2022年06月13日

腸と脳の関係

腸内に生息するバクテリアなどの細菌が、脳の病気になるかどうかなど、脳に影響を与える。100年以上前に、私たちは細菌が腸内、口や鼻、皮膚に生息していることを発見しました。人類が誕生して以来、ずっとそうしてきた。そして、ごく少数の種類の細菌が腸の病気を引き起こすこともわかってきました。


特にこの15年の間に、腸内細菌は私たちの体の細胞に影響を与える物質を作り出すことができることが分かってきました。その物質の中には、私たち自身の細胞が作り出す物質と類似していたり、同じであったりするものがあるからです。

では、腸内細菌はどのように脳に影響を与えるのでしょうか?

食べ物の栄養素が腸から血液に移動するのと同じように、腸内細菌が作った物質が血液に入ることがあります。また、脳と腸をつなぐ神経がありますが、腸内細菌はその神経を通じて脳に信号を送ることができます。さらに、腸内細菌は腸の壁にある免疫系細胞を刺激し、免疫系細胞は神経を通して脳に信号を送ることができます。

過去10年の研究により、腸内細菌が私たちの感情や認知能力に影響を与える可能性があることが分かっています。例えば、ある細菌はオキシトシンを作ります。オキシトシンは私たち自身の体内で作られるホルモンで、社会的行動の増加を促します。また、ある細菌は、うつ病や不安神経症の原因となる物質をつくります。また、ストレス下で私たちを落ち着かせる物質を作る細菌もいます。

最後に、腸内細菌は、アルツハイマー病、パーキンソン病、自閉症など、特定の脳疾患に対する脆弱性にも影響を与えることが明らかになっています。例えば、パーキンソン病の人の脳に見られるシヌクレインという物質は、腸内細菌によって作られ、腸から神経を伝って脳に到達することができます。

まだまだ新たな発見が必要な分野ですが、非常に興味深いと感じました。

参照
https://www.health.harvard.edu/staying-healthy/whats-the-connection-between-the-gut-and-brain-health?
posted by ヤス at 18:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・メンタルヘルス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年04月19日

ポジティブ感情の効果と習慣づけ

ポジティブな感情は、楽観主義、外向性、成功など、より幸福になる傾向がある人々の特徴と関連しています。しかし、ポジティブな感情は、ストレスの少ない幸せな生活の単なる副産物ではなく、幸せな生活の要因だと言われています。ポジティブな感情は、それ自体でストレスのレベルを下げることができます。楽観的で成功した外向的な人がポジティブな感情を経験するのは、嬉しいことがたくさんあるからで、たまたまストレスが少なかったというだけではありません。ポジティブな感情を育んだり、より良い気分になるためのステップを踏むだけで、ストレスに対する回復力を高めることができます。


拡張・形成理論
心理学者のバーバラ・フレドリクソンは、ポジティブな感情がストレスに及ぼす影響について幅広く研究し、ポジティブ心理学の「拡張・形成理論」として知られる、ポジティブな感情とレジリエンスの相互作用のモデルを考え出しました。

フレデリクソンらは、私たちが自分自身の気分を高揚させると、視野が広がり、人生におけるより多くの可能性に気づくことができ、それによって、自らのリソースを他の分野へと広げ(拡張)そこで作り上げる(構築)ことができるようになると発見しました。

リソースには、以下のようなものがあります。

身体的リソース。エネルギー、スタミナ、健康、そして総合的なウェルネス。例えば、気分が良ければ、ジムに通うモチベーションが上がり、身体的リソースを高めることができるかもしれません。

心理的リソース。例えば、より楽観的な視点を選んだり、反芻から抜け出したり、多忙なスケジュールにも燃え尽きることなく耐えることができる能力などです。例えば、ポジティブな感情を経験すると、ネガティブなことにとらわれなくなり、人生の可能性に目を向け ることができるようになるかもしれません。

社会的リソース。これは、より協力的な人間関係、つまり、頼めば素晴らしいアドバイスをしてくれる友人、泣きたいときに肩を貸してくれる友人、辛いときに立ち寄ってくれる友人などを意味します。これもポジティブ感情を表現する人には形成しやすいかもしれません。

このようなリソースの増加は、ストレスに対する回復力を高めることにつながります。基本的には、ポジティブな感情がストレスに対する回復力を高め、さらにポジティブな感情を生み出すという、ポジティブ感情の「上昇スパイラル」として機能します。そして、残念ながらネガティブな感情も同じように作用することがあります。

ポジティブな気分や喜びを育むことは、その場限りの良い感情ではなく、ストレスを軽減し、人生全般を幸せにする道なのです。従って、ポジティブな感情をもたらす行動を増やすことが望まれます。

では具体的にポジティブな感情を高めるにはどうすればいいか。その多くは、思考パターンを変え、自分自身が置かれる経験を変えることに関係しています。

例えば、趣味に没頭する。趣味に費やす時間がなかなか取れない方も多いと思いますが、時間を作ることは大切です。ポジティブな感情を高めるだけでなく、ストレスから解放され、達成感も得られます。

その他、楽しく運動する。体を動かすことも強力なストレス解消法です。例えばダンスやヨガは特に良いメンタルヘルス効果が報告されている運動です。


参照
https://www.verywellmind.com/positive-affect-and-stress-3144628
posted by ヤス at 05:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・メンタルヘルス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年03月29日

イギリス国民保健サービスの自閉症に関する研究5カ年計画

自閉症は決して珍しい症状ではありません。イギリスでは人口の約1〜2%が自閉症の診断を受けています。自閉症の人は、自閉症でない人と比べて、以下のような経験をすることがよくあります。2022年3月、イギリスの国民保険サービスが自閉症に対して、5年の研究計画を発表しました。その資料(リンク以下)の最初に自閉症の人の健康に関する概要が書かれてありました。

より多くのメンタルヘルスの問題
例えばADHD、反抗挑発症、不安障害、摂食障害、気分障害、人格障害などである。また、心血管疾患、てんかん、身体障害または学習障害を持つ可能性が高い。

健康不良の決定要因がより多い、またはより広範である
自閉症者は、不完全雇用、不適切な住居、スティグマや差別、肥満、運動不足、制限された栄養価の低い食事を経験する可能性が高い。

ケアにアクセスするのが難しい
自閉症の人々が一般的な医療サービスを受けるのに苦労することが多いのは、医療提供者が彼らの感覚過敏、コミュニケーションの困難、不安、計画性や組織力の低さなどに対応できないためで、すでに悪い結果をさらに悪化させています。

短命
悲しいことに、自閉症の人は平均して、自閉症でない人よりも若く亡くなることが分かっています。学習障害のない自閉症者の場合、早期死亡の主な原因は自殺であり、晩年になるまで診断されなかった人の中で最も高い割合となっています。学習障害のある自閉症者の場合、早期の死因の第一位はてんかんです。ほとんどの自閉症者は複数の長期疾患を併発しており、自閉症に特化したサービスを改善するだけでなく、すべての医療・介護サービスにおいて自閉症者のケアを改善することの重要性が強調されています。

参照
https://www.england.nhs.uk/publication/five-year-nhs-autism-research-strategy-for-england/
posted by ヤス at 19:57| Comment(0) | 健康・メンタルヘルス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年03月26日

デジタルヘルスにおける人間中心の設計

テクノロジーを健康のために使っていく「デジタルヘルス」。この研究と実践は世界中で活発になってきています。イギリスでもNHSデジタルという組織が出き、デジタルヘルスをどんどん進めていっています。デジタルヘルスのツールを作る中で、大事なのが人間中心の設計を提供することです。仕組みがあっても、使えなければ意味がありません。その意味でユーザーに対していかにフレンドリーにするのかが大事です。

人間中心の設計のための6原則が紹介されていました。

1. デザインは、ユーザー、タスク、環境に対する明確な理解に基づいて行われる。

この原則を実現するためには、サービスを利用するユーザーを対象に、観察的・探索的なユーザー調査を行い、サービスを利用する場所やタスク、目的を明らかにする必要があります。

ISO 9241-210(国際標準化機構が制定するインタラクティブシステムの規格)では、ユーザーを製品やサービスを利用する人だけでなく、その利用によって直接的、間接的に影響を受ける可能性のある人たちとも表現しています。これらのグループを特定し、そのニーズを発見する必要があります。ユーザーのニーズのきちんと理解せずにシステムを構築することは、失敗の原因の一つです。

ISO 9241-210では「ユーザー中心設計」の代わりに「人間中心設計」という言葉を使い、「一般的にユーザーと考えられている人だけでなく、多くの利害関係者への影響に対処する」ことも強調しています。これは、ユーザーや顧客となる人たちだけでなく、すべてのステークホルダー、そしてサービスの運営に関わる人たちに注意を向けるサービスデザイン思考を意識しています。

イギリスのNHSの第一原則「NHSは、すべての人が利用できる包括的なサービスを提供する」は、人間中心のデザインを意味しています。この原則では、医療サービスのデザインにおける公平性が特に強調されています。私たちは、健康の向上が遅れている社会のグループやセクション(社会的弱者と呼ばれる人たちなど)に特に注意を払わなければならないと記されています。公平性は、最も影響を受けるユーザーグループの声に積極的に耳を傾け、彼らが必要とするサポートを提供することによってのみ達成することができます。


2. 設計と開発を通じてユーザーが参加する

ユーザーリサーチは最初に一度だけ行えばいいというものではありません。デザインから稼働、そしてサービスのライフサイクルを通じて、ユーザーを巻き込まなければなりません。

3. デザインは、ユーザー中心の評価によって改良される

ユーザー調査の結果がデザインに影響を与えなければ、ユーザー調査の意味はほとんどありません。


4. プロセスは反復的である

デザインはユーザー中心の評価によって改良されるものであり、そのプロセスは反復されるべきです。そのためにも、何かを開発する際には、頻繁なユーザーリサーチセッションを計画する必要があります。こうしたユーザーフィードバックを繰り返すことで、不確実性を徐々に排除し、リスクを軽減しています。

5. ユーザーの体験全体を考慮した設計

これは単に「使いやすさ」を意味するだけではなく、ユーザーが体験するすべての要素を考慮します。どのようなルートを経てツールを使うのか?ヘルプデスクにアクセスするのか?そしてそれはユーザーの体験にどのような影響を与えるのか?長期間の使用による影響は?ユーザーは以前のシステムや他のシステムの知識を持って私たちのサービスを利用するのか?

6. デザインチームには学際的なスキルや視点を含む
「デザイン・設計」は「デザイナー・設計者」という肩書きを持つ人たちだけのものではありません。デザインプロセスで役割を担うチーム全員の関心事なのです。マシュー・サイードは、著書『Rebel ideas』の中で、認知的多様性と人口動態的多様性について語り、個人がいかに複雑な問題を自分一人だけで解決できないかを説明しています。同じような経歴や信条を持つ人たちで構成された均質なチームでは、問題空間全体をカバーすることはできないのです。

ISO 9241-210規格では、チームメンバーに、他の分野の事柄をより認識するように求めています。NHSデジタルでは、テクニカルアーキテクトとサービスデザイナーが協力して問題を解決することが主流になりつつあります。

今後デジタルヘルスが進むにつれて、こうした原則はフレームワークはますます必要になってくると考えられます。



参照
https://digital.nhs.uk/blog/design-matters/2022/how-a-20-year-old-standard-is-still-relevant-today
posted by ヤス at 00:23| Comment(0) | 健康・メンタルヘルス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年01月25日

研究活動に励む学生に向けてのメッセージ The Wellbeing Thesis

先日、ザ・ウェルビーイング・シーシス(The Wellbeing Thesis)といって、研究活動に励む学生(Postgraduate Research Students)の健康をケアするための運動に取り組むグループのインタビューを受けました。僕は、モチベーションとメンタルヘルスの専門家ということで、僕の研究を元に色々とわかったことを報告させていただきました。



モチベーションには色々な種類がありますが、自己決定理論によると大きく分けて2つあります:外発的か内発的か。外発的なモチベーションは、お金、地位、名誉など、外からの報酬を求めて行動するためのモチベーション。対して、内発的なモチベーションは、やりがいや好奇心など、内側から湧き出る感情が得たいから行動するモチベーション(つまり、その行動そのものが報酬となる)です。

僕の研究では、内発的モチベーションが高い人は、メンタルヘルスの問題が少なく、メンタルヘルスに対する恥も低く、また、倫理的な判断ができる傾向があり、対して、外発的モチベーションが高い人は、メンタルヘルスの問題が多く、恥も高く、倫理的な判断が鈍ることがある、というような結果が出ました。関連論文にはこれらがあります;
https://www.researchgate.net/publication/329331323_Ethical_Judgement_in_UK_Business_Students_Relationship_with_Motivation_Self-Compassion_and_Mental_Health
https://www.researchgate.net/publication/322815392_Motivation_Types_and_Mental_Health_of_UK_Hospitality_Workers

今回のインタビューでも、研究活動において、内発的なモチベーションに基づいて挑戦し続けることが大事だといった趣旨のことを話させていただきました。研究活動に励む学生さんたちの役に立てればいいなと思います。

posted by ヤス at 20:45| Comment(0) | 健康・メンタルヘルス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする