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2020年01月25日

研究活動に励む学生に向けてのメッセージ The Wellbeing Thesis

先日、ザ・ウェルビーイング・シーシス(The Wellbeing Thesis)といって、研究活動に励む学生(Postgraduate Research Students)の健康をケアするための運動に取り組むグループのインタビューを受けました。僕は、モチベーションとメンタルヘルスの専門家ということで、僕の研究を元に色々とわかったことを報告させていただきました。



モチベーションには色々な種類がありますが、自己決定理論によると大きく分けて2つあります:外発的か内発的か。外発的なモチベーションは、お金、地位、名誉など、外からの報酬を求めて行動するためのモチベーション。対して、内発的なモチベーションは、やりがいや好奇心など、内側から湧き出る感情が得たいから行動するモチベーション(つまり、その行動そのものが報酬となる)です。

僕の研究では、内発的モチベーションが高い人は、メンタルヘルスの問題が少なく、メンタルヘルスに対する恥も低く、また、倫理的な判断ができる傾向があり、対して、外発的モチベーションが高い人は、メンタルヘルスの問題が多く、恥も高く、倫理的な判断が鈍ることがある、というような結果が出ました。関連論文にはこれらがあります;
https://www.researchgate.net/publication/329331323_Ethical_Judgement_in_UK_Business_Students_Relationship_with_Motivation_Self-Compassion_and_Mental_Health
https://www.researchgate.net/publication/322815392_Motivation_Types_and_Mental_Health_of_UK_Hospitality_Workers

今回のインタビューでも、研究活動において、内発的なモチベーションに基づいて挑戦し続けることが大事だといった趣旨のことを話させていただきました。研究活動に励む学生さんたちの役に立てればいいなと思います。

posted by ヤス at 20:45| Comment(0) | 健康・メンタルヘルス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年01月06日

NLPは組織心理に効果があるのか?システマチックレビュー

今回の記事では、僕の出版論文の1つを、できるだけオタクな言葉なしでご紹介させていただきます。

今回は、以下の論文の概要を解説します。
Kotera, Y., Sheffield, D., & Van Gordon, W. (2019) The applications of neuro-linguistic programming in organisational settings: A systematic review of psychological outcomes. Human Resource Development Quarterly. 30(1), 101-116. doi: 10.1002/hrdq.21334

全文はこちらからダウンロードできます。

論文の中心的な質問としては、

NLP(神経言語プログラミング)が職業心理学にプラスの効果があるのか?
あるとしたら、どのような症状に対して良いのか?


これらの質問に対して、その証拠の質と量はどれくらいなものかを見ていきました。

システマチックレビューなので、対象となる研究論文をかたっぱしから見ていき、総合的に上記の質問に答えました。



NLPを使って、職業心理学に関する心理要素(ストレス、エンゲージメント、組織コミットメント、自尊心、従業員間の信頼など)に影響を与えようとした研究を調べると全部で952件の論文が見つかりました。そこからタイトルと概要で絞ると、今回の研究質問に関するものは96件に。そして、全文を読んでみていくと、強く関連するのは7件の論文に絞られました。

7件のうち6件は量的研究(数字で効果の良し悪しを測ったもの)で、1件が質的研究(文字で効果の良し悪しを測ったもの)でした。これら7件の研究については、論文の本文 Table 2をご参照ください。

3件はヨーロッパで実施され、もう3件はアジア、そして1件がアメリカで実施された実験でした。

対象とした心理的要素ですが、7つの実験は、自己実現、不安、改善行動、時間厳守への恐怖、自尊心、自己効力感、組織コミットメント、トレーニングへの満足感を狙いとしていました。そして、それ全てに対してポジティブな結果が報告されていました。特にストレスの軽減と、自尊心の向上に対してよく使われ、大きな効果を発揮していました。

対象グループは、土木工学、ホスピタリティー、教育、医療に携わる労働者でした。

6件の量的研究のうち、3件はランダム化していないけど、介入グループと別グループ(非介入など)を比較したもの、そしてもう別の3件は1グループがNLP介入を経たものでした。つまり、介入の研究で最も質が高いとされるランダム化比較試験(RCT、ランダムにグループを2つ作って、介入グループの変化を、非介入グループと比べる)を用いた研究はありませんでした

介入としては、ストレスや不安軽減を狙ったもの、良い職場コミュニケーションを狙ったもの、そして目標設定に関するものがありました。ストレスや不安に対しては、アンカリングがよく使われていて、コミュニケーションに関しては、代表システム(コミュニケーションの相手がどの五感を主に使っているか)を解説していました。目標設定に関する研究では、その具体的な介入は報告されていませんでした。

論文にバイアスがないかを調べてみると、4つの研究で、バイアスが高いと診断され、3つの研究では中程度だと判断されました。つまり全体的にいうと、もっと質の高い研究が必要だということが言えます。多くの研究で、必要な研究項目が報告されていなかったり、バイアス(つまり偏見)を減らすための工夫が足りなかったりしました。また研究倫理許可を取ったのかどうかを報告していないものもありました。



NLPは開発されてから様々な分野で使われてきて、ビジネスもその1つです。しかし、研究を見ていくと、量的にも、質的にももっと良い研究が必要だと言えそうです。目を引くような宣伝文句がよく謳われるNLPだけに、それに必要な質の高い実験結果が出てこない限りは、今後の普及は難しいと言えそうです。しかし、それでも、創設から50年ほど経ってもまだ使われているところを見ると、実践者の間では人気のある手法だと言えます。僕も色々とNLPに関する学術論文を書いていますが(例)、もっと大規模なNLPの科学的研鑽が必須です。

この研究論文の全文はこちらからダウンロードできます。
posted by ヤス at 02:12| Comment(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年01月02日

日本人労働者のメンタルヘルス。自己批判の軽減と自己支援の強化が鍵か

明けましておめでとうございます!本年もよろしくお願いいたしますm(_ _)m

本ブログではこれまでいろいろと他人の研究をご紹介してきたのですが、自分の研究もすべきだということに今頃になって気づき(笑)、少しずつですがそうしたこともしていこうと思います。

今回はこの研究を、できるだけオタクな言葉を使わずにご紹介させていただきます。
Kotera, Y., Gilbert, P., Asano, K., Ishimura, I. & Sheffield, D. (2018). Self-criticism and self-reassurance as mediators between mental health attitudes and symptoms: Attitudes towards mental health problems in Japanese workers. Asian Journal of Social Psychology, 22(2), 183-192. doi: 10.1111/ajsp.12355

全文はこちらからダウンロードできます。

近年の働き方改革にもあるように、日本人労働者のメンタルヘルスは非常に悪く、過労死や過労自殺など深刻な問題となって現れています。

過酷な労働の他に、日本人労働者のメンタルヘルスを悪くしていると考えられるのが、恥の感覚などを含む、心の病に関するネガティブな態度や見方です。こうした恥やネガティブな態度というのは、自己批判と強く関連していて、これが更に心の状態を悪くさせます。


そこで今回の研究では日本人労働者のメンタルヘルス、メンタルヘルスに対するネガティブな態度、自己批判、そして、自己批判とほぼ反対の概念となる自己支援の関係性を調べました。

日本人労働者、131人にこれらの心理アンケートに回答していただきました(ありがとうございます!)。それらのデータをいろいろと分析しました。

ほぼ半分の労働者(47%)がメンタルヘルスに対してネガティブな見方(「心の病を持つ人は弱い」等)をしていて、半分以上(55%)が心の病を持つことに対して何らかの恥を感じると答えました。恥の概念の中でも、職場の人に対する恥(76%)と自分に対する内的な恥(77%)が特に高かったです。

また心の病気の数値(うつ、不安、ストレス)は、ネガティブな態度と自己批判に対して、プラスの相関関係にあり、そして、自己支援に対してマイナスの相関関係にありました。つまり、メンタルヘルスの良い人は、心の病に対してそれほど悪く見てなかったり、恥を感じていなかったりする。そして、メンタルヘルスの良い人は、自己批判をあまりせず、自己支援ができるということが言えます。この自己に対する姿勢(自己批判や自己支援)は特にメンタルヘルスへの影響が大きかったです。

また、メンタルヘルスの状態を推測するのに、特に、その人がどれだけ自分を嫌っているか(自己批判の一部)、また、家族への反映恥(自分の心の病が家族に泥を塗るかもしれないという不安)の高さが、役に立つと分かりました。

いかに自己批判を抑え、自己支援を強めるか。メンタルヘルスに関して恥を感じる人が多いだけに、直接的なメンタルヘルスへのアプローチよりも、自己批判や自己支援に焦点を当てた介入が有効かもしれません。

研究論文の全文はこちらからダウンロードできます。


posted by ヤス at 23:32| Comment(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月30日

迅速エビデンス査定(REA)とは何か?

現在、学士課程の最後の授業では、 Rapid Evidence Assessment (REA)という文献レビューを学生さんにしてもらい、卒業論文としています。このレビュー方法、適当な邦訳が見当たらないので、勝手に訳すと、「迅速エビデンス査定」とでもなるでしょうか。これはシステマチックレビューと比べるとわかりやすいのですが、がっつりと今ある研究結果ををレビューするのではなくて、素早く限定して研究結果をレビューする方法です。これについてご紹介します。


文献レビューで最も王道なのが、システマチックレビュー(SR)です。SRでは特定のトピックに対して、全ての関連する研究を見ていき、比較的幅広く範囲を設定して、徹底的に文献を見ていきます。そして、複数の研究者がそれぞれ独自に、一つ一つの研究を、決められた範囲に当てはまるかどうか判断し、またそれらの質も分析していきます。SRは透明性があり、証明ができ、再実行が可能なレビューだと言えます。従って、SRはバイアスが他のレビューよりも少ないと言えます。


SRと同様、REAも労働現場に有効な情報を提供できるレビューであり、既存のエビデンスを集約するものです。SRとの間にいくつもの共通点があります。

1. 背景
2. 研究質問
3. 選択基準
4. 検索の戦略
5. 対象研究の選択
6. データ抽出
7. データ分析
8. 分析結果の集約
8.1. キーワードの定義
8.2. メカニズムの解明(原因など)
8.3. 主な発見
8.4. モデレーターとメディエイターの発見
9. 分析結果の統合
10. 研究の弱点
11. 結論
12. 労働現場への示唆


SRとREAの大きな違いは、それぞれにかかる時間やリソースです。従って、発見した事柄の幅の広さや深さはREAでは狭く浅いと言えます。つまり、REAは、SRでがっつりと調べるものの、特定の鍵となる一部だけを見直します

文献検索においては、SRほど包括的にデータベースを見直しません。2、3の主要なデータベースのみを検索します。そして、出版されていない文献は無視します。

対象となる研究も、特定のデザインを用いているもの(例:メタ分析やランダム化比較試験[RCT])だけを分析します。

データの抽出においても、主要な情報だけに焦点を当てます。例えば、出版年、対象人口、研究デザイン、サンプルサイズ、特定のモデレーター・メディエイター、主な発見、効果の大きさなど。

また、分析の際にも、選んだ研究の研究方法の適性と質に焦点を当てて、判断します。

これらの特徴から、REAはSRと比べると、よりバイアスに弱いと言えます。しかし、SRでは複数の研究者が1年ほどかけて行うのに対して、REAは2人の研究者で数ヶ月でできることもあります。従って、SRを行うほどの時間や資金がない組織では、REAを実施する場合があります。臨床、医学、そして、マネジメントの分野で、REAは使われることが多いです。


参照
https://www.cebma.org/faq/what-is-an-rea/
posted by ヤス at 00:22| Comment(0) | 心理学理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月29日

濃厚酸素とフィトンチッド

木々が健康に良い理由として、放出される濃い酸素とフィトンチッドと呼ばれる化学物質(カビなどに対抗するために放出される)だと考えられています。濃い酸素とフィトンチッドによってストレスが減り、血圧や脈拍が下がると言われています。常葉樹からは特に多くのフィトンチッドが放出されるそうです。

森林浴を楽しむには特に森林の奥部に行く必要もなく、五感を使って好きなように森林を楽しむことが大事です。森林の中で体が感じるままに動くことが大事です。森林に行くのが無理であれば、木々に触れたり、エッセンシャルオイルを部屋で使うのも有効です。


ゆっくりと歩くことがオススメです。また好きなだけ時間を過ごすことも有効です。大抵の場合、20分以上で著しい効果を感じることができます。また、ヨガ、太極拳、瞑想なども有効です。

森の静けさに耳を傾けることも良いでしょう。普段の生活で、完全な静寂を聞くことは少ないかもしれませんが、静寂には回復効果があります。森の中にいることで、人間は大自然の一部だと感じることもできるでしょう。

今後もっと森林浴の健康に対する効果は報告されていくでしょう。

参照
https://greatergood.berkeley.edu/article/item/why_forest_bathing_is_good_for_your_health
posted by ヤス at 23:36| Comment(0) | 健康・メンタルヘルス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする