2025年10月15日

薬だけに頼らないうつ病ケア:ライフスタイル医学が示す8つの柱

この記事(Clinical guidelines for the use of lifestyle-based mental health care in major depressive disorder)では、うつ病の管理におけるライフスタイル医学の重要な役割を強調し、従来の健康増進モデルを拡張する、エビデンスに基づいた全人的な枠組みを提案しています。特に大うつ病性障害(Major Depressive Disorder, MDD)のケアには、複数の相互に関連するライフスタイル領域を包括的に取り入れる必要があるとし、その領域を8つの主要分野に整理しています。

1. 食事と栄養
食事はメンタルヘルスに大きな影響を及ぼし、栄養の質が脳機能、気分、神経可塑性に関与することが示されている。果物、野菜、全粒穀物、良質なたんぱく質、オメガ3脂肪酸を豊富に含むバランスの取れた食事は、うつ症状を改善する可能性がある。食事介入は、個人に合わせ、文化的背景にも配慮した形で行うことが推奨される。栄養教育や食料不安などの障壁への対応も重要である。

2. 身体活動
定期的な身体活動は、神経化学的および心理社会的なメカニズムを通じてうつ症状を軽減し、幸福感を高める最も有効なライフスタイル介入の一つとして認識されている。運動プログラムは、個人の嗜好、能力、環境に合わせて調整し、継続性と実行可能性を高める必要がある。

3. 睡眠と休養
睡眠障害はうつ病でよく見られ、睡眠の質の低下は症状の悪化につながる。記事では、睡眠評価や行動的・環境的介入を通じて、一定の睡眠習慣を確立し、睡眠衛生を改善し、潜在的な睡眠障害に対処することの重要性を指摘している。

4. 薬物使用
アルコールや娯楽用薬物などの有害物質の使用は、しばしば不適応的な対処行動として機能し、うつの悪化につながる可能性がある。そのため、スクリーニング、心理教育、科学的根拠に基づく禁断・節制支援が求められる。これらの治療では、生物・心理・社会的要因の複雑な相互作用を理解することが重要である。

5. ストレス管理
慢性的なストレスはうつ病の主要な要因であり、マインドフルネス、リラクゼーション訓練、認知行動的戦略などの効果的なストレス軽減技法が重要である。これらの介入は、生理的ストレス反応を低下させ、情動調整を改善する効果があり、デジタルプラットフォームやグループプログラムを通して提供されることも多い。

6. 社会的つながりとサポート
社会的孤立や孤独はうつ病の大きなリスク要因。記事では、地域活動への参加、ピアサポート、家族の関与、住居・食料の確保といった社会的支援ネットワークの促進を提唱している。ソーシャル・プリスクリプションや地域連携を組み合わせることで、治療への関与と継続性を高めることができる。

7. 自然との関わり
自然環境への接触は、ストレス軽減、気分の向上、身体活動の促進などを通してメンタルヘルスを支える。日常生活や治療計画の中に緑地との関わりを取り入れることは、費用対効果が高く、誰でも利用できる幸福感向上の手段となる。

8. 環境の改善
物理的環境もメンタルヘルスの成果に影響を与える。調整可能な要素として、自宅や職場などの環境を健康促進的な行動を支援する形に整えること、緑地へのアクセスを改善すること、安全性・社会的交流・身体活動を促進する建築環境の設計を考慮することなどが挙げられる。

この記事は、これら8領域を統合した当事者中心の生物心理社会的アプローチを提唱しており、デジタルヘルスの革新、行動変容モデル、多職種協働による支援の重要性を強調しています。ライフスタイルの変容を取り入れることにより、患者のエンパワメント(自分らしく生きる力を高めること)が促進され、治療への意欲が高まり、社会や生活環境など健康に影響する要因にも対応できるようになります。そのような影響から、うつ病の負担を軽減し、生活の質を向上させることを目的としています。

参照
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/15622975.2022.2112074
posted by ヤス at 19:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・メンタルヘルス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年09月16日

【文化と心のケア】「心の治療」はどこの国でも同じじゃない?

文化によって、心の悩みの感じ方も治し方も変わる?

たとえば、あなたが「最近、気分が沈むなぁ」と思ったとします。その気持ちを、誰かにどう伝えるか。病院に行くか、友達に話すか、神社やお寺に行くか――。

この選択は、どこに住んでいるか、どんな文化で育ったかによって、大きく変わってきます。
この記事は、「心の治療(=精神療法)」がどのように文化によって影響を受けるか、そして治療者はどんな「文化的配慮(=文化的コンピテンス)」を持つべきかについて考察したものです。

文化的コンピテンスってなに?
簡単にいうと、「いろんな文化の違いを理解して、ちゃんと対応できる力」のこと。
心の治療を行うには、次の3つの視点がとても大事です。

@ 実践的な視点
・言葉の壁をどう超えるか
・その人がどうやって気持ちを表現するかを理解する
A 理論的な視点
・どんな方法で心の傷を癒すのが、その人に合っているか?
・治療の「仕組み」自体を文化に合わせて見直す必要があるかも
B 倫理的な視点
・「正しい生き方」「良い人間」って文化によって違うよね?
・無意識のうちに、患者さんに別の価値観を押し付けてない?

心の治療は「欧米スタイル」だけじゃない
多くの精神療法は、西洋(とくにアメリカ)で発展してきました。そこでは、「自分らしく生きよう」「自立しよう」といった個人主義がベースになっています。
でも、アジアやアフリカ、ラテンアメリカなどには、「家族や地域と調和して生きる」ことを大事にする共同体的な文化もたくさんあります。

つまり…
治療の方法も、「その人がどんな文化の中で生きているか」に合わせて変える必要があるんです。


言葉の使い方ひとつで効果が変わる?
精神療法では「比喩(メタファー)」もよく使われます。たとえば、
* 「心の風邪」
* 「壊れた脳」
* 「心の中のトゲ」
でも、文化によっては、こういった言い回しがしっくりこないことも。
また、ある国では「ストレス」と呼ばれる症状が、別の国では「魂が抜けた感じ」と表現されたりするんです。

治療は“文化との対話”
この記事では、「文化に合った治療をする」というだけでなく、
治療自体が、その人と文化の関係を見つめ直す“対話の場”にもなる
と述べられています。

たとえば、仏教やマインドフルネス、儒教的な考え方などを取り入れた新しい療法も生まれてきており、文化を活かしたケアの方法はどんどん広がっているんです。

まとめ:心のケアに「正解」はひとつじゃない
心の悩みは、世界中どこでもあるもの。でも、それを「どう受け止め、どう癒すか」は、文化によってまったく違います。
だからこそ、治療する側も、
* 「どんな価値観で生きてきた人か?」
* 「その人の中にある“常識”って何か?」
を理解しようとする姿勢がとても大切です。

最後にひとこと
心のケアにおいて、文化の違いを“壁”にするのではなく、“架け橋”にしていくことが、これからの時代にますます重要になっていくはずです。
あなた自身や、あなたの大切な人の「心の声」を聴くとき、文化や背景の違いにも少し目を向けてみてください。

参照:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/wps.21340
posted by ヤス at 16:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・メンタルヘルス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年09月13日

新しい本を読むのも大事だが、良い本は何度でも読む

新しい本であるとか新しい情報に対して、好奇心がわくことは多くの人にあることだと思います。私もAmazonで読んだことがない本で、面白そうだと思って購入することはよくあります。YouTubeの動画でも、新しいもので、面白そうだと思って見ることもよくあります。

そのようにして新たな情報を入手することはそれはそれで意味がありますが、すでに知っている情報にまたアクセスすることも非常に大事だと思います。というのも、「今、意識すること」に焦点を向けることができるからです。

田中渓さんの影響を受けて、朝早く起きて仕事や運動をしています。非常に充実感があり、仕事の進む度合いも増えました。朝起きるたびに、田中さんの出ているYouTube動画を見ながら、朝しないといけない家事をします。こうすることで、田中さんから最初に受けた時の気持ちにアンカーする、つまり、その気持ちを再起することができます。これは非常に大事だと思います。より多くの情報を得ようといったような狙いとは逆方向ですが、「情報を得ることで生活にどんなインパクトをもたらしたいか」という観点では、非常に有効だと言えます。

同じような使い道として、スコット・アラン著の『グラティチュード』という本があります。

GRATITUDE (グラティチュード) 毎日を好転させる感謝の習慣 - スコット・アラン, 弓場隆
GRATITUDE (グラティチュード) 毎日を好転させる感謝の習慣 - スコット・アラン, 弓場隆

この本も感謝の気持ちを持つことの大切さを教えてくれます。この本もよく振り返る本です。読むたびに、心を豊かにしてくれる本です。

このように実際のインパクトを考えることは非常に大切です。思い出されるのが、私は自分が習得したことの中では、英語を比較的短期間で習得したと思っているのですが、英語を勉強していた頃、よく言い聞かせていたのは、「(教材を)進んでいいから、わかれ」ということです。つまり、日々、勉強する中で、どうしても多くの章をこなしたい、という気持ちが出てきますが、そうではなく、理解することに集中しろ、ということです。今、実際の生活で、目の前の人がこれを話してきたら、自分は理解できるか。そのことに集中していました。だから、同じ文章を何度も何度も聞くこともありました。それだけの時間があれば、次の章を終えられたかもしれません。しかし、本を終わらせることが目的ではありません。実際の現場で理解できることが目的です。そちらの方が大切です。

今の研究の場でも、いろいろな数値が出されますが、どの数値が大事な数値なのか。これを見分けることが大事です。どの数値が、意味のある数値なのか。これを考えて、そこに集中する。それ以外の数値は目立ったものが出ないかもしれない。そうした数値の表彰などとは無縁かもしれない。でも、自分のキャリアを長い目で見た時に、どの数値が大事なのか。これを見極めて、そこに集中をする必要がある。

そのようなことを感じました。良書や良い情報には定期的にアクセスしたいと思います。


posted by ヤス at 14:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年08月26日

仕事でのストレス、でも体は守れ

先日、大学の同僚にアイデアを盗まれるという事件が起きました。どういうことかというと、グラントを応募する際に、大学内で同僚間レビューというものがあります。これをして、グラントの申請書がきちっとしたものであるということを確認してから、正式に提出しようというものです。それほど有効なプロセスではないのですが、決まりなので、やらざるを得ない。

そこで、自分のグラントを見てほしいという同僚(といっても、この時初のメール交換)がいたので、了解する代わりに、私の書いたグラントの応募申請書を見てほしいとお願いしました。その際、もちろん私が応募するコールも見せました。彼女は了承しました。私は、彼女が了承した後のメールで、私の申請書を送りました。お互いに金曜日までにフィードバックを交換しようということでした。

そして、金曜日の朝、私は彼女のグラントのフィードバックを送りました。彼女はありがとうというメールと、私の申請書に対して、これ、私も応募するものだから、グラントの必要事項わかっているから、良いフィードバックができると思う、という返事が来ました。

。。。

いやいや、おい待て、と。同じグラントに応募する人がレビューをするのは、利益相反になります。直接の競争相手になる人がレビューをするわけで、これは非倫理的な行為です。なぜ、私が最初にグラントの情報を見せた時に、自分も受けると言わなかったのか。そして、なぜ私がフィードバックを与えたタイミングで言うのか。本当に理解ができません。

このことがあってから怒りが溢れて、その後、三連休だったのですが、夜も眠れない日が二日ほど続きました。よくないですね。

そこで思ったのです。樺沢先生も仰っているように「健康が第一である」ということです。

精神科医が見つけた 3つの幸福 - 樺沢紫苑
精神科医が見つけた 3つの幸福 - 樺沢紫苑

私の非効果的な考え方のせいで、私の体が痛んでいる。普段、健康なものを食べたり、運動をしたり、体のケアをするくせに、自分の考えに対しては、全く対策を打てていない。仕事でのイベントはもう起きてしまったので、どうしようもない。仕方ない。終わったことを何度も何度も反芻をして、怒りを生み出し、ストレスを作り、自分をいじめている。夜も眠れない。これでは体が可哀想です。体のためにも適切な考え方をする必要があります。

感謝の気持ちは体の健康に良いとわかっています。
GRATITUDE (グラティチュード) 毎日を好転させる感謝の習慣 - スコット・アラン, 弓場隆
GRATITUDE (グラティチュード) 毎日を好転させる感謝の習慣 - スコット・アラン, 弓場隆

ですので、自分の考え方を、自分の健康のためにフルに使う必要があります。仕事は大事ですが、健康と家族はもっと大切です。樺沢先生がいうようにこの二つが幸せのコアです。野球の打撃で言うのであれば、これが下半身です。土台となります。これが強固にできてから、スイングの軌道やスピードといった事項を強化できます。仕事のストレスで、コアを弱めることは良いとは言えません。しっかりとした考え方を持って、健康と家族を守りたいと思います。
posted by ヤス at 01:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年08月16日

副交感神経を優位にする

もうすぐで夏の3週間連休も終わろうとしています。
「連休」とはいえ、研究者にはグラントの締め切りが待っています。私の場合、仕事の時間は早朝4時から家族が起きる8時まで。そこが一日の勝負どころです。

日中は、障害のある三つ子のうち2人の男の子の世話に追われます。先日も、グラントの一部に関する質問に急いで答えながら、大声で泣き続ける2人をあやし、さらに残りの子どもたちの昼食を作る。。。そんな同時進行がありました。妻は心のトラウマ治療のセッションを受ける必要があり、この連休中は私がほぼ一人で子供の世話をしています。

正直、苛立ちが募るのを感じました。自分より恵まれた家庭環境にある他の研究者のことを思って余計に腹が立つ。子どもをあやしても効果はなく、グラントに集中しても質が下がる。そんな悪循環に陥り、「なんとか心を落ち着けたい」と思いました。

そこで意識したのが、副交感神経です。私の研究分野でもある自然セラピーやコンパッションと副交感神経の関係がよく調査されていますが、自分の生活で直接意識を向けることはほとんどありませんでした。

そんな時に手に取ったのが小林弘幸先生の『「ゆっくり動く」と人生が変わる』(「ゆっくり動く」と人生が変わる 副交感神経アップで、心と体の「不調」が消える! - 小林 弘幸
「ゆっくり動く」と人生が変わる 副交感神経アップで、心と体の「不調」が消える! - 小林 弘幸)。

まだ読み途中ですが、「ゆっくり動くこと」の大切さを学んでいます。パニックになったりストレスを感じる時、自分は決まって早く動いている――そのことに気づかされました。

先日、東京大学とオックスフォード大学で研究をされている上田泰己先生とお話する機会がありました。私の電気自動車の充電の都合で、予定していたランチをキャンセルしてディナーに変更していただいたのですが、先生は「大丈夫ですよ」と気さくに対応され、まったく余裕を失わない。その姿に「これが本当に賢い人だ」と感じました。小林先生の本のタイトルを見た時、自然と上田先生のことを思い出しました。

結局、大事なのは「余裕を持つこと」だと思います。対人関係においては、相手が緊張している・切羽詰まっていることを見ることで、自分は尊敬されていると思うような人もいますが、本当に一流の人はそんなことに快感を覚えません。それよりも、会話や研究を深め、新しい知を生み出すことにエネルギーを注いでいます。学びは楽しく、心をリラックスさせるもの。そこに集中する方がずっと建設的です。

私自身、交感神経と副交感神経のバランスが崩れていることに気づきました。このままでは良い成果は生まれにくい。だからこそ、副交感神経をサポートする生活を意識しようと思います。

具体的には、毎朝15分の森の中でのジョギング、その後の公園の野外ジムでの腹筋や懸垂。休日にはギターを弾いて歌う。こうした活動は副交感神経を優位にすると言われています。まだまだ実践の途中ですが、意識して増やしていきたいと思います。

仕事も家庭もデマンドは大きい。それでも、ゆっくり動き、余裕を持ち、副交感神経を整える。やっていこうと思います。
posted by ヤス at 14:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする