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2018年07月19日

公衆衛生分野での質的研究を評価するための新たなツール(WHOが開発に関わる)

WHO(World Health Organization;世界保健機関)と複数の大学・研究機関の共同によって、公衆衛生の決断において質的研究の結果を整理するためのツールが開発されました。Implementation Science という学術誌が、質的研究の発見をどれだけ信頼したらよいかを考えるためのツールとして発表しました。CERQual (Confidence in the Evidence from Reviews of Qualitative research;質的研究レビューによる発見事項の信憑生)という名前のツールで、医療や社会福祉の分野での決断や方針に関する質的な発見を評価します。CERQualはGRADEの改良版で、研究発見の質、また、そこから導き出された推薦事項を体系的に評価します。


なぜこの新たなツール(GRADE-CERQual)が大事なのか?

これまで公衆衛生の分野で、研究者たちの決断や推薦は量的研究からのもの(例:ランダム化比較試験)が大半でした。こうした発見事項は、例えば、ある治療法が他の治療法と比べて、どこが優れていて、どこが劣っているかを知るのに有効でした。しかし、公衆衛生の分野、特に医療においては、サービスがどのように提供されているか、治療が施される状況など、質的研究の方がよりよく調べられる事柄も多々あります

新たな方針や決断に携わる人たちは、研究者からの推薦状を受けた時、様々な問題に直面します。推薦されている計画がどれだけ実現可能か、実際に現場で働く医者、看護師などに適応できるか、患者から見てどうか?など。

優れた質的研究はこれらの質問のいくつかに答えることはできますが、汎用性に欠けます(例:ある一つの病院における、一つのケアモデルについて、母親と助産婦の体験など)。またそうした発見が非体系的であり、発見のプロセスが完全に透明化されてない場合もあります。

これらの懸念材料をより深く解消するためには質的研究の統計的なレビュー、つまり、質的証拠の統合(qualitative evidence syntheses)が必要です。このような統合調査をすると、新たな方針や介入方法が現場の人や患者から見て、受け入れられるかどうかを考えることができます。

そこで質的な統合調査からの発見事項をどれだけ信用してよいかを探るツールとして、GRADE-CERQualが開発されました。WHOでは、このツールが世界的に決断のプロセスをサポートするツールとして使われることを望んでいます。

WHOのノリス博士(Dr Susan L Norris, Secretary of the WHO Guidelines Review Committee):「公衆衛生での意思決定において質的研究の重要性は、近年特に認められています。新たな方針がどれだけ受け入れられそうか、また、実現可能そうかを考えるのは非常に大事なことです。」

WHOは2010年から、新たな方針の質や有益性を改善するためにこのツールの開発に着手しました。現在では、GRADE-CERQualはイギリス(National Institute for Health and Care Excellence)、スウェーデン(Health Technology Assessment)、そして、ヨーロッパ全体(European Commission Initiative on Breast Cancer)の健康方針ガイドラインの中で使われています


参照
http://www.emro.who.int/media/news/a-new-tool-developed-by-who-and-academic-partners-supports-systematic-use-of-research-evidence-from-qualitative-studies-for-public-health-decision-making-and-guideline-development.html
posted by ヤス at 21:35| Comment(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月11日

健康長寿は主に菜食、定期的な運動、そして、生き甲斐を持っている

モチベーションの研究をする中で、「生き甲斐」が内的モチベーションに関係するものかもしれない、また、日本人が内的モチベーションを表すのに「生き甲斐」という言葉がフィットするのかもしれないと考えるようになりました。


生き甲斐とは、生きる理由があり、自分の人生には意味があり、生き続ける価値があると感じることを言います。例えば、最近のキャリアに関する研究では、この生き甲斐がキャリアに大事な4つの領域全てを満たすと考えます:自分はそれが好きか、世間が必要としているか、お金をもらえるか、そして、自分にできるか・得意としているか

この日本語である「生き甲斐(ikigai)」が世界的に注目されるようになったのは、長寿を研究するダン・ビュットナーらの研究によるところが大きいと言えます。ビュットナーらは幸せてより長く人々が生きている地域をブルーゾーンと呼び、世界に4ヶ所そのような領域を見つけました。例えば、イタリアのサルデーニャ、ギリシャのイカリア、アメリカ・カリフォルニアのロマリンダ、そして、日本の沖縄です。そして、長寿の要因が、これらの地域の人々は、主に菜食であり、適度な運動を定期的に行い、そして、生き甲斐を持っていることを挙げています。ビュットナーは生き甲斐とはその人の価値観と好きなこと、そして、得意なことが交わる場所だと言います。


「生き甲斐」とは他の言語では翻訳が難しい言葉なので、そのまま ‘ikigai’ としてた言語の文献で使われることが多いです。似たような意味の言葉として、’meaning(意味・意義)’ ‘purpose(目的)’ ‘fulfilment(充実)’のような言葉があり、これらは全て健康と幸せに関連するものです。しかし、これらの言葉が「生き甲斐」のような大きさと深さを持つとは言えません。

今後のモチベーションの研究において、生き甲斐は大事なコンセプトとなってきそうです。


参照
https://www.psychologytoday.com/us/blog/finding-light-in-the-darkness/201804/what-does-it-mean-have-passion-and-purpose
posted by ヤス at 17:11| Comment(0) | 心理学理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月09日

スマホ中毒の要因は、人とのつながりを求めることか

人々はなぜあれほどまでにスマホを触りたがるのか。そこには共通して、ほかの人と繋がりたいという欲求があるようです。つまり、スマホ中毒というのは、人嫌いなのではなく、人好きだから起こるかもしれないと、マギル大学のヴィシアー教授らが報告しています。



毎分のようにテキストメッセージを送ったり、ソーシャルメディアで周りの人が何をしているかをチェックしなくては気が済まない人、たまに見かけると思います。これまでこのような行動は、反社会的であると言われ、IT技術者や企業に解決を求められてきました。

しかし今回、認知人類学者のヴェシアー教授らが、認知と文化の発展を研究したところ、他人を見たいという欲求、それと同時に他人から見られたいという欲求は、昔からあり、人類の発展に寄与してきたことと関係があると説明しました。

人間は社会的な動物で、文化的に適した行動を保つために常に他人を見ることで発展してきました。これを通して、意味や目的、アイデンティティーを築き上げます。

今回、ヴェシアー教授は同大学のステンデル教授と共に、スマホの弊害について述べている記事を、人類発展の観点から分析しました。そして、スマホ中毒者に共通するものは、他人と繋がりたいという欲求でした。

スマホが健康的な通常の社会性欲求を満たす一方で、そのスピードと規模が脳に過剰な報酬を送ってしまい、不健康な中毒へと変わる可能性があるのも事実だと述べています。

食べるものに困らなくなった現代でさえ、脂肪と糖分を強く求める傾向が肥満や心臓病を引き起こしています。社会的な欲求も、スマホの使用によって、過度の社会性をもたらすことはあり得ます。

プッシュ通知を停止したり、スマホを見る回数を制限するなどをすると、スマホ中毒は低減するかもしれません。また職場において、夜や週末にメールを禁止することも大事だと書かれています。

企業や技術発展を制限するよりも、正しく使うための議論を進めるべきであり、そこには親や学校の先生も大事や役割を担う、と結論づけています。



参照
https://m.medicalxpress.com/news/2018-03-addicted-smartphones-social-interaction.html
posted by ヤス at 05:44| Comment(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月07日

ワークライフバランスが悪いことの悪影響

ワークライフバランスが大事だと言われていますが、どのような研究があるのか。面白いものがあったので紹介します。

ワークライフバランスに理解的なマネージャーとそうでないマネージャーの下で働くと、どのような違いが出るのか。ハーバード大学のバークマンらの約400人の医療に携わる労働者を対象にした研究によると、理解的でないマネージャーの下で働くと、理解的なマネージャーの下で働く場合と比べて、睡眠時間は1日あたり29分短く、心臓疾患のリスクとなる要素が2倍以上高くなるそうです。

仕事は仕事だから、家庭のことは持ち込むなといった姿勢のマネージャーの下で働く従業員は睡眠と心臓に悪影響を受ける。また、その労働者が、患者と直接接するポジションであれば、心臓疾患のリスク要素は6倍にも高まるそうです。

また他の研究では職場のプレッシャーと心臓病の関係性を明らかにしました。デンマークで15年間、12000人の看護師を対象にした研究では、非フレキシブルなマネージャーとスケジュールの下で働くと、心臓病の確率が増える。そして、50歳以下の労働者にその傾向は特に高く見られた。


では対応策はあるのか?ミシガン州立大学のコセックらによると、マネージャーにどのようにスタッフの休んだ穴を埋めるのか、また、感情的にどうサポートしたらいいのか、といった30分ほどのコンピューター上での講義と75分の対面での講義をした結果、彼らの部下が持つマネージャーに対する印象が変わり(マネージャーはワークライフバランスに対して理解的だと思うようになり)、結果、部下たちの仕事上での態度と健康度が高まったそうです。

ワークライフバランス。特に近年、注目を浴びている概念なので、より調べて行きたいと思います。

参照
https://www.theglobeandmail.com/report-on-business/careers/management/the-real-cost-of-upsetting-the-work-life-balance/article4083733/
posted by ヤス at 18:03| Comment(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月04日

仕事に役立つマインドフルネス:体現、メタ認知、集中

スタンフォード大学の講師、リー・ウェイズが、マインドフルネスをいかに仕事で使うかについて述べ、3つのタイプのマインドフルネスを挙げています。

体現(Embodiment):これは体への気づきのことです。1日を過ごす中で、体はどう感じているかに焦点を当てます。近代社会は、体を無視する風潮が高まっています。思考に焦点が当たりすぎるあまり、自分が体の中にいることを忘れているのです。これは大事な情報源から離れることを意味します。直感や感情であたり、また、長期的な痛みの兆候も体にあります。ストレスが溜まると、それも体に現れます。しかし、体への感覚があると、そうしたものも早い段階で対処できます。


メタ認知(Metacognition):メタ認知とは経験していることを理解することです。自分の思考や行動を観察することです。メタ認知を鍛えることで、衝動的な感情が湧いても、それを衝動的だと認識することができ、それに従って行動しなくても良いと理解できます。そして、実際に起きていることと、私たちの解釈の違いを理解でき、労働生産性を下げるような勝手な想像から脱出させてくれます。

集中(Focus):これは注意を向けたい対象へと向けることです。技術が進歩した現代、集中力を散らすものを知ることが大事です。多くの人がマルチタスカーだと思っていますが、マルチタスキングなど存在しません。タスクをコロコロと変えるタスク・スイッチングはありますが、それによって生産性は大きくロスします。集中力を鍛えるには、集中力が散漫になったら、また、集中したいものへと戻ってくる、この練習を繰り返すことです。そして、集中力の散漫がどのように起こるかを理解することも大事です。良い方法として、20分間のモノタスキング、つまり、1つのことに集中する時間を持つと良いかもしれません。


マインドフルネスには様々なメリットがありますが、大事なものとして、自分の人生にとって大事なことにちゃんと目を向けているかどうかを知る方法としても、非常に有効だと言えます。これら3つのマインドフルネスは、特にあなたの仕事に役立つかもしれません。

参照
https://www.gsb.stanford.edu/insights/bringing-mindfulness-your-career
posted by ヤス at 21:51| Comment(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする