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2019年03月24日

イギリスでは教師が最も長く働いている

労働組合会議(Trade Union Congress)の調べによると、イギリスの教師は、週に12時間をオーバータイムとして無償で働いているそうです。これは教師人口で合計すると週に900万時間、年間で換算すると4億2000万時間に及びます。


小学校教師が13時間と最も長くオーバータイムで働いており、続いて12.8時間の中学校教師、そして、保育園の教師は6時間のオーバータイムを記録しています。これらの数値は、企業の役員、弁護士、サービス業やファイナンス業界のマネージャーのオーバータイムよりも長いものです。教師のオーバータイムを年間で合計すると、約74万人の教師の労働量に相当します。イギリスの教師は他国と比べても、オーバータイムが長い国だと報告されています。

また教師業はストレスの比較的高い職業であり、政府からの手厚いサポートが必要だと言われています。

参照
https://www.tes.com/news/teachers-work-more-unpaid-overtime-anyone-else
posted by ヤス at 06:43| Comment(0) | 健康・メンタルヘルス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月08日

日本人マネージャーによるNLPの活用:質的研究

現在、日本の産業界においてメンタルヘルスの問題は深刻であり、注目を集めています。政府も様々な対策を実行していますが、大きな効果はまだ見えてきません。そこで企業のHRは様々な手法を模索していますが、NLP(神経言語プログラミング)もその手法の1つとして注目されています。一部の企業では、NLPを使うことで、従業員のメンタルヘルスや心の状態を改善しようと試みがなされています。

しかし、NLPが70年代に開発されてから長年の問題点は、その科学的根拠が弱いところにあります。一定量の研究はされていますが、残念ながら研究の質が高いものはあまり多くありません。そこで今回の研究では、NLPを実際に現場で使っているNLPマスタープラクティショナーであり、企業のマネージャーでもある人たちの経験を、科学的に分析をしました。NLPの強みが、主観的な経験を利用するところにあるので、今回のような体験ベースの事象を分析する方法はふさわしいと言えます。


具体的には、半体系化インタビューといって、ある程度の質問は用意するものの、そこから参加者に考えを話してもらって、それを記録するインタビュー法。そして、分析方法は、主題分析といって、話された内容から何が主題となるのかを客観的に分析する方法です。これらの方法は、質的研究で、特にまだあまり研究されていない分野の研究にふさわしい手法です。

合計11人のマネージャーや社長の方々に、1対1のインタビューに参加していただきました。参加条件として、企業でマネジメントを主とする役職にあること、NLPマスタープラクティショナーであること、そして、マスタープラクティショナーの認定から最低でも1年以上は経っていること(そうでないとNLPがどれだけ使えるかわからない可能性があるので)等を挙げました。参加したマネージャーや社長の方々の平均年齢は53歳、うち9人が5000人以上の大企業に属していらっしゃいました。

インタビューデータの分析の流れや、主題の構成は、私の他に、NLPに詳しい研究者と詳しくない研究者が、客観的であるかの判断をしました。インタビューの質問としては、

NLPが職場で役立っているか?そうであれば、どのように役立っているのか?
NLPは何をもたらすのか?
NLPを職場で使う際の問題点は?

などを尋ねました。

インタビューの結果を調べると、全てのマネージャーと社長がNLPが職場で非常に有効だと答えました。具体的には、職場で必要なメンタルヘするや心理学的な能力を高めてくれると答えていました。例えば、8フレームアウトカムでは、ワクワクするようなゴールを設定し、それをさらに五感情報で体感し、ゴールの先のポジティブなビジョンを描きます。そうしたフレームワークが、心をポジティブにしてくれると答えていました。


また、NLPがもたらすものとして、人間の心を理解させてくれる、というのが多くの回答でした。なぜ自分が、または、部下がこう感じるのか。それに対する答えを、NLPを学ぶことでわかりやすく考えることができたと述べています。例えば、カウンセリングやコーチングでは、一定のフレームワークを与えられてそれを実行するだけです。しかし、NLPではそれがなぜ作用するかを考えます。例えば、コーチングで有効だとされる質問。これがなぜ有効なのか、そうしたことをNLPは教えてくれる。

またリフレーミングが非常に有効だという声が多かったです。色々な出来事を、ああよかったと思わせてくれる。そんなものの柔軟な考え方。それが非常に有効だと述べていました。

最後に、職場で使う際の問題点としては、コーチングには職場での「市民権」があるが、NLPにはまだない、という声がありました。だから職場で使う際にはイメトレといったり、コーチングだと言わないと実践してくれない人が多い。その他、もともと臨床の場から来ているので、職場で使うには長すぎたり、特に左脳系の人には理解してもらえなかったりすることがある、という声がありました。例えば、8フレームアウトカムにしても、「8つも質問してられない。せめて3つにして〜」という声や、左脳系の人に「その気持ちは何色ですか?」と聞いても、何も返ってこなかったりする、というのもありました。

分析の結果を考えると、NLPは特にポジティブ心理学との関係性が強いと言えます。例えば、ニューロロジカルレベルもよく使えるスキルだと挙がっていましたが、そこでもポジティブな感情を高めることが特徴でした。また、人の心を理解する上では、メタモデルがNLPでは強みだと言えますが、これは様々な哲学的な概念とも関係がありそうです(例:クオリアや六境など)。NLPの前提も非常に有効なようです。これを意識することで、より支援的に、また、モチベーションを高めるようなリーダーシップが取れる。これらから、今後は、より職場に特化したNLPの開発も有効なのかもしれません。


最後に、NLPはまだ職場での認知度が低いようです。この理由として、NLPが商売化しすぎていると指摘する研究者もいますが、コーチングと比べると、むしろコーチングの方が商売化しているとも言えます。しかし、コーチングはより普及していることを考えると、NLPの資格や実践の規制が不安定なことが上がるのかもしれません。

今後またさらにNLPやメンタルヘルスに関する実験を続けていきたいと思います。

参照
Kotera, Y. & Van Gordon, W. (2019). Japanese managers’ experiences of Neuro-Linguistic Programming: A qualitative investigation. Journal of Mental Health Training, Education and Practice. doi: 10.1108/JMHTEP-06-2018-0033
posted by ヤス at 08:15| Comment(1) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月25日

海外で時間を過ごすほど、自己認識が高まる

海外で時間を過ごすことは自分を知る上で非常に有効なようです。

アメリカ、ライス大学のハヨ・アダムスらの研究で、自分自身をいかに明確に、自信を持って定義できるか、「自己認識度」という概念が初めて研究されました。過去の研究で、人生の変化において(就職、離婚など)人は自分が誰かを見失う傾向があるので、いかに自分を知るかは大事だと言われてきました。

今回の研究では、計1874人の参加者を募りました。まず第一部では、約300人を集め、半分は海外に住んだことがあるグループ、半分はそうした経験がないグループに分けました。彼らは12の項目からなる「自己認識度」に関するアンケートに答えました。例えば、「一般的に、私は自分が何者であるかを明確に知っている」などといった項目です。結果、海外に住んだことがあるグループの方が、より高い自己認識度を示しました

しかしこの段階ではまだ海外で生活することが高い自己認識につながったのか、それとも自己認識が高いから海外でのチャンスに飛びつこうとしたのかはまだわかりません。そこで、第二部ではまたおよそ300人を集め、半分は海外に住んだことがある人たち、そして、他の半分は、9ヶ月以内に海外に住む決定的な計画がある人たちを集めました。参加者は「自己認識度」に関するアンケートと、「自己の振り返り」に関するアンケートに答えました。

海外に住んだ経験のある参加者は、(近い将来、確実に海外に住む予定があるが)海外にまだ住んでいない参加者と比べて、より高い自己認識度を示しました。そして、この自己認識度は、自己の振り返りが良くできている人ほど、高いものとなりました。海外での時間が長いほど、自分を明確に理解できるという結果になりました。


さらに研究者は色々な国から来ている学生を対象に調査をしましたが、結果は(生活をした国の数よりも)海外で過ごす時間が長いほど、自己認識が高いという結果になりました。海外で長い時間を過ごした学生は、自分のキャリアに対して明確な計画を持っていました。

研究論文の最後で、研究者たちは1919年に出版されたヘルマン・カイザーリングの「哲学者の旅日記」で記された「自己理解への最短の道が、世界中を旅するようあなたを導くだろう」を引用し、それから100年した今回の実験はこれを科学的に裏付け得るものになったと述べています。

参照
https://digest.bps.org.uk/2018/05/09/more-time-spent-abroad-increases-self-concept-clarity-confidence-in-and-clarity-about-who-you-are/
posted by ヤス at 05:30| Comment(0) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月09日

バーチャルリアリティーが悪い夢に悩む人を救う

新たな実験で、バーチャルリアリティーを使った治療が、悪い夢に悩む人を救えるかもしれないと報告しています。これまでの悪夢への治療法は時間をかけてセラピーをするか、薬物治療が主でした。薬物治療では、意識を朦朧とさせるため悪い副作用が出ます。

そこで研究者はオキュラス・リフトというバーチャルリアリティーの装置を用意し、そこでは患者に、自分が見る悪い夢の対象を特定してもらい、それを怖くないように映し出すようにします。更に、患者はその対象が更に怖くなるようなストーリーを作ります。


この実験では4週間に渡り、8回のセッションを提供し、19人の患者が参加しました。セッションの結果を見ると、不安、悪夢によるストレス、悪夢の頻度が下がりました。

今回の実験ではコントロールグループがないため、まだ定かではありませんが、より精度の高い実験をする価値はありそうです。

今回の治療法の良い点は、患者が自分のオーダーメイドの映像やストーリーが作れるというところです。研究者は次は、よく悪い夢を見て悩んでいる子供のためのバーチャルリアリティーを作ろうと考えています。


参照
https://www.psypost.org/2018/12/virtual-reality-therapy-shows-promise-in-the-treatment-of-nightmares-52833/amp
posted by ヤス at 07:20| Comment(1) | 心理学実験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月29日

AIで従業員のモチベーションを分析・アチューンド

東京のアチューンド(Attuned)は、「予測的HR分析」という特殊な分析をして、それぞれの従業員が何にモチベーションを持っているのかを明確にするツールを開発しました。日本の多くの企業がこのツールに投資をし、従業員の心を読もうとしているそうです。


アチューンドでは、従業員は55問のアンケートにオンラインで回答します。質問は2つのペアとなる項目から成り、例えば、「1日の行動を前もって決めておくと、安心感がする」と「集中すべき仕事は、その日の流れで決めたい」という項目から、どちらが自分に合うかを選びます。

結果は「モチベーション・プロフィール」として11個の人間的価値観(例:競争、フィードバック、自主性、安心感、経済的必要性)に分類されます。

モチベーションが高い分類は「必要である」とされ、低いものは「あったらいい」などと分類されます。これらの情報は、マネージャーにとって、その従業員がどのような環境で力を発揮するのか、何がモチベーション維持に有効なのかを知るのに役立ちます

社交性が大事な従業員にとって、例えば、金曜日に飲みに行こうと言うとモチベーションになるかしれませんが、経済的なことを優先したい従業員にとってはそうではありません。またこのツールでは、マネージャーと従業員の共通の価値観も導き出してくれます。

アチューンドは基本的なパッケージだと年間で約20万円かかります。そして企業規模に応じて価格は変化します。また、この基本パッケージには「追加アンケート」があり、30秒程度で答えられるアンケートが2週間おきに送られ、モチベーションを測定します。このような仕組みで従業員のモチベーションをこれまでにないほど速く知ることができ、従業員(そしてマネージャー自身)のストレスの軽減にもつながります。

またこの情報は、従業員を配置する際にも、どの部署であれば最も力を発揮するかを考えるのに役立ちます。採用にも使えるでしょう。ある企業では、アチューンドを使ったおかげで、ミス採用(6ヶ月以内にやめてしまうケース)の確率が35%から8%に減ったそうです。


開発には、心理学者を巻き込んで、2年以上を要したそうですが、興味深いことに年齢、性別、文化によるモチベーションの違いはなかったそうです。しかし、若干の文化的な違いは回答する様子に見られたそうです日本の労働者は、「強く同意する」といった選択肢は選ばず、「どちらかというとそうだ」といったソフトな回答を選ぶ傾向が強いそうです。

アチューンドは日本では、楽天、デンソーといった企業で採用されているそうです。

たまたまこの記事が目に入ったのでアチューンドのサービスについて書きましたが、ヒューマン系とされている分野でもどんどんとIT技術が入ってきて、良いサービスを提供しています。人の心をどれだけIT技術でサポートするか。これはYES・NOといった二択の問題ではなく、「人間が何をどのように使うか」という問題だと思います。今後ますます大事になる論点だと思いました。

参照
https://www.businessinsider.co.za/employee-motivation-survey-attuned-japan-startup-2019-1
posted by ヤス at 08:10| Comment(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする