリティ(忠実度)とは、複雑な介入がどこで使われようと、定められた方法で使われることです。機能とは、介入から得られる利益。フィデリティを維持しようとすると、機能が減少するケースは多々です。フィデリティを維持しようとするがために、プラクティショナーが現場で使えないと思ったり、デザインが乏しく、アンケートに参加しない患者がいたりします。医学研究評議会と健康財団が最近この問題に取り組み、フィデリティよりも機能を担保することの重要性を強調する声明を出したそうです。クリスチャンいわく「実装は改善」です。


参照
https://www.rdsblog.org.uk/real-world-implementation
posted by ヤス at 08:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年05月17日

リサーチからインパクトへ

インパクトとは、研究が社会や経済に与える貢献であり、個人、組織、国家に利益をもたらすものと定義されます。研究からインパクトを生み出すことは、状況に大きく依存し、時間がかかり、また偶然性も含みます。

「インパクト」は「知識の動員(Knowledge mobilisation)」だと表現されます。知識の動員は、変化を促進するために異なるコミュニティ間で知識を共有することです。これは、エンゲージメント、普及、共同設計、商業化などのプロセスや活動で構成されています。

研究ユーザーとの関わり
有意義な研究成果を生み出すには、研究を利用する可能性のある人々を巻き込む必要があります。この関わりは通常、研究プロジェクトの初期段階、つまり研究デザインを設定する前の段階から計画されます。

英国国立衛生・ケア研究所(NIHR)ではすべての申請者に、ユーザーが研究からどのような恩恵を受けるかを考慮し、研究プロセスのあらゆる段階でユーザーと関わり、参加する方法を前向きに(かつ現実的に)検討するよう促しています。研究ユーザーには、患者、介護者、一般市民だけでなく、研究委託者、ボランティア部門の専門家、管理職、様々な経歴の臨床医、その他、意図した変化が現場で実践されたり、政策に組み込まれたりするために必要な人が含まれるでしょう。

インパクトへの道筋を計画する
研究ユーザーと関わり、初期の段階からどのような影響があるかを考えることで、そのプロセスを計画することができます。計画には、達成したいインパクトの内容、つまり、「何が、誰 のために、どの程度、いつ変化するか」を検討することなどです。NIHRの研究プログラムに資金援助を申請する研究者は、申請書 に「関与と影響に関する計画」を含むことが求められています。この計画では、研究成果をもたらすために、研究ユーザーとどのように関わっていくかを説明する必要があります。また、NIHRから資金提供を受けた研究者は、Researchfishを通じてNIHRに研究の成果、影響、影響を報告することが期待されています。

エンゲージメント
研究ユーザーを知る。彼らの興味、視点、ニーズを理解し、何が彼らを動かしているのかを知ります。彼らがどのようなタイムスケールで仕事をしているかを理解します。人によってニーズが異なることを認識する。適切なネットワーク、知識、経験を持つ適切な人材に参画してもらい、できれば最低2名は共同申請者とします。

計画段階で研究ユーザーを巻き込み、プロジェクト期間中もそれ 以降も継続して参加させます。十分な時間と費用をかけ、申請書内で研究ユーザーの意見を適切に反映させる。

パートナーシップ
変化をもたらす必要がある組織内で、研究の「チャンピオン」と なる人を見つけ、育成します。

確立されたネットワークと連携し、研究の知名度を上げます。例えば、ボランティア団体などは、政策立案者、サービス利用者、介護者と強力なコネクションを持っていることが多いので、彼らと協力することも有益だったりします。

既存のフォーラム、グループ、会議、イベントなどを利用して、知識を交換し、意識を高め、研究の初期段階や研究の進捗に応じて研究に対するフィードバックを得るようにしましょう。

背景
研究の文化的、財政的、サービス的、政策的背景を理解します。変化を求め、研究に取り組むのに適切な人々や条件がある状況を特定し、開拓します。そのような背景の中で、自分の研究が目的に合っていることを確認する必要があります。

資料
管理者、患者や介護者、実務者、産業界、研究者、臨床医、一般市民向けに、適宜、様々なオーダーメイドのアウトプットを用意しましょう。文書による資料を作成する場合は、わかりやすい英語を使用します。従来の報告書、一般向け要約、学術論文の配布だけでなく、インタラクティブなアウトプットやアプローチを用います。ストーリー、ソーシャルメディア、イラストを使用することも検討しましょう。

アプローチ
ネットワーク、教育イベント、監査とフィードバック、ITシステムへの研究成果の組み込み、劇場などを通じて、対象者に到達し、影響を与える最善の方法を検討してください。

複数の方法を用いてください。

複数の対象者にアプローチする。

タイミング
エンゲージメントを維持し、最終結果を望ましいものにするために、研究終了前に共有できるものを検討します。インパクトにつながる機会は、しばしば予期しない、計画外のものであるため、偶然性も考慮しておきましょう。

参照
https://www.nihr.ac.uk/researchers/apply-for-funding/how-to-apply-for-project-funding/plan-for-impact.htm
posted by ヤス at 23:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする