【心の理屈メルマガ】登録はこちらから!

【TOEFL(R) Test 対策】 AdmissionsBuffet (アドミッションズ・ビュッフェ) プレミアム・プラン

2020年11月28日

ポジティブ心理学をストレスマネジメントに活用する

ポジティブ心理学は比較的新しい分野の心理学で、近年注目を集めてきました。この心理学は心的症状に焦点を当てるのではなく、人の幸せや心の健康に焦点を当てた心理学です。従って、強さ、美徳など、人に充実感を与える要素を考えたり、またそれによってストレスに対処しようとすることを狙いとします。



ポジティブ心理学はアブラハム・マズローら、ヒューマニスティック(人文主義的な)心理学者がその礎を作ったとされますが、より注目されるようになったのは1998年、マーティン・セグリマンがアメリカ心理学会の会長時代にこの心理学を強く推奨したことが発端だと考えられています。

セグリマンが自分の幼い娘の教育を考えたときに、ポジティブ心理学の必要性は明らかになったと言います。彼は心の問題の原因であるとか、それをどう処理すべきかはわかっていましたが、強み、レジリエンス、心の健康などをどのように養っていくかはあまりわかっていなかったのです。こうしたポジティブな分野の研究はそれまであまり進んでいなかったのです。

ポジティブ心理学では何が私たちを生き生きとさせるのかを研究します。従って、「何が幸せに影響するか?」「ポジティブな感情がもたらす健康面への効果は?」「どのような習慣や行動がレジリエンスを構築するのか?」といった質問と向き合います。

これまでわかっていることとして、怒り、不安、悲しみといったネガティブな感情は私たちの健康にも悪く影響し、ストレス反応を生み出し、慢性的なストレスとなり、それが心血管系の病気へのリスクを高める、などがあります。しかしポジティブ心理学の研究で、ポジティブな感情が、それらの身体的反応を阻止する働きがあることも報告されています。

ポジティブ心理学でストレスに対処する要素として以下のものがあります。それぞれ見ていきましょう。

感謝
自分が持っているものについて感謝をすることは、より良い満足と幸せにつながります。こうしたことは、感謝日記をつけることでも振り返ることができます。感謝の気持ちに気づくことで、自分は十分に必要なものを持っているんだという感覚や人生への満足感などを感じることができます。

楽観性
人にはそれぞれもともと悲観的なものの見方をする人や、楽観的なものの見方をする人がいますが、楽観的な見方を練習して養うことは可能です。楽観主義者は人生により多くの良いことを見つけるので、練習すべき見方だといえます。

フロー
何かに没頭して、時間も忘れているようなときは、この「フロー」状態にあると言われます。趣味に没頭するときや、何か新しいことを学ときなど、チャレンジと易しさのバランスが良いときにこの状態になります。フローがあるとその行動が楽しくなるだけではなく、習得力が高められたりします。

マインドフルネス
価値判断をせず「今」に意識を向けることだと言われます。これには少し練習が必要ですが、習得できればストレス対処、不眠、うつの再発、認知力の低下に非常に有効な手段です。

スピリチュアリティ
どのような信念であっても、スピリチュアリティは、人生の意味を強く感じさせ、苦難に対してレジリエンスをもたらします。祈りや瞑想によって、心の強さを感じたり、また同じ信念を持つグループで行動することで、ソーシャルサポートも得ることができます。

まだまだ研究が必要で、新たなコンセプトも生まれつつある分野ですが、非常に興味深いポジティブ心理学。私もいくつか研究をしましたが(例)、今後の研究が楽しみです。

参照
https://www.verywellmind.com/using-positive-psychology-for-stress-management-3144620
posted by ヤス at 18:10| Comment(0) | 心理学理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月22日

社会的比較理論:上向き比較と下向き比較

私たちは生活をする中で周りと比較をします。このことを社会的比較理論と言いますが、これについて少し考えてみましょう。

この理論は心理学者、レオン・フェスティンガーによって1954年に作られたもので、人は他人と比較することで自分を評価したいという内的な欲求があるというものです。例えば、ある高校生が高校のブラスバンド部に入ってクラリネットを習おうとしたとします。この生徒は周りと比べることで自分が上手いのか下手なのかを判断するでしょう。同じ部内でも、特にクラリネットを弾く他の生徒と比べるかもしれません。

フェスティンガーは、私たちは自分自身を評価するためのベンチマークを作るために、このような比較のプロセスに介入すると唱えました。非常に優秀な生徒と比べることもあるでしょう。すると自分がいかに下手かに気づき動機付く生徒もいるかもしれません。

このように周りと比較することで私たちは自分を評価し、行動を決めることができます。

社会的比較理論には、上向き比較下向き比較の2種類があります。

上向き比較では自分が、自分より上だと思う人たちとの比較をします。この比較は自分を高めたいという動機からすることが多いです。より上の人たちと比較することで、彼らと同じレベルになるための方法を見出そうとします。下向き比較では、自分より下だと思う人たちと比べます。こうすることで、自分についてよりよく思えたりします。

しかし比較をしすぎることで、そこに求められるレベルが高すぎて、どうしようもない状況に陥ることもあります。例えば、ダイエットをしようとマラソンを始めたとします。そして毎日練習をし、マラソンの当日がやってきました。マラソンの現地ではあなたよりアスリートとして優れた人ばかりです。ここであなたは当初設定した比較基準が高すぎたと気づきます。つまり、現実社会では、周りと比較をしないでいることも大事な時があるということです。

上向き比較では自分の改善点などを知ることができますが、同時に自信をなくしたり、不安の原因にもなりえます。下向き比較では、自分についてよりよく思うことはできますが、改善点を知るためには難しいかもしれません。日常生活の中で自分がどういった比較をしているか、気をつけてみるのも良いかもしれません。


参照
https://www.verywellmind.com/what-is-the-social-comparison-process-2795872
posted by ヤス at 23:36| Comment(0) | 心理学理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月07日

どうすれば質の高い論文が書けるのか

ネイチャー誌でこのテーマの記事があったので、まとめたいと思います。

メッセージを明確に

まずはどんなメッセージを読者に伝えたいかを明確にする。これが不明確だと、後々、コミュニケーションミスが起きる。またメッセージの明確さは複数の著者が絡む時にも有効。オススメは共著者が全員ミーティングをして、メッセージだけではなく、データの選択、視覚的プレゼンテーションなども議論する。

最も大事な情報は主文に書かれるべきで、あまり必要でないものは付録に入れる。

多くの論文がリジェクトされる理由の一つに、ディスカッション部分が弱く、既存の文献をしっかり理解していことがバレバレな時。研究者は、彼らのリザルトがどのように他の状況でも有効なのかを説明し、論文の独自性を強く訴えるべき。

思索ベースの結論とエビデンスベースの結論には紙一重の違いしかない。ディスカッション部分で思索をすることはできるが、これは過度にしてはいけない。ディスカッションの全てが思索だというのではいけない。なぜなら著者の経験に根ざしたものではないからだ。結論部分では、1、2文、次にする必要のある研究について述べると良い。


ロジックの枠を作る

構造が大事である。例えば、この論文(http://doi.org/ckqp)でも説明しているが、それぞれのパラグラフは、まず最初の文章で状況を定義し、中部分では新たなアイデアを紹介し、そして、最後の文章で結論を述べる(「状況・コンテンツ・結論」モデル)。論文全体で見ると、イントロ部分が状況を設定し、結果の部分がコンテンツを提要し、ディスカッションで結論となる。

また一つのキーメッセージに絞ることが大事である。これがタイトルに反映される。そして、論文の全てがそのアイデアをサポートする。

書き手としてあなたの仕事は、専門知識がないかもしれない査読者をサポートし、あなたがした研究を理解してもらわないといけない。これは、問題点を理解してもらうこともそうだ。そうでないと、なぜあなたの研究が大事なのかわからない。


自信を持って書く

科学者として物を書く時、唯一の義務は「明確さ」である。つまり、この論文では「何が新しいのか?」これに明確に答え、論文の全ての部分はこれに貢献しないといけない。

ドイツ語のコンセプトで「赤い糸」という表現がある。これは物語の最初から最後までを結ぶ糸のことである。科学的文献では、「何が新しいのか?」この答えが赤い糸となる。これこそ論文を書く意義である。

そして、自信を持ってはっきりとした文章を書くことだ。そうではないと誇張されたり、紛らわしい表現となる。こうなると、メッセージがはっきり伝わらない。例として挙がっていたのが

悪い例
“Though not inclusive, this paper provides a useful review of the well-known methods of physical oceanography using as examples various research that illustrates the methodological challenges that give rise to successful solutions to the difficulties inherent in oceanographic research.”


良い例
“We review methods of oceanographic research with examples that reveal specific challenges and solutions”


読者の仕事は、注意深く読んで、それを記憶することだ。そして、著者の仕事は、それをしやすくすることだ。これをマスターするには、自分の専門分野以外の論文も読むと良いだろう。


ゾンビ名詞に注意する

論文を書くときは、常に「査読者は忙しくて、疲れている」と想像しながら書く。そして、自分自身が読んでいて楽しいものを書くこと。

学術論文はつまらないものである必要はない。人間はストーリーで生きる動物である。論文に入り込まなければ、それを理解するのは難しい。論文は事実に基づき、エビデンスベースで、簡潔であるべきだが、だからといってつまらなくしないといけないというわけではない。

よく見ることが、著者の個人的な意見が鎮圧されてしまうこと。多くの著者が、メンター等から、個人的な意見を書いてはいけないと言われる。しかし、この概念が強すぎて、良い意見が表されないこともある。

ヘレン・ソードが「ゾンビ名詞」という言葉を作った。つまり、「implementation(実施)」 or 「application(応用)」といった名詞は、それらの動詞と比べて、活気がなくなっている。良い論文は読者の感情を引きつける。だから論文が一度仕上がったら、少し活気のある言葉を使って、ストーリーにすることも良い(もちろんバランスが大切だが)。


大げさな散文をカットする

クリエイティビティーは大切だが、学術論文の目的は情報を伝えることである。きらびやかな表現をする人もいるが、特にノンネイティブで英語を扱う人にとっては、混乱の種となりかねない。言語は必要以上に複雑にしないことが大事だ。

しかしカットのしすぎも問題である。例えば、メソッドの部分で、大事な研究方法に関する項目を伝えていなかったり。メソッド部分では、読者が同じ研究を再生できるように情報提供しないといけない。また、論文全体を通して、論点が一貫していること。それと同時に、証拠以上のことを言わないことが大事である。

編集長や査読者は、その分野で役に立ちそうな面白い発見を探している。それに応えられなければ論文はリジェクトされる。多くの著者がディスカッション部分でリジェクトされる。つまり、発見したことがどれだけ面白く、その分野に役立つかを上手に伝えられていない。また既存の文献を再評価し、その論文での発見が、将来の研究にどう活かせるかを書かないといけない。また発見が強固なものであると伝えるために、他の解釈・説明を考えたこともアピールしないといけない。


多くの読者をターゲットとする

論文のインパクトとその質に関係性があることを証明する研究はまだないが、以下の論文では明確で、簡潔で、叙述的なタイトルはSNSやメディアで取り上げられやすいと述べられてある。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28039032

大事なことは、何が言いたいかをズバリということである。あらかじめ批判を避けようとして、遠回しな表現をせずに、明確で、他の分野の研究者など、素人にでもわかるような表現をすることが大事である。専門分野の人以外にでもわかるように書くと、他の分野の論文で引用される可能性が高まるだけではなく、研究者以外の人たちにも読んでもらえる。そうすると、一般誌などでも取り上げられやすい。

参照
https://www.nature.com/articles/d41586-018-02404-4
posted by ヤス at 06:57| Comment(0) | 心理学理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月30日

迅速エビデンス査定(REA)とは何か?

現在、学士課程の最後の授業では、 Rapid Evidence Assessment (REA)という文献レビューを学生さんにしてもらい、卒業論文としています。このレビュー方法、適当な邦訳が見当たらないので、勝手に訳すと、「迅速エビデンス査定」とでもなるでしょうか。これはシステマチックレビューと比べるとわかりやすいのですが、がっつりと今ある研究結果ををレビューするのではなくて、素早く限定して研究結果をレビューする方法です。これについてご紹介します。


文献レビューで最も王道なのが、システマチックレビュー(SR)です。SRでは特定のトピックに対して、全ての関連する研究を見ていき、比較的幅広く範囲を設定して、徹底的に文献を見ていきます。そして、複数の研究者がそれぞれ独自に、一つ一つの研究を、決められた範囲に当てはまるかどうか判断し、またそれらの質も分析していきます。SRは透明性があり、証明ができ、再実行が可能なレビューだと言えます。従って、SRはバイアスが他のレビューよりも少ないと言えます。


SRと同様、REAも労働現場に有効な情報を提供できるレビューであり、既存のエビデンスを集約するものです。SRとの間にいくつもの共通点があります。

1. 背景
2. 研究質問
3. 選択基準
4. 検索の戦略
5. 対象研究の選択
6. データ抽出
7. データ分析
8. 分析結果の集約
8.1. キーワードの定義
8.2. メカニズムの解明(原因など)
8.3. 主な発見
8.4. モデレーターとメディエイターの発見
9. 分析結果の統合
10. 研究の弱点
11. 結論
12. 労働現場への示唆


SRとREAの大きな違いは、それぞれにかかる時間やリソースです。従って、発見した事柄の幅の広さや深さはREAでは狭く浅いと言えます。つまり、REAは、SRでがっつりと調べるものの、特定の鍵となる一部だけを見直します

文献検索においては、SRほど包括的にデータベースを見直しません。2、3の主要なデータベースのみを検索します。そして、出版されていない文献は無視します。

対象となる研究も、特定のデザインを用いているもの(例:メタ分析やランダム化比較試験[RCT])だけを分析します。

データの抽出においても、主要な情報だけに焦点を当てます。例えば、出版年、対象人口、研究デザイン、サンプルサイズ、特定のモデレーター・メディエイター、主な発見、効果の大きさなど。

また、分析の際にも、選んだ研究の研究方法の適性と質に焦点を当てて、判断します。

これらの特徴から、REAはSRと比べると、よりバイアスに弱いと言えます。しかし、SRでは複数の研究者が1年ほどかけて行うのに対して、REAは2人の研究者で数ヶ月でできることもあります。従って、SRを行うほどの時間や資金がない組織では、REAを実施する場合があります。臨床、医学、そして、マネジメントの分野で、REAは使われることが多いです。


参照
https://www.cebma.org/faq/what-is-an-rea/
posted by ヤス at 00:22| Comment(0) | 心理学理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月14日

自然連結性(Nature connectedness)とは

自然連結性(Nature connectedness)とは、個人が自分のアイデンティティーに、自然をどれだけ含ませるか、その度合いのことを言います。自然連結性とは、自然や自然が作ったもの(それが必ずしも良いものでなくても)への理解でもあります。自然連結性の特徴は、性格の特徴とも似ています。自然連結性は長期間に渡り、また多岐にわたる状況において一貫しています。シュルツは自然連結性には3要素があると言います。

認知的要素:自然連結性のコアであり、個人がどれだけ自然と統合されていると感じるか。
感情的要素:自然に対するいたわりの感情。
行動的要素:自然環境を保護しようというコミットメント。


この3要素が自然連結性を作り出し、自然と健康的な関係を作るのに必要なものです。自然と繋がっていると感じる人は、自然へのいたわりの気持ちが強く、自然を保護しようとします。近年の研究では、自然に触れることは、健康と幸福に様々な便益をもたらすと報告されています。

参照
https://en.wikipedia.org/wiki/Nature_connectedness
posted by ヤス at 01:07| Comment(0) | 心理学理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする